2023.07.14
脇見運転の罰則は?過失割合に影響はある?発生状況などと併せて解説
2023.07.14
脇見運転の罰則は?過失割合に影響はある?発生状況などと併せて解説
車の運転中は、何かに気をとられて前方への注意を少し怠っただけで、重大事故につながります。
この記事では、重大事故につながりやすい「脇見運転」について、発生状況や起こりやすいシチュエーションを紹介します。また、脇見運転をしてしまった場合の反則金や罰則、過失割合判断への影響についても見ていきましょう。
目次
脇見運転とは安全運転義務違反となる「前方不注意」のひとつ
脇見運転は、道路交通法第70条によって定められている「安全運転の義務」に違反する行為のうち、「前方不注意」の一種です。
前方不注意には、前は見ているものの別のことを考えていて運転に集中していなかった「漫然運転」や、外の景色や車内での探し物などに気をとられ、しっかり前を見ていなかったりする「脇見運転」があります。
漫然運転
漫然運転は、物理的には前を見ながら運転しているもののぼんやりとほかのことを考えたりして、運転に集中していない状態です。
信号や歩行者などを見落としたり、速度超過に気づかなかったりすることが多く、非常に危険な行為といえるでしょう。
脇見運転
脇見運転は、外の景色に気をとられていたり、車内で探し物をしていたりして、物理的に前方から目を離した状態での運転を指します。脇見運転も、重大事故につながる危険な行為です。
スマートフォン(携帯電話)やカーナビを見るのに、前方から目を離す行為は脇見運転の定義にあてはまります。そもそも運転中にスマートフォンで通話をしたり、スマートフォンやカーナビなどの画面を注視したりする行為は、道路交通法第71条第5の5で禁止されており、重い罰則があることに注意してください(傷病者の救護など緊急にやむを得ずに行う場合は除きます)。
脇見運転の発生状況
警察庁交通局の「令和3年中の交通事故の発生状況」(2022年5月)には、交通事故件数の推移が掲載されています。
この資料によると、2021年に脇見運転が原因となった交通事故は3万6,499件発生しています。年間の交通事故総数の28万4,264件のうち、事故原因の第1位は「安全不確認」の年間9万1,413件(32.2%)ですが、脇見運転は2番目に多い事故原因となっています。
また、警察庁交通局の「令和3年における交通事故の発生状況等について」(2022年3月)を見ると、75才未満のドライバーの脇見運転(外在的前方不注意)による死亡事故件数に関しては、高齢ドライバーの2倍以上であることがわかります。
■ドライバーによる年齢層別死亡事故の人的要因比較(2021年)
- ※警察庁交通局の「令和3年における交通事故の発生状況等について」を使用しています。
- ※第1当事者が自動車(乗用車、貨物車、特殊車)の件数です。75才以上の高齢ドライバーは死亡事故件数:308件(調査不能が24件)、75才未満のドライバーの死亡事故件数:1,676件(調査不能が78件)です。
なお、ここでの「交通事故」とは人身事故を指しており、自損事故などの物損事故は含んでいません。
脇見運転が起きやすいシチュエーション
脇見運転は、何らかの理由でドライバーの注意が前方から逸れたタイミングで起こります。ここでは、脇見運転が起きやすいシチュエーションをご紹介します。
前方以外の景色や車内の会話などに気をとられていた時
助手席に座っている同乗者が風景を見て、「すごい、見て!」と驚いた声を上げたので、ついその方向を見てしまったことはないでしょうか。後席の同乗者との会話に夢中になり、一瞬でも後席のほうを向いて前方から視線を外してしまうケースも、脇見運転の例として挙げられます。
カーナビやオーディオ、エアコンなどの調整をしていた時
カーナビは運転中の操作ができないようになっていますが、不慣れな道を走っていて、注視しながら走ってしまうと脇見運転になります。また、オーディオの曲選びや音量調整、エアコンの温度調整などがなかなかうまくいかず、前方から車内の操作スイッチに目を向けてしまうケースもあります。
運転中に足元に落ちたものを拾おうとした時
車内に置いていたスマートフォン(携帯電話)やペットボトル、アクセサリーが運転席の足元や助手席に転がり落ち、それを拾おうとして目を離したことが交通事故につながるケースは後を絶ちません。同時に、ハンドルやアクセルペダルの操作を誤ってしまう危険性もある行為といえます。
脇見運転など安全運転義務違反をした時の反則金や罰則
脇見運転をして交通事故を起こしてしまったら、どうなるのでしょうか。脇見運転が原因の交通事故は、道路交通法第70条の「安全運転義務違反」があったとして、運転免許の違反点数2点が加算され、以下のとおり、車両の大きさなどに応じた反則金が科されます。
ぼんやりと運転していた漫然運転で事故を起こした時や、前方不注意・操作不適など、その他の安全運転義務違反で事故を起こした時も同様です。
■脇見運転で事故を起こした場合の罰則
違反点数 | 2点加算 | |
---|---|---|
反則金 | 原付車 | 6,000円 |
二輪車 | 7,000円 | |
普通車 | 9,000円 | |
大型車 | 12,000円 |
車の運転中にスマートフォン(携帯電話)で通話をしたり、カーナビなどの画面を注視したりする運転は、「ながら運転」と呼ばれています。
ながら運転は、前述のように道路交通法第71条第5号の5違反となり、安全運転義務違反よりも重い罰則が科されます。
ながら運転を原因とする交通事故の増加を受けて、ながら運転に関する罰則は2019年12月1日に厳罰化されました。詳細は以下のとおりです。
2019年12月1日以降 | |
---|---|
運転中にスマートフォンなどを注視、通話といった違反があった場合 | 違反点数:3点加算 反則金:18,000円 罰則:6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金(反則金を支払わなかった場合のみ) |
運転中にスマートフォンなどを注視、通話といった違反があり、なおかつ交通事故を起こした場合 | 違反点数:6点加算(免許停止) 反則金:適用なし(非反則行為として、すべて刑事処分を適用) 罰則:1年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
覚えておきたいのは、ながら運転で交通事故を起こした場合、交通反則通告制度の対象外になったため、反則金を納めることで罰則を免れられなくなったこと。違反点数6点加算となり、免許停止となるのです。
事故発生時、脇見運転は過失割合の修正要素になる
脇見運転は、事故が起きた際の過失割合の判定にも影響します。過失割合とは、交通事故の当事者双方の事故に対する責任の割合を数字で表したものです。「自分:相手方=30:70」といったように表されます。
過去の判例などにより、事故の類型ごとに「基本の過失割合」が存在します。実際の事故では、この基本の過失割合をベースにしながら、「個別の状況」を加味して修正を行い、最終的な過失割合が決まるのが一般的です。この過失割合にもとづいて、賠償金が支払われることになります。
過失割合について詳しくは以下のページをご覧ください。
交通事故の過失割合とは?決め方や流れ、不満が残るときの対策を解説
脇見運転は「著しい過失」にあたることが多い
過失割合の判定の際に加味される「個別の状況」はさまざまです。例えば、信号機のある交差点で直進車Aと対向右折車Bがお互いに青信号で交差点に進入し、衝突した場合、基本的な過失割合は「A:B=20:80」です。
■脇見運転の事例
ただし、以下のような事情があれば、過失割合が修正されます。
■過失割合が加算されうる事情
直進車A | 対向右折車B |
---|---|
|
|
脇見運転は、著しい過失に相当することが多いでしょう。つまり、過失割合が加算される事情になるのです。事故の類型によるものの、著しい過失があると5~10%の過失が加算されるケースもあります。
事故類型別の基本の過失割合と過失割合が修正される事情、修正量について詳しくは以下のページをご覧ください。
【交通事故の過失割合】車同士の事故の場合をパターンごとに解説
【交通事故の過失割合】車対バイクの事故の場合をパターンごとに解説
【交通事故の過失割合】車と歩行者の事故をパターンごとに解説
【交通事故の過失割合】車・バイクと自転車の事故をパターンごとに解説
自分が交通事故の被害者となったとき、最終的な過失割合にもとづく賠償金額に納得できないこともあるかもしれません。その際は、弁護士に相談してみるのがおすすめです。
自動車保険に弁護士費用特約をつけていれば、弁護士に相談したり、交渉を依頼したりすることができます。安易に示談に応じると後悔する可能性もあるため、弁護士の費用特約についても検討してみてください。
自動車保険の弁護士費用特約について詳しくは以下のページをご覧ください。
自動車保険の弁護士費用特約とは?メリットや使う場面、注意点を解説
脇見運転以外の安全運転義務違反の種類
脇見運転以外にも、道路交通法第70条の安全運転義務違反にあたる行為があります。漫然運転または脇見運転が該当する前方不注意のほか、どのような行為が安全運転義務違反にあたるのか、確認しておきましょう。
操作不適
操作不適とは、車の運転操作に関するミスのことです。ハンドル操作の誤りやアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いなどが該当します。特にペダル操作の誤りは、重大事故につながりやすくなります。
動静不注視
動静不注視とは、周りの車や人の存在や動きに気付いていながらも「問題ないだろう」と判断し、注意を怠る運転で、「だろう運転」とも呼ばれます。
例えば、前方の走行車が左折する際、「停止せず曲がるだろう」と注意を怠って車間距離を詰めていたところ、歩行者の存在によって急停車したことで起きた交通事故が該当します。
安全不確認
安全不確認は、自車の前後左右の安全確認が不十分だったために交通事故が起きるケースを指します。仮に交差点を左折する際、左側の歩行者に気付いて注意をしたものの、右側から来る自転車には気付かなかったせいで起きた交通事故などは、典型的な「安全不確認」です。
安全速度違反
法定速度内や制限速度内での走行ではあったものの、状況に応じた安全な速度ではなかった場合が「安全速度違反」に該当します。見通しの悪い交差点で減速や徐行しなかった場合がこれにあたるので、注意が必要です。
予測不適
予測不適は、周囲の動きに対する予測が不適切な運転です。ドライバーが「対向車が止まってくれると思った」「この車の車幅なら歩行者に接触しないと考えた」といった勝手な思い込みをした結果、交通事故を起こすような運転が例として挙げられます。
その他
「その他」は、上記のいずれにも該当しない安全運転義務違反を指します。具体例としては、複数の車線をまたいで走るジグザク運転(蛇行運転)やハンドルから手を離して運転する手放し運転などです。
万が一の事故に備えて、ドライブレコーダー付き自動車保険を
脇見運転は、重大な事故につながる可能性がある非常に危険な行為です。脇見運転で交通事故を起こしてしまった場合、違反点数加算や反則金といった罰則が発生し、交通事故の過失割合の判定においても不利になってしまいます。「運転中に足元に転がり落ちたものを、ちょっと拾おうとした」など、脇見運転が発生しやすいシチュエーションは誰にも起こります。普段から注意しておきましょう。
もし交通事故に巻き込まれてしまった際、ドライブレコーダーがあれば、事故の状況を示す証拠となります。三井住友海上では、ドライブレコーダー付きの自動車保険も選択が可能です。
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