
2022.09.15
自動車保険の弁護士費用特約とは?メリットや使う場面、注意点を解説

2022.09.15
自動車保険の弁護士費用特約とは?メリットや使う場面、注意点を解説
「弁護士費用特約」とは、自動車保険の契約にオプションで追加することで、損害賠償請求を弁護士に委任する際に、費用の補償を受けられる特約です。
ここでは、弁護士費用特約が役立つシチュエーションをはじめ、弁護士費用特約に加入するメリットや、利用時の注意点について解説します。
目次
弁護士費用や法律相談費用を補償する弁護士費用特約
弁護士費用特約は、自動車事故や日常生活における事故で被害を受けた場合に活用できる特約(自動車保険の基本補償に併せてセットすることで、受けられる補償が手厚くなるオプション)です。自動車や日常生活にまつわる事故でのケガのほか、車・物の損害に対する賠償請求を弁護士に委任する際、その弁護士費用や法律相談費用等が補償されるのです。
三井住友海上の弁護士費用特約は、弁護士に相手との交渉を依頼するときに、被保険者1名につき300万円を限度として弁護士・損害賠償請求等費用保険金をお支払いします。また、弁護士、司法書士または行政書士に法律相談を行う場合は、被保険者1名につきそれぞれ10万円を限度として法律相談費用保険金をお支払いします。
なお、弁護士費用特約の利用条件は「被害を受けた場合」なので、過失割合が100:0の事故で、自身が加害者である場合は利用できません。一方、自身のほうが過失割合は高くても、当事者双方に過失が認められる事故であれば、相手方の過失の範囲で損害賠償請求ができるので、弁護士費用特約を利用できます。
弁護士費用特約の2つの補償タイプ
自動車保険の弁護士費用特約について、2つのタイプをご紹介します。
■弁護士費用特約のタイプ

自動車事故型
自動車事故型の弁護士費用特約は、弁護士費用が補償される対象となる事故の範囲を、車での事故に限定したタイプです。自分が車に乗っているときに追突されたケースはもちろん、歩行中に車にはねられたといったケースも含まれます。
自動車・日常生活事故型
自動車・日常生活事故型の弁護士費用特約は、弁護士費用が補償される対象となる事故の範囲を、車での事故および日常生活全般での事故とするものです。乗車中の事故や歩行中に車にはねられるといった事故はもちろん、散歩中に勢いよく走ってきた人に衝突されてケガをした、他人の飼い犬にかまれてケガをしたといった、車が関与しない日常生活での事故も対象になります。
弁護士費用特約を利用するシチュエーションは?
交通事故における示談交渉は、任意保険に加入していれば基本的に保険会社が行ってくれるので、弁護士への依頼は不要だと思いがちです。しかし実際は、弁護士への依頼が望ましいケースもあります。典型的なのは、次の2つのパターンです。
もらい事故の被害者になった場合

「停車中に後ろから追突された」「青信号で交差点に進入したところ、信号無視の車に衝突された」などの事故は、加害者の過失が100%と判定されることが多い事故です。このような「もらい事故」では、被害者から加害者への賠償が発生しないため、被害者側の保険会社が示談交渉を代行することができません。
すると、被害者はみずから相手方の任意保険の担当者と交渉することになりますが、素人が交渉するには不安な上、ケガの治療などで体力や時間が十分でなかったり、不利な条件を提示されても反論ができなかったりするリスクが考えられます。
弁護士費用特約に加入しておけば、弁護士に交渉の依頼や相談を行うことができるので、示談交渉を行う上での負担を大きく軽減することができます。
もらい事故について詳しくは以下のページをご覧ください。
もらい事故とは?対処の流れや賠償金の項目、注意点などを解説
相手が任意保険に未加入で、治療費を請求しても交渉に応じてくれない場合
過失割合が100:0の事故で加害者側が任意保険に加入していない場合、当事者同士の話し合いによって過失割合を決定し、損害賠償に関する取り決めを行うことになります。このようなケースでは、相手方が過失を認めず、請求に応じないことも珍しくありません。
そうした相手と自力で交渉するのは手間がかかり、ストレスが募るばかりです。弁護士費用特約に加入しておけば、弁護士に交渉を任せることができる上、面倒になって交渉の場面で妥協してしまうリスクも防げます。
自動車・日常生活事故型の弁護士特約であれば、車にまつわる事故以外にも、「歩行中に、自転車にぶつけられてケガをした」といった場合でも、弁護士への依頼が可能です。
弁護士費用特約に加入するメリット

弁護士費用特約に加入するメリットは、弁護士への依頼や相談が必要になった場合に、スムーズに依頼・相談ができることです。特約に加入していなくても弁護士に委任することはできますが、費用が高額だったり、そもそも依頼から相談までに時間や労力がかかったりします。
「交通事故の加害者が任意保険未加入で示談金の交渉が進まない」「提示してきた示談内容に納得がいかない」といった場合に、すみやかに依頼や相談ができるのが、弁護士費用特約に加入する最大のメリットでしょう。
これに加え、弁護士費用特約のメリットは以下のとおりとなります。
<弁護士費用特約のメリット>
- ・自身に過失のないもらい事故に備えられる
- ・弁護士依頼料(着手金・成功報酬金)だけでなく、相談料も補償される
- ・法律の専門家に依頼できるので、的確なアドバイスや交渉の代行によって、不利益な結果になるリスクを回避でき、最終的に受け取るべき賠償金を受け取ることができる
- ・ほかの車(契約車以外の車)に乗っている家族(配偶者、同居の親族)も補償を受けられる
弁護士費用特約利用時の注意点
弁護士費用特約の利用で注意したいポイントには、どのようなものがあるのでしょうか。事前に以下の点を押さえておきましょう。
■弁護士費用特約利用における注意点

家族の保険と補償内容が重複しないよう注意
弁護士費用特約は、保険会社によっては所有する車のうち、1台でもセットしていれば家族も補償を受けられます(三井住友海上ではご家族にも弁護士費用の補償をしています)。その場合は、重複してセットする必要はありません。
事故後に契約しても補償は受けられない
弁護士費用の補償を受けるには、事故時点で弁護士費用特約をセットしていることが条件です。後からセットしても、セットする前の事故については補償を受けられません。
実際に特約を利用して弁護士に依頼するとき、事前に保険会社に承認を得る必要がある
中には、利用者の知識が不十分なことに付け込んで、高額な弁護士費用を請求されるケースもあります。そのため、弁護士費用特約を使う場合は、保険会社に事前に申し出て承認を得る必要があります。弁護士費用特約の規定に則って利用しないと、自己負担が発生するケースもあるので注意しましょう。
補償額には上限がある
補償額には上限があります。一般的に、相談の場合は最大10万円、交渉依頼の場合は最大300万円とする保険会社が多くなっています。
なお、弁護士費用については、相談を30分あたり5,000円~としている場合が多く(ただし、費用は弁護士によっても設定が異なります)、交通事故で実際に弁護士に依頼した場合は、始めに着手金として10万~20万円、成功報酬金として経済的利益の10~15%程度の費用が発生することが一般的です。
自動車事故に特化した特約の場合は、ほかのシチュエーションでの事故は補償されない
自動車事故型タイプの場合は、車による事故でないものは、補償の対象になりません。あくまで対象となるのは、車が衝突された、歩行中に自動車にはねられたといったケースに限られます。
特約が利用できないケースもある
例えば、車の事故において過失割合100:0で自分が加害者になるような場合は、弁護士費用特約を利用することができません。
弁護士費用特約を利用したときの等級への影響は?
弁護士費用特約を利用するにあたり、もうひとつ気になるのは等級への影響です。これについては、もらい事故などで弁護士費用特約のみを使った場合は、等級に影響はありません。翌年度の保険料が上がることはないので、安心して利用できます。
自動車保険の等級について詳しくは以下のページをご覧ください。
自動車保険の等級とは?制度や保険料の決まり方を解説
万が一の事故が起きても心強いのが弁護士費用特約の最大のメリット

弁護士費用特約は、損害賠償請求を弁護士に依頼する際の費用のほか、弁護士への相談費用も補償します。
被害者側の保険会社が示談交渉を代理できないもらい事故や、相手方が交渉に応じない場合に、スムーズに弁護士に依頼し、交渉を代行してもらえる点で大きなメリットがあります。
三井住友海上をはじめ、保険会社によっては家族で所有する車の1台さえ加入していれば、家族全員で補償を受けられる点も魅力といえるでしょう。万が一のときに弁護士の力を借りられるのは、心強いものです。ぜひこの機会に、弁護士費用特約をご検討ください。