船舶が衝突した場合、両船の損害額や責任割合が確定するには、事故発生後、相当の期間を要することがしばしばあります。そこで将来、損害賠償の請求をしても、その支払いを受けられないようなことが考えられる場合にはその不安を除くために債権保全の措置を講じておく必要があります。債権の保全の方法としては現認書の取付の他に保証状(Letter of Guarantee : L/G)の取付や相手船の差押えなどがあります。

いずれも本邦の内航船同士の衝突であれば、双方とも本邦の船舶保険が付保されている場合がほとんどであるため、船主の皆さまと協議しながら、保険会社同士の示談により解決されることが多く、特にL/Gの要求や相手船の差押えの手段に訴えなくても円満に解決できるのが一般的です。

ところが、衝突した相手船が外国船である場合は、事故の発生した場所が外国であっても、日本国内であっても相手船に対する請求権を確保するために(債権の保全)、相手船の保険会社やP.I.クラブから十分な保証状を取りつけねばなりません。またこの保証状が取得できない恐れのある場合は相手船をいち早く差押える必要も出てきます。さらに相手側も同様に本船側に保証状の提出を要求しますし、場合によっては差押えをしようとすることもあります。

このような事態を避け双方の損害に対して円満に保証状を交換することが望ましいのですが、これには法的な知識と手続が必要であるため、損害額が小額の場合を除き、国内、海外の海事法専門の弁護士を起用し相手側と交渉する方法をとることが一般的です。
保証状には ①支払限度額(相手から回収しようとする最高限度額と予想される金額)およびこれに利子を含むか否か ②どこの国の法律に従うか ③裁判管轄をどこの法廷とするかが示されます。それ故先ず保証状を要求するためには本船側のおおよその損害額(修繕費、滞船損害等)を早急に見積ることが必要です。

いずれにしてもどの弁護士に委嘱するかは正にその事故毎に判断しなければなりませんが、三井住友海上では常に船主の皆さまと船体保険の共同の利益を守るために適切な弁護士を選任する用意がありますので、その都度お打合せをさせていただきます。