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もらい事故

2022.08.26

もらい事故とは?対処の流れや賠償金の項目、注意点などを解説

もらい事故

2022.08.26

もらい事故とは?対処の流れや賠償金の項目、注意点などを解説

もらい事故とは、事故を受けた被害者側に一切の過失がない事故のことです。事故における損害は加害者が100%補償する一方、被害者にとっては示談交渉を自分もしくは依頼した弁護士しか行えない点がネックとなります。
ここでは、もらい事故が発生した場合の対応の流れのほか、被害者から加害者に請求できる損害賠償金の項目について解説します。また、自分が加入する任意保険から受けられる補償と、もらい事故の注意点などについても見ていきましょう。

被害者に一切の過失がないもらい事故

もらい事故とは、当事者の一方にまったく過失がない交通事故の俗称です。 相手のある交通事故では、過去の裁判例を基準とし、そこに個別の事故ごとの事情を加味して、当事者それぞれにどれぐらい事故の責任があるかを判断するのが通例です。この際、過失割合が高いほうを加害者、低いほうを被害者と表します。中には、過失割合100:0で被害者にはまったく非がないとされる事故もあります。これが、もらい事故と呼ばれるものです。例えば次のようなものが、もらい事故として挙げられます。

<車両同士の事故で、もらい事故とされる例>

  • ・停車中の後ろからの衝突
  • ・対向車がセンターラインを越えてきての正面衝突
  • ・交差点を青信号で進んでいた車に、赤信号で進入してきた車が衝突

もらい事故では、被害者の運転免許の点数は影響を受けない

交通ルールに違反する行為については、その内容に応じて違反点数が加算され、免許停止や取り消しなどの処分となる点数制度があります。例えば、信号無視で事故を起こし人に治療期間15日以上30日未満のケガをさせた場合は、信号無視2点+傷害事故点数6点=8点が加算され、これだけで加害者は免許停止処分になります。
被害者にも過失があると判定された場合は、被害者側も違反点数が加算されることがありますが、もらい事故では被害者には一切の違反点数の加算がありません。

もらい事故が発生したら、どうすればいい?

もらい事故が発生したときの対処法は、基本的には双方に過失がある事故の場合と変わりません。対応の流れは次のようになります。

■もらい事故発生時の流れ

もらい事故発生時の流れ

1. 安全を確保

さらなる事故を防ぐため、交通の妨げにならない安全な場所に車をとめます。車を動かせない場合は、ハザードランプをつけたり、三角停止板(停止表示機材)や発煙筒を使ったりするなどして、停車車両がいることを周囲に知らせましょう。高速道路で停車する場合は、停止表示機材の設置は義務になっています。

2. 負傷者の確認と必要に応じた救護

負傷者の確認と救護は、加害者だけでなく、事故に関わる車両のドライバーと搭乗者全員に課せられた義務です。負傷者がいないかを確認し、いる場合は何より優先して救護措置をとらなくてはいけません。必要であれば救急車の手配や止血、人工呼吸、心臓マッサージなども行います。

3. 警察へ報告

事故の当事者となったドライバーは、人身事故・物損事故を問わず警察に届け出る義務があります。安全確保と救護の後はすみやかに警察へ連絡し、事故が発生した日時や場所をはじめ、負傷者数や負傷の程度、損壊した物や損壊の程度、事故に関わった車の車載物、これまで行った対応について伝えます。

4. 相手の連絡先などを確認

警察の到着を待つあいだに、加害者の連絡先などを確認しておきます。単に聞くだけでなく、運転免許証や車検証、保険証券などを見せてもらう、名刺をもらうなどすることが大切です。これらをもとに、相手の氏名、住所、連絡先をはじめ、車のナンバーや契約している自賠責保険・任意保険の会社と証券番号、勤務先の名称・住所・連絡先を控えておきましょう。のちの示談交渉で必要となります。

5. 証拠の保全

情報収集と並行し、スマートフォンで写真や動画を撮る、ドライブレコーダーの映像を保存するなどして、事故現場の状況記録を進めます。事故の目撃者がいる場合は話を聞き、氏名と連絡先を聞いておきましょう。徐々に記憶が薄れてしまうこともあるので、話を聞く際は録音するのもおすすめです。
警察が到着すると、当事者立ち会いのもとで現場の実況見分が行われます。

6. 保険会社または保険の取扱代理店に連絡

被害者・加害者とも、それぞれが加入する保険会社または保険の取扱代理店に連絡します。もらい事故の場合、被害者側の保険会社は基本的に示談交渉に介入できませんが、もらい事故かはっきりしない場合や、自身が加入する保険から補償を受けられる場合(例えば弁護士費用特約など)もあるので、この時点ではご自身の保険会社に連絡を行ってください。
なお、保険会社に事故の連絡をしただけでは、自動車保険の等級は下がりません。

7. 病院を受診

負傷した場合はもちろん、外傷がなくても病院を受診します。例えば、頭を打った場合などでは、時間が経ってから後遺症が出ることもあるためです。

8. 示談交渉

もらい事故の場合、被害者は弁護士法によって加入している保険会社に示談交渉を任せることはできず、自身で交渉に臨むか、弁護士に交渉を依頼します。双方が賠償金額や過失割合などの条件について合意すれば、示談が成立します。

9. 加害者から被害者に賠償金の支払い

加害者から被害者に、賠償金が支払われます。

もらい事故で、被害者から加害者に請求できる賠償金の項目は?

交通事故によって受けた損害は、事故の相手方に賠償請求することができます。損害賠償請求の対象となるのは、およそ次のようなものです。

<損害賠償請求の対象となる費用>

  • ・ケガの治療費(入院・通院費用、通院にかかった交通費、付添費など)
  • ・車の修理費
  • ・休業損害(仕事を休まざるをえなくなったことで得られなかった収入の補償)
  • ・逸失利益(交通事故の後遺症がなければ将来得られるはずだった利益の補償)
  • ・慰謝料

なお、精神的な被害に対する補償である慰謝料は、物損事故では基本的に認められません。
また、慰謝料にも種類があり、入通院があった場合に請求できる「入通院慰謝料」、後遺障害が発生した場合に請求できる「後遺障害慰謝料」、被害者が死亡した場合に請求できる「死亡慰謝料」の3種類があります。このうち死亡慰謝料は、被害者本人とその遺族両方の精神的苦痛に対する賠償です。

休業損害について詳しくは以下のページをご覧ください。
休業損害証明書とは?記載項目や併せて必要な書類を解説

もらい事故で被害者が利用できる、自身の任意保険の種類は?

加害者に対する損害賠償とは別に、被害者は自分が加入する自動車保険(任意保険)から、補償を受けることもできます。例えば、被害者は自身で契約する、次の3つの任意保険や特約を活用できます。

人身傷害保険

人身傷害保険は、車に搭乗中の事故でケガをした場合の治療費をはじめ、ケガ等で働けないあいだの収入や、精神的損害に対する補償をします。

車両保険

車両保険では、車が事故で壊れてしまった場合に修理費が補償されます。ただし、車両保険を利用すると自動車保険の等級が下がって次年度からの保険料負担が増すため、修理にかかる費用と負担増の差を見極めてから利用するのが無難です。保険会社に相談すれば、どちらのほうが損をしないか試算してもらうこともできるでしょう。
三井住友海上では、こうしたご相談にも親身に対応させていただきます。気兼ねなくご相談ください。

車両保険無過失事故特約

車両保険無過失事故特約は、もらい事故で自分の保険を使っても、保険等級が下がらないようにする特約です。もらい事故で自分の保険を使う場合、人身傷害保険のみを利用しても保険等級は下がりませんが、前述のように車両保険を利用すると下がり、次年度以降の保険料が高くなってしまいます。
ただし、車両保険無過失事故特約があれば、もらい事故で車両保険を使っても保険等級が下がりません。

■もらい事故で被害者が利用できる自動車保険と特約例

もらい事故で被害者が利用できる自動車保険と特約例

もらい事故で知っておきたい注意点

もらい事故では、どのようなことに注意しなくてはいけないのでしょうか。以下、2つの点を押さえておきましょう。

被害者は保険会社に示談交渉を任せられない

双方に過失がある事故の場合は、当事者双方が相手に対して損害賠償請求を行う権利を持ちます。請求された賠償金を支払うのはそれぞれが加入する保険会社ですから、当事者は保険会社にそれぞれ交渉を依頼し、保険会社同士で示談交渉が行われるのが一般的です。

しかし、もらい事故は被害者の過失割合が0ですから、被害者側の保険会社が賠償金を支払うことはありません。この場合に保険会社が加入者に代わって示談交渉を行うことは、弁護士以外が報酬を得る目的で法律事件に関する代理行為をすることを禁じた弁護士法に抵触し、同法違反になってしまいます。

交渉に慣れた保険会社を相手に、保険会社に頼れず一人で臨まなくてはいけないのは、被害者としては不安です。そこで被害者側としては、示談交渉を弁護士に依頼する方法があります。ただし、費用はかかってしまうので、弁護士への依頼費用を補償してくれる弁護士費用特約をつけておくのがおすすめです。

加害者が被害者側の過失を主張することがある

もらい事故の示談交渉では、加害者が被害者側の過失を主張することもありえます。
その主張が妥当なものかは過去の判例を把握していないと判断が難しいので、迷ったら一度弁護士に相談するのがおすすめです。この点でも、弁護士費用特約をつけておくと安心できます。

任意保険でもらい事故に備えよう

任意保険でもらい事故に備えよう

自分には過失がなく、100%相手に過失があるもらい事故が発生したら、まずすべきことは安全の確保と負傷者の救護。続いて、警察への報告や、相手方・現場の情報収集です。その後、示談交渉で損害賠償として支払われる金額や過失割合について話し合うことになりますが、被害者は自分で交渉に臨むか弁護士に委任するかの二択となるので、弁護士費用特約に入っておくと安心です。

三井住友海上の自動車保険は、弁護士費用特約の補償対象となる事故の範囲を3種類から選ぶことができ、特約をつけることで被保険者1人につき300万円を限度に補償が受けられます。加えて、基本的な補償に人身傷害保険や車両保険、車両保険無過失事故特約が含まれているプランもございますので、心強く感じていただけるはずです。今一度自動車保険を見直して、万が一のリスクに備える万全の体制に整えておきませんか。

  • この記事の内容は、2022年8月時点の内容です。今後の商品改定等によって補償内容等が変更になる可能性があります。
  • この記事の内容は、2022年8月時点の法令等にもとづいて作成しています。

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■監修:森川弘太郎(第二東京弁護士会)

森川弘太郎

東京弁護士法人代表弁護士。IT法務、エンターテインメント法務、フランチャイズに特化した企業法務専門の法律事務所にて勤務した後、東京都内3拠点の法律事務所(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人を設立。東京弁護士法人は「弱点のない総合型法律事務所」を目指し、各弁護士が個人向け業務・法人向け業務、民事事件・刑事事件問わず横断的に案件を扱う。

■監修:関口勇太(第二東京弁護士会)

関口勇太

東京弁護士法人立川法律事務所所属。大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、刑事事件・離婚・相続・交通事故等の個人向け業務から企業法務等の法人向け業務まで幅広い業務を取り扱いつつも、刑事弁護を得意分野としている。

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