2023.07.13
車の正面衝突を防ぐには?発生理由や防止策、過失割合を解説
2023.07.13
車の正面衝突を防ぐには?発生理由や防止策、過失割合を解説
2021年に起きた正面衝突等の件数は10,361件で、交通事故(人身事故)全体の割合で見れば3.4%です。しかし、正面衝突等による死亡事故は、全死亡事故中で約30%を占めています。死亡事故につながる可能性が高い正面衝突事故は、大変危険な事故といえるのです。
この記事では、正面衝突事故の発生状況や原因、起こさないようにするための防止策のほか、正面衝突の過失割合について解説します。
目次
正面衝突は相対方向から来た車と向き合ってぶつかる交通事故
正面衝突事故とは、相対する方向から進行(前進)してきた車と向き合ったままぶつかる交通事故のことです。同一車線だけでなく、先行車を追い越そうとして進路を変えたり、追い越したりしている最中に、対向してきた車とぶつかった場合も正面衝突に含まれます。
車の前面同士がぶつかる交通事故として似たものに、「出合い頭事故」があります。ただし、出合い頭事故は、異なる方向から進行してきた車の前面同士の交通事故のこと。対向して走ってきた車同士の前面同士が衝突する交通事故は正面衝突事故というように、シチュエーションが異なるものなのです。
正面衝突事故と出合い頭事故の違い
正面衝突事故の状況
内閣府の統計資料の2021年交通死亡事故発生件数を見ると、正面衝突等は交通死亡事故の30.6%を占めています。一方で、発生件数で見ると最も多いのは追突の30.5%。正面衝突等は全体の3.4%にとどまります。つまり、他事故に比べて発生件数は少ないものの、死亡事故となる割合が高いのが、正面衝突事故の特徴といえます。
事故類型別の交通死亡事故発生件数(2021年)
- ※内閣府「令和4年版交通安全白書」
- ※警察庁資料によるものです。「人対車両その他」とは、人対車両の事故のうち、歩行者横断中以外の事故を指します(対面通行中、背面通行中、路上横臥等)。「正面衝突等」とは正面衝突、路外逸脱及び工作物衝突を指しています。
また、正面衝突による死亡事故は、65才以上の高齢ドライバーに多い傾向です。
警察庁の統計資料によると、2016年に起こった正面衝突等死亡事故の75.8%を占める「単路における事故」のうち、高齢ドライバーによるものは全体の39.0%。昼間に限れば、正面衝突等死亡事故の46.5%が高齢ドライバーによって起きているのです。
正面衝突の交通事故が起きる理由
「平成29年度版 警察白書」の特集「交通事故安全対策の歩みと展望」によると、2016年に起こった正面衝突等死亡事故1,191件のうち、単路における事故は903件に上り、全体の75.8%を占めています。単路とは中央線などにより道路の中央が定められていない道路のことで、正面衝突事故は単路で起きやすいことがわかります。
■道路形状別の正面衝突等死亡事故件数の内訳
道路形状 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
単路 | 903 | 75.8% |
交差点 | 101 | 8.5% |
交差点付近 | 143 | 12.0% |
その他 | 44 | 3.7% |
正面衝突事故が起こる原因としては、以下のようなものが挙げられます。
居眠り運転や脇見運転、漫然運転による前方不注意や操作不適
正面衝突事故の原因のひとつに、居眠り運転や脇見運転などが挙げられます。65才以上の高齢ドライバーの直線区間における正面衝突事故は、漫然運転による前方不注意、ハンドルの操作ミスなどの操作不適などが原因となっているケースが多いと考えられています。
居眠り運転について詳しくは以下のページをご覧ください。
居眠り運転の反則金や違反点数は?居眠り運転防止のためにできること
脇見運転について詳しくは以下のページをご覧ください。
脇見運転の罰則は?過失割合に影響はある?発生状況などと併せて解説
高速道路や一方通行路の逆走
高速道路を管理している東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)によると、全国の高速道路では概ね2日に1回の頻度で逆走が発生しています。
逆走は、正面衝突事故につながる可能性が高く、ほかの事故に比べて死傷事故となる割合が高いのが特徴です。また、2018年に逆走した運転者の約70%が、65才以上だったというデータもあります。
信号無視や一時停止違反、スピードの出しすぎ
交差点で発生する正面衝突事故は、信号無視や一時停止違反も原因のひとつです。
さらに、カーブにおいては、スピードを出しすぎてハンドルをとられ、反対車線に飛び出して正面衝突事故につながるケースが発生しています。
正面衝突事故の防止策
正面衝突を防ぐためにドライバーができる対策としては、以下のようなものが挙げられます。
<正面衝突事故を防ぐためにドライバーができること>
- ・運転前に十分な睡眠や休息をとり、居眠り運転を回避する
- ・集中力の低下を感じたらガムを噛む、適度な休憩や睡眠をとるなど、漫然運転や脇見運転を予防する
- ・高速道路で逆走車情報を見聞きしたら、十分な車間距離をとり、速度を落として走行する
- ・高速道路で逆走車を見かけたら、110番や最寄りのサービスエリアの非常電話などで通報する
- ・逆走してしまった時は、ハザードランプをつけて安全な場所に停車し、ガードレールの外側などの安全な場所に避難した上で、110番や非常電話で通報する
- ・カーブでスピードを出しすぎない
- ・衝突被害軽減(自動)ブレーキを装備した車に買い替える
- ・車線逸脱警報・抑制装置を装備した車に買い替える
一方で、以下のように、道路そのものの設備見直しも進められています。
■道路設備見直しによる正面衝突事故対策
対策 | 内容 |
---|---|
ワイヤロープへの交換 | 暫定2車線区間の区切りに使われていたラバーポールをワイヤロープに交換。 |
ランドルストリップスの設置 | センターライン(中央線)にかまぼこ状のランドルストリップスを設置して、車線逸脱時に不快な振動や音を発生させる。 |
進入禁止を示す標識の設置 | 高速道路のインターチェンジやサービスエリアに進行方向の標識を設ける。 |
進行方向を示す矢印設置 | 高速道路のインターチェンジやサービスエリア路面に矢印で進行方向を示す。 |
逆走防止装置の設置 | 逆走車を感知すると発光して「逆走戻れ」と警告表示する掲示板を設置する。 |
正面衝突事故を起こした際の過失割合
交通事故の当事者間で、事故の責任がどちらにどれだけあるのかを示したものを「過失割合」といいます。
交通事故の被害者は、加害者に対して事故によって生じた損害の賠償を請求できます。対象になるのは、ケガの治療費や休業損害、破損した車の修理代、後遺障害を負った場合の逸失利益、精神的な損害に対する慰謝料などです。
なお過失割合は、通常、事故の当事者同士の話し合いで決まることが多いものです。ケースごとに設定されている「基本の過失割合」をもとにしつつ、個別の状況を加味して修正を加え、決定されるのが一般的です。
交通事故の過失割合の詳細やその決まり方について詳しくは以下のページをご覧ください。
交通事故の過失割合とは?決め方や流れ、不満が残るときの対策を解説
事故パターンごとの基本の過失割合について詳しくは以下のページをご覧ください。
【交通事故の過失割合】車同士の事故の場合をパターンごとに解説
【交通事故の過失割合】車対バイクの事故の場合をパターンごとに解説
【交通事故の過失割合】車と歩行者の事故をパターンごとに解説
【交通事故の過失割合】車・バイクと自転車の事故をパターンごとに解説
万が一に備えてドライブレコーダー付きの自動車保険加入を検討しよう
正面衝突は死傷事故につながることが多く、非常に危険な交通事故です。日頃からカーブでのスピード出しすぎに注意するのはもちろん、居眠り運転や漫然運転を防ぐために運転中は適度な休息をとる、車線逸脱警報・抑制装置付きの車に買い替えるなど、できる限りの対策をしておくのがおすすめです。
万が一の事態に備えて、事故の状況を記録できるドライブレコーダーの装備と、自動車保険への加入をしておくと安心です。さらに弁護士費用特約をセットしておけば、相手との交渉が難航した際も、弁護士に交渉を依頼する際の費用が補償されます。
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