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交通事故

2022.09.15

交通事故の過失割合とは?決め方や流れ、不満が残るときの対策を解説

交通事故

2022.09.15

交通事故の過失割合とは?決め方や流れ、不満が残るときの対策を解説

交通事故が起きた後に決めなければならないのが、双方の責任を示す過失割合です。事故が起きたら誰でも動揺してしまうものですが、そうした中でも話し合いを重ね、納得のできる過失割合に着地させなければなりません。
ここでは、交通事故の過失割合は誰がどのように決めるのかをはじめ、事故タイプ別の過失割合や、認定された過失割合に万が一不満がある場合の対処法などについて解説していきます。

交通事故の当事者それぞれの責任を表す過失割合

過失割合とは、交通事故の当事者双方にどれぐらい責任があるかを数値で表したものです。例えば、相手方に7割、自分に3割というように割合で表されます。
交通事故によって生じた損害は、双方がみずからの過失割合分を負担することから、最終的には自分が受け取る額・支払う額に直結する重要なものです。

交通事故証明書には過失割合の記載はない

事故の事実を証明する書類として、警察に事故の届出を済ませた後で、各都道府県の交通安全運転センターから発行される「交通事故証明書」があります。この証明書には、過失割合は記載されていません。
これは、交通事故証明書は事故があったことを証明するもので、記載事項は、事故の発生日時や発生場所、事故の当事者の情報、事故類型などに限られるからです。より具体的な事故の状況や、当事者の証言までは記載されておらず、交通事故証明書の内容のみから過失割合が決まることはありません。

過失割合を決めるのは誰?

過失割合を決めるのは誰?

過失割合は警察が決めるものと思う方もいるかもしれませんが、事故の過失割合を決めるのは、事故の当事者です。
双方が任意保険に加入している場合は、加害者と被害者の過失割合が100:0と思われる事故を除き、双方の保険会社の事故状況調査・協議を通じ、当事者の意向をふまえて決めることが一般的です。事故の様態ごとに、過去の判例を基準として過失割合を決めていくのです。

責任割合が100:0と思われる事故では、被害者側から加害者側への賠償はないため、被害者側の保険会社は交渉の窓口となれず(非弁行為にあたり法律違反になるため)、被害者本人と相手方の保険会社での話し合いによって合意を目指します。双方に責任がある事故でも、当事者双方または一方が任意保険に加入していない場合は、当事者間での話し合いまたは、当事者と保険会社の話し合いになります。

被害者が自分で交渉に臨むのは不安だと感じる場合などは、交渉を弁護士に任せることも可能です。自動車保険の弁護士費用特約をセットしていれば、弁護士への依頼にかかる費用の補償を受けることができます。
なお、当事者双方の言い分が食い違い、話し合いによって過失割合の合意に達するのが困難な場合は、最終的に調停や裁判によって過失割合を決めることになります。

弁護士への依頼(弁護士費用特約)について詳しくは以下のページをご覧ください。
自動車保険の弁護士費用特約とは?メリットや使う場面、注意点を解説

過失割合はどのように決定する?

賠償金の支払額・受取額に直結する過失割合は、どのようにして決まっていくのでしょうか。基本的な流れは、以下のとおりです。

■過失割合決定までの流れ

過失割合決定までの流れ

<過失割合決定までの流れ>

  • ・事故状況に関して、警察の資料(実況見分調書など)や当事者が撮影した現場写真、車の損害状況、ドライブレコーダーの映像、双方の証言などをもとに、認識のすり合わせを行う
  • ・事故の類型・形態から、過去の判例をもとに、基本過失割合を確認する
  • ・事故当時の細かな状況に応じて、基本過失割合から修正を行う
  • ・話し合いの結果、双方が合意する

1. 事故状況に関する当事者間の認識をすり合わせる

始めに、事故状況について、認識のすり合わせを行います。双方の証言や記録をもとに話し合っていきますが、事故状況で意見が食い違うケース(例えば、信号の色はどちらの意見が正しかったか、一時停止をしていたか否か等)では、ドライブレコーダーなどの記録があると、客観的な証拠によって事実に即した過失割合に着地しやすいです。

2. 基本過失割合を確認する

書籍などの資料をもとに、当該事故がどの事故類型に該当するかを確認します。さらに、事故類型ごとに基本の過失割合が示されているので、まずは資料をもとに基本の過失割合を出します。
このとき参考にされるのは、例えば東京地裁民事交通訴訟研究会による「別冊判例タイムズ38(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版)」(判例タイムズ社)といった、過去の判例をもとにした資料です。

3. 基本過失割合から修正を行う

当該事故の基本過失割合が確認できたら、基本の過失割合から修正するべき事情があるかを考慮した上で、過失割合の修正を行います。
例えば、「信号機により交通整理の行われていない交差点における四輪車同士の事故」であれば、以下のパターンのうち、当該事故がどれに該当するか判断することが出発点です。

<信号のない交差点での四輪車同士の事故で確認するべき事項の例>

  • ・双方の道路幅
  • ・一方通行規制の有無
  • ・一時停止標識などの有無
  • ・優先道路か否か

例えば、「交差点において、狭い道路から広い道路へ右折した車と、広い道路から交差点に入った車が衝突した」場合、広路の車(A)の責任は20、狭路の車(B)の責任は80が基本となります。広路優先の原則があるためです。
なお、こうした基本の過失割合から、例えば(A)が減速しなかった場合は(A)の割合を増やすなど、事故の状況に応じて過失割合の調整が行われます。

4. 話し合いの結果、双方が合意する

話し合いを重ね、修正した過失割合で双方が合意すれば、過失割合は確定します。これをもとにして、互いの賠償金額も決定します。過失割合に応じた金額を相殺してどちらか一方がもう一方に支払うだけの場合もあれば、相殺せずに互いに支払うべき金額を払い合う場合もあります。

双方に過失があるなら、過失相殺が行われる

双方に過失があるとみなされる場合は、損害を公平に分担するため、被害者側の損害賠償金を過失割合に応じて差し引いて賠償することがあります。これを「過失相殺」といいます。

つまり、過失割合の大きい側は、小さい側から本来賠償金として受け取るべき金額を引いた額を、実際には賠償金として支払うのです。例えば、過失割合が15:85のケースで、被害者が被った損害額が500万円、加害者が被った損害額が100万円だったとします。被害者にも15%は過失があるわけなので、被害者は自分が被った損賠のうち15%分は加害者に請求できず、加害者が被った損害のうち15%分を支払わなくてはいけません。具体的な加害者の最終支払額は、以下のとおりです。

<過失割合が15:85のケースで過失相殺した場合>

  • ・本来加害者が支払う額:425万円(500万円の85%の金額)
  • ・本来被害者が支払う額:15万円(100万円の15%の金額)
  • ・過失相殺後に加害者が被害者に支払う額:410万円(425万円-15万円)

なお、両者に過失がある場合、必ずしも相殺払いが行われるとは限りません。

事故タイプ別の過失割合の例

事故タイプ別の過失割合の例

過失割合は事故のタイプによって、基準となる比率が決まっています。

<事故パターン別の過失割合>

  • ・自動車同士の事故
  • ・自動車対バイクの事故
  • ・自動車/バイク対自転車の事故
  • ・自動車対歩行者の事故

過失割合に不満があるときは、どうしたらいい?

過失割合は賠償金の受取額・支払額に直結するので、過失割合に納得がいかないまま示談で合意してしまうと、賠償金の額も納得がいかないものになってしまいます。
具体的には、被害者側なら受け取れる賠償金が少なくなり、加害者側なら支払う賠償金が多くなってしまうので、過失割合に不満がある場合は、そのまま示談にするのは避けるべきです(一度示談で合意すると、基本的には後になってから覆すことはできません)。

加害者側が任意保険に加入している場合、事故の過失割合は加害者側の保険会社が基準に沿って検討し、示談交渉の際に被害者側に提示することがあります。しかし、被害者は必ずしもその数字に同意しなければならないわけではありません。納得できない場合はその旨を主張し、過失割合の変更を求めて交渉することが可能です。

交渉の際にポイントとなるのは、「どの点に同意できないか」を明確にすることと、自身が主張する過失割合が適当である証拠を示すことです。具体的には、次のどちらかを主張することになります。

前提とした事故状況が間違っている
「一時停止をした」「信号は青だった」など、事故状況の認定に誤りがあると主張することで、過失割合の交渉を図ります。ドライブレコーダーの映像や事故現場で撮った写真、目撃者の証言、警察が作成した捜査資料などを示して、正しい事故状況を証明する必要があります。特に、事故の瞬間を映しているドライブレコーダーの記録があれば、有力な証拠となるでしょう。

過失割合の算定が間違っている
事故状況に意見の相違はないものの、そこから導かれる過失割合の算定に誤りがあると主張することでも、過失割合の交渉ができる場合があります。専門書の記載内容や過去の判例などをもとに、提示された過失割合が正当でないことを証明するのです。

話し合いによる過失割合の交渉が決裂したら

過失割合について、話し合いで折り合いがつかない場合は、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどによるADR(裁判外紛争解決手続)、裁判所での調停、民事裁判といった方法で過失割合を決定することになります。

基準に照らせば、過失割合90:10や80:20相当であるものの、被害者側が「加害者が100%悪い」と感じているために100:0にこだわり、なかなか示談が成立しないようなケースでは、過失割合を90:0や80:0として、被害者から加害者への支払いを0にする「片側賠償」の協議を行うこともあります。

過失割合の決定には、ドライブレコーダーの映像が役立つ

ドライブレコーダー

交通事故の過失割合は、当事者双方の賠償額を決める、重要なものです。過去の判例をもとにした資料などから当事者同士や代理人によって過失割合を決定しますが、加害者側から提示する過失割合は、必ずしもきちんと事故内容を反映したものとは限りません。被害者は納得がいかないなら理由を説明し、証拠を示して交渉する必要があります。

過失割合の決定において欠かせない事故状況の証明には、事故現場を撮影したドライブレコーダーの映像も有力な証拠になります。三井住友海上では、ドライブレコーダー付き自動車保険もご案内しており、万が一のときには心強く感じていただけるはずです。この機会にぜひ、ドライブレコーダー付きの自動車保険で必要な備えをしておきませんか。

  • この記事の内容は、2022年9月時点の内容です。今後の商品改定等によって補償内容等が変更になる可能性があります。
  • この記事の内容は、2022年9月時点の法令等にもとづいて作成しています。

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■監修:森川弘太郎(第二東京弁護士会)

森川弘太郎

東京弁護士法人代表弁護士。IT法務、エンターテインメント法務、フランチャイズに特化した企業法務専門の法律事務所にて勤務した後、東京都内3拠点の法律事務所(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人を設立。東京弁護士法人は「弱点のない総合型法律事務所」を目指し、各弁護士が個人向け業務・法人向け業務、民事事件・刑事事件問わず横断的に案件を扱う。

■監修:関口勇太(第二東京弁護士会)

関口勇太

東京弁護士法人立川法律事務所所属。大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、刑事事件・離婚・相続・交通事故等の個人向け業務から企業法務等の法人向け業務まで幅広い業務を取り扱いつつも、刑事弁護を得意分野としている。

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