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車と歩行者の事故

2022.12.27

【交通事故の過失割合】車と歩行者の事故をパターンごとに解説

車と歩行者の事故

2022.12.27

【交通事故の過失割合】車と歩行者の事故をパターンごとに解説

警察庁の発表によると、2021年の交通事故での死者数・重傷者数の総計は29,840人。そのうち、歩行者対自動車の事故による人数は4,566人で、全体の約15%を占めています。
ここでは、歩行者対車の事故における過失割合の基本的な考え方と、主要な事故ごとの過失割合について解説します。

車は交通弱者である歩行者により注意すべき

交通事故が起きたとき、最終的に事故の当事者が支払う・受け取る賠償金額は、事故の責任を数字で表した「過失割合」に応じて支払われます。歩行者対車の事故における基本の過失割合は、事故状況別に、過去の事例などをもとにした基本の過失割合が示されています。

歩行者は、交通事故でのダメージを負いやすいいわゆる「交通弱者」であり、事故にもあいやすい存在です。実際に、2020年の交通事故での死亡者2,839人のうち、歩行者は1,002人に上っており、状態別死者数(亡くなった方が、歩いていたのか、自転車や車に乗っていたのか等の事故時の状態のこと)では歩行者が最多となっています。
このようなことから、歩行者対車の事故では、基本的過失割合について、歩行者の過失割合が低く設定されているケースが多いです。

交通事故の過失割合について詳しくは以下のページをご覧ください。
交通事故の過失割合とは?決め方や流れ、不満が残るときの対策を解説

車の事故が起きたときの対応について詳しくは以下のページをご覧ください。
車の事故が起きたときの対応は?交通事故対応の手順やポイントを解説

歩行者と車の事故で、過失割合が修正される要素

実際に事故が起き、過失割合を決める場合は、基準となる過失割合をベースに、個々の事情を加味した修正を加えるのが一般的です。
例えば、事故が夜間だった場合や歩行者が児童や高齢者だった場合、小学生の集団登校や事故の場所が商店街だった場合などが修正要素となります。

交差点などにおける事故の基本の過失割合

交差点は、車と歩行者の事故が最も多い場所のひとつです。それだけに、さまざまな事故のパターンがあり、過失割合も状況によって異なります。よく見られる事例や、類似した事例をまとめてご紹介します。

横断歩道を横断中の歩行者と、車による事故

歩行者が横断歩道を渡っていたとしても、車との事故に巻き込まれてしまうことがあります。発生しやすい事例を挙げて、過失割合や重視される交通ルールを確認しましょう。

横断歩道を横断中の歩行者と、車による事故

(1)歩行者、車共に青信号の場合

信号機のある交差点において、歩行者は青信号で横断歩道を渡り、一方の車も青信号で右左折して事故に至った場合、基本の過失割合は「A:B=0:100」(Aが歩行者、Bが車)です。
このケースでは、青信号でルールを守って横断する限り、歩行者の過失はまったく認められないことがポイントです。共に青信号だったとしても、歩行者が横断歩道を横断していることは車から見て明らかにわかることであり、車には停止する義務があります。それを怠った車の責任は重いと考えられているのです。

(2)歩行者が黄色信号、車が青信号の場合

歩行者側の信号が青でなかった場合は、事情が違ってきます。交差点において、歩行者が黄色信号(あるいは青点滅)のときに横断を開始し、車が青信号で交差点に進入して事故に至った場合、基本の過失割合は、「A:B=30:70」(Aが歩行者、Bが車)となります。

(3)歩行者、車共に黄色信号の場合

交差点において、歩行者は横断歩道を黄色信号で渡り、一方の車も黄色信号で右左折して事故に至った場合、基本の過失割合は「A:B=20:80」(Aが歩行者、Bが車)となります。
車側により重い過失が認められますが、歩行者にも黄色信号で横断したという一定の過失があるとみなされることに。また、通常、車は黄色信号で交差点に進入してはならないのですが、交通量が多い交差点の場合は黄信号でなければ右左折が難しい場合がある点も考慮されています。

(4)信号がない場合

信号がない交差点、もしくは横断歩道における事故のケースも見てみましょう。
横断歩道は歩行者を保護するための道である点を考慮すると、基本的に、横断歩道での事故の過失は、すべて車にあるとみなされることに。そのため、基本の過失割合は「A:B=0:100」(Aが歩行者、Bが車)となります。

(4)信号がない場合

(5)歩行者が、歩行者を完全に保護するための「歩道」を通行している場合

基本の過失割合が「A:B=0:100」(Aが歩行者、Bが車)となるパターンとして、歩道を通行する歩行者と車の事故もあります。このケースは、歩道を歩いている歩行者に車が道路内または道路外から突っ込んで事故となった場合であり、歩道を歩いていた歩行者には一切の過失がなく、前方不注意等も加味されません。歩道は横断歩道と同じく、歩行者を完全に保護するための道だからです。
歩道に車が突っ込んだ事故の場合は、単に「0:100」というだけでなく、夜間や幹線道路といった個別の修正要素が考慮されずに、原則として100%車側の過失となります。

<交差点での車と歩行者の事故におけるポイント>

事故全体の中で、過失割合が「0:100」で判定されるケースは実はそう多くありません。車同士の事故やバイクと車の事故などの場合は、交差点においてほとんどの場合どれだけ一方的な事故であっても、「10:90」程度の過失割合となることがほとんどです。「0:100」で判定されるのは歩行者と車による事故で、それも青信号の横断歩道など、歩行者が絶対的に保護されるべき状況に限られます。
ただし、歩行者が保護されるべき状況でも、夜間だったり、幹線道路だったりすると、歩行者側にも多少の過失が認められることがあります。夜間という条件が歩行者の過失につながることに違和感を持つかもしれませんが、これは「夜間であれば当然車はライトをつけているはずなので、歩行者はより車に注意しやすい」といった点などが理由です(夜間であってもライトをつけずに車が走行していた場合は、歩行者からの車の発見が容易ではないため、車の過失が重くなります)。

横断歩道のそばを渡る歩行者と、車の事故

歩行者の中には、横断歩道があるにもかかわらず、横断歩道外を歩く方もいます。横断歩道外を横断していた場合、過失割合への影響はあるのでしょうか。発生しやすいケースを挙げて、過失割合などを確認しましょう。

横断歩道のそばを渡る歩行者と、車の事故

(6)歩行者、車共に青信号の場合

歩行者と車、共に青信号であれば、信号機のある交差点に右左折して進入した車と、横断歩道外を横断する歩行者が衝突した場合、基本の過失割合は「A:B=10:90」(Aが歩行者、Bが車)となります。
歩行者が横断歩道を歩いていたのであれば「0:100」となりますが、横断歩道があるにもかかわらず横断歩道を外れて横断していた歩行者にも、若干の過失を認めた形です。

(7)歩行者が黄色信号、車が青信号の場合

交差点において、歩行者が横断歩道外を黄色信号で渡った場合、歩行者の過失は大きくなります。車側が青信号なら、基本の過失割合は「A:B=40:60」(Aが歩行者、Bが車)です。
歩行者と車の事故で、これだけ歩行者側の過失が大きくなるケースはそう多くありません。横断歩道上を歩くことも重要ですが、信号を遵守できているか否かは重要な考慮要素となっていることがわかります。

(8)歩行者、車共に黄色信号の場合

交差点において、歩行者が横断歩道外を黄色信号で渡り、なおかつ車側も黄信号で右左折して交差点に進入し、事故に至った場合、基本の過失割合は「A:B=30:70」(Aが歩行者、Bが車)です。
共に黄色信号のため、(7)の車が青信号であったケースよりも、車側の過失がやや大きくなります。

(8)歩行者、車共に黄色信号の場合

(9)歩行者が、横断歩道からさらに距離のある場所を横断した場合

歩行者が、(6)~(8)よりもさらに横断歩道から距離のある場所を横断し、直進してきた車と事故にあうケースもあります。この場合、歩行者はあくまで横断歩道を渡るべきであると考えられ、基本の過失割合は「A:B=30:70」(Aが歩行者、Bが車)とされます。

幹線道路など信号のない交差点における事故の基本の過失割合

幹線道路は交通量が多く、歩行者にとって危険性の高い場所といえます。そのような交差点で、さらに信号がない場合の事故における基本の過失割合を見ていきましょう。

幹線道路など広い道周辺での歩行者と車の事故

幹線道路など、広い道と狭い道が交わる交差点での歩行者と車の事故も、比較的発生しやすいケースです。具体的な事例を挙げて、過失割合などを確認しましょう。

幹線道路など広い道周辺での歩行者と車の事故

(10)歩行者が、幹線道路などの広い道を横断する場合

幹線道路などの広い道と狭い道によって構成される交差点で、歩行者が広い道を横断し、広い道を直進する車と衝突した場合、信号がなければ基本の過失割合は「A:B=20:80」(Aが歩行者、Bが車)となります。
これが、車側が右左折して交差点に進入し、歩行者と接触した場合は、基本の過失割合は「A:B=10:90」(Aが歩行者、Bが車)です。

いずれにしても、横断歩道も信号もない広い道を横断することの危険性は明らかであり、歩行者にも注意義務があることから、歩行者にも一定の過失が認められるのです。ただし、車が直進ではなく、右左折で広い道に進入する場合は、普段以上に注意義務があるとみなされ、車の過失がその分大きくなります。

(11)歩行者が、狭い道を横断する場合

交差点において、歩行者が狭い道を横断しようとして、直進車または右左折車と事故に至った場合、車が直進か右左折車かにかかわらず、基本の過失割合は「A:B=10:90」(Aが歩行者、Bが車)となります。幅の狭い道路を直進して広い道路を横断する車や、狭い道に入る車には注意義務が課せれているため、このケースでは車側の責任は重くなるのです。

(12)道幅に差がない場合

道幅に差のない交差点の場合はどうでしょうか。どちらかが広い、狭いといった優先関係のない交差点における車と歩行者の事故では、基本の過失割合は「A:B=15:85」(Aが歩行者、Bが車)となります。
どちらかの道が広いわけでも狭いわけでもないことから、前述した広い道のケース(10)と狭い道のケース(11)の中間程度の過失割合になります。

そのほかの事故の基本の過失割合

歩行者は車と違って道を自由に歩きやすいため、上記で紹介した以外にも、さまざまな事故のケースが起こる可能性があります。ここでは、そのほかの車と歩行者による事故について見ていきましょう。

交差点でもなく横断歩道もない道を横断する際の歩行者と車の事故

横断歩道や信号がない場合、歩行者にも一定の注意義務が求められることがポイントです。具体的な基本の過失割合、考慮される可能性のある状況などを紹介します。

交差点でもなく横断歩道もない道を横断する際の歩行者と車の事故

(13)歩行者が交差点も横断歩道もない場所を横断した場合

近くに交差点も横断歩道もない道路を歩行者が横断し、直進車と事故に至った場合、基本の過失割合は「A:B=20:80」(Aが歩行者、Bが車)となります。
ただし、このケースはほかにさまざまな状況が事故要因として挙げられることが多いです。例えば、夜間だったり、横断禁止の規制があったりすると歩行者の過失割合は大きくなりますし、反対に歩行者が児童や高齢者だったり、集団横断をしていたりすると、車の過失割合が大きくなります。

後退(バック)する車との事故

バック運転をしている後退車と歩行者の事故も、よくあるケースです。2つの例を挙げて、基本の過失割合などをご紹介します。

後退(バック)する車との事故

(14)後退車のすぐ後ろを歩行者が横断した場合

後退車のすぐ後ろを歩行者が横断しようとして事故に至ったケースでは、基本の過失割合は「A:B=20:80」(Aが歩行者、Bが車)となります。
車は当然ながら後方に人がいないか確認する必要がありますが、対する歩行者側も、車がバック運転する可能性を多少は考えておく必要があるのです。

(15)後退車から離れた場所を歩行者が横断した場合

歩行者が後退車のすぐ近くではなく、離れた場所を横断しようとして、そこに後退車がバック運転で突っ込み衝突した場合は、基本の過失割合は「A:B=5:95」(Aが歩行者、Bが車)です。
離れた位置にいる歩行者はより発見しやすいことなどから、車側には(14)のケースより大きな過失が認められます。

自動車保険に加入して、万が一の事故に備えよう

車対歩行者の事故は、歩行者側に多少の法令違反があっても、車側の過失割合が高くなるケースがほとんどです。子どもの飛び出しや高齢者の突然の横断など、どんなに気をつけても完全に防ぐことが難しいケースもあるかもしれませんが、交通弱者である歩行者保護の観点からも、ほとんどの場合に車の過失が大きいと判定されます。
ひとたび事故が起きれば、車のドライバーには多額の賠償金が発生する可能性があるのです。事故が起きたら強制保険である自賠責保険だけでは賠償額に満たないことも多々ありますから、もしものときに備えて自動車保険に加入しておくのがおすすめです。

三井住友海上では、事故後の示談交渉においてしばしば当事者間で意見が食い違うこともある事故時の状況を記録し、証拠としても活用可能なドライブレコーダーをセットする「見守るクルマの保険(プレミアム ドラレコ型)」をはじめ、さまざまな自動車保険を取りそろえています。また、必要な特約をおひとつから組み合わせていただくことも可能です。
この機会に、万が一への備えとして、自動車保険の加入や補償内容の見直し、必要な特約の追加を検討してみてはいかがでしょうか。

示談について詳しくは以下のページをご覧ください。
示談書とは?交通事故での作成のポイントや記載事項などを解説

交通事故証明書について詳しくは以下のページをご覧ください。
交通事故証明書とは?必要な場面や入手方法、注意点をチェック

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■記事監修
弁護士 坂本 玲央(東京弁護士法人)

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