2023.09.04
示談書とは?交通事故での作成のポイントや記載事項などを解説
2023.09.04
示談書とは?交通事故での作成のポイントや記載事項などを解説
交通事故で相手がいる場合、裁判ではなく示談交渉によって和解を目指し合意すると、示談書を作成することになります。示談書とは、示談の内容についてまとめた文書のことです。
ここでは、交通事故後の交渉で示談書を残す意味をはじめ、公正証書との違いや示談書に記載すべき項目、示談書作成にあたっての注意点などについて解説します。
示談交渉における合意内容を記す示談書
示談は、法律上は和解契約に分類され、当事者同士が裁判外で解決方法を話し合い、お互いに内容に納得して示談を行う意思表示をすれば成立します。示談書は、その和解契約の内容を書面化した、示談の内容を証明するものです。
交通事故の示談書には、どんな事故で、双方の過失割合・損害額はどうだったのか、どちらからどちらにいくらの金額を支払うのかといったことが記載されます。後日トラブルにならないよう、事故の当事者双方がそれぞれ署名・捺印した示談書を作成し、1部ずつ保管するのが一般的です。双方に過失のある物損事故において、示談交渉と、その結果として示談書の作成が行われることが多くなっています。
なお、示談書は被害者側・加害者側のどちらが作成してもよく、示談交渉に保険会社を通す場合、示談書は通常、保険会社の担当者が作成するため、自分で用意する必要はありません(ただし、被害者の過失割合がゼロの場合は、被害者は自身の加入する保険会社に交渉などの一切を依頼することができません)。
強制執行力で差のある示談書と公正証書
示談書は、契約書の一種であり私文書にあたります。決まった書式はなく、基本的には当事者双方の署名・捺印があれば、当事者双方が内容に納得していると推定されます。もし、示談の内容が守られない場合は、示談書を証拠として民事裁判を申し立て、「被告は、原告に対し、〇〇万円を支払いなさい」といった判決を得なければ、相手方の財産を差し押さえて、示談金の回収をはかるなどといった「強制執行」を行うことができません。
一方の公正証書は、事故の当事者が公証役場に赴き、公正な第三者である公証人の前で本人確認した上で、公証人法にもとづき作成される公文書のことです。文書の作成手続きは法律によって厳格に規定されているため、公正証書には「その文書が作成名義人の意思にもとづいて作成された」との強い推定が働きます。
公正証書は、「債務者が債務を履行しないときは、直ちに強制執行を受けても異議のないことを承諾する」など、強制執行認諾文言(条項)が入っていれば、示談の内容が守られない場合、公正証書そのものを「債務名義(強制執行する際に必要な文書のこと)」として強制執行の申し立てができます。
なお、公証役場で手続きを行うことで、作成した示談書を公正証書化することも可能です。示談書を持って当事者双方がそろって公証役場へ赴くか、代理人を立てます。手続きには、本人の身分が確認できる書類や委任状(代理人に依頼する場合)といった書類なども必要になります。
示談書の記載項目
交通事故の示談書に記載すべき項目は、およそ次のようなものがあります。
■示談書のイメージと記載項目
1)事故発生日時
事故発生日時は、交通事故証明書(各都道府県の自動車安全運転センターが発行するもので、任意保険に加入していれば保険会社が手配します)にもとづいて記載します。
2)事故発生場所
事故発生場所は、事故発生日時と同様に交通事故証明書にもとづいて記載します。
3)事故内容
事故内容には、事故の状況や形態(追突、出合い頭に衝突など)をはじめ、損害が発生した事実や被害物などについて簡潔に記載します。
4)事故当事者氏名、車両登録番号
事故当事者氏名、車両登録番号の欄には、事故の当事者双方の氏名と車両登録番号(登録ナンバー)を記載します。
5)損害額
損害額の欄には、修理費をはじめとする、事故で生じた損害の額を記載します。
6)事故の責任割合
事故の責任割合には、合意に達した双方の過失責任割合を記載します。
7)示談条件
示談条件の欄には、損害額と過失責任の割合を掛け合わせ、双方が相手側の損害額をいくらずつ負担するのかを算出して記載します。続けて、最終的にどちらがどちらにいくら支払うのかを記載します。お互いの支払額を相殺して、相殺しきれなかった分だけを支払う方法もあれば、それぞれの支払額を支払い合う方法もあります。
謝罪を行う、当事者に守秘義務を課す、免責事項を設けるなど、弁済以外の示談条件は「その他」欄に記載します。
8)署名・捺印
署名・捺印欄には、日付を記載し、当事者双方が署名・捺印を行います。
示談書を作成する上での注意
示談とは和解契約を結ぶことなので、一度示談が成立して示談書を作成すると、原則として一方の都合で覆すことはできません。そのため、示談書を作成する上では、いくつか注意すべき点があります。
事故の損害がはっきり確定してから示談書を作成する
交通事故では、その場では何ともなかったのに後から痛みが出て治療が必要になる、後遺障害が発生してしまう、後遺障害が悪化するといった場合があります。早急に示談を進めてしまうと、これらの損害が示談条件に反映されず、自身が被害者の場合、受け取れる賠償金が少なくなってしまう可能性があります。そのため、示談書の作成は、事故の損害がはっきり確定してから行うことが大切です。
いつなら事故の損害がはっきり確定したといえるのかは、なかなか難しい問題ですが、一般的にはケガをした被害者の治療が完了するか、症状が固定して今後の見通しがついた段階で作成されます。
なお、交通事故の損害賠償・慰謝料請求権の時効は、基本的には人身事故で発生から5年間、物損事故で発生から3年間なので、これ以上時間をかけることはできません。
清算条項を入れるかどうかは慎重に検討する
清算条項とは、「被害者は、示談の成立後、加害者に対して何らの請求をしない」などの文言で表される、当該示談書以外の請求は一切しないとする取り決めです。これがあると、後で新たに後遺症が発覚した場合も請求ができなくなるので、示談書に盛り込むなら、慎重に話し合いを行う必要があります。
清算条項を設ける場合は、被害者に新たな後遺症が発生した場合は別途協議を行うなど、留保条項を入れておくのが一般的です。
示談内容は基本的に覆せない
当事者双方が合意して示談書に書かれた内容は、基本的に後から覆すことはできません。最高裁判所の判例に、示談後の追加請求を認めたものはありますが、その条件は非常に厳しく、簡単に認められるものではありません。内容に不満がある場合は、安易に示談に合意するのは避けるべきです。
示談屋や事件屋に注意
示談交渉に参加するのは、事故の当事者本人かその依頼を受けた代理人です。代理人については法律などにより、保険会社と弁護士以外の者は、報酬を得る目的で他人の事件を処理することはできないとされています。しかし、交通事故の示談交渉には、ごくまれにではありますが、無償で依頼を受けた当事者の親族でも弁護士でも保険会社でもない、素性がわからない人が登場することがあります。
時には、法律に違反して高額の報酬で代理を請け負う「示談屋」「事件屋」と呼ばれる人たちが介入してくることもあるので、注意が必要です。そのまま示談交渉を進めるのはトラブルのもとなので、相手方の当事者に本当にその人に示談交渉を依頼したか確認するといった対応が必要になります。
自動車保険は示談交渉のサポートも受けられる
示談は和解契約であり、示談書に記された内容は、基本的に後から覆すことができません。事故後の示談交渉は精神的な負担がかかる中で、慎重に進める必要があるものですが、自動車保険に加入していれば、示談交渉のサポートを受けることもできます。
三井住友海上の自動車保険では、お客さまに代わって相手の方との示談交渉を行う示談交渉サービスもございます。ぜひこの機会に、自動車保険の加入をご検討ください。