交通事故によって破損した被害車両が、物理的に修理することが不可能な場合、または、修理費が事故時点における当該車両の市場価格(以下、時価額といいます)等を上回る場合を「全損」といいます。全損となった車両に対する損害賠償の一般的な考え方等は以下のとおりです。

1.法律上の損害賠償責任

車両が全損となった場合に、加害者が負う法律上の損害賠償責任は時価額等までとされています。
時価額とは、「原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によって定める」とされており、一般にはオートガイド社が発行するレッドブックに記載された中古車市場価格に基づいて時価額を認定することが合理的とされています。また、あわせて車両の買い替え時に生じる買替諸費用も損害賠償の対象となります。

2.代車費用

車両が全損になった場合、上記の他、同等の車両を購入するために必要な相当期間の代車費用が損害賠償の対象となります。

3.残存物の取り扱い

保険会社が全損車両の時価額を全額賠償した場合は、民法第422条(損害賠償による代位)の類推適用により全損車両の所有権は保険会社が取得します。したがって、全損車両に残存物価額が見込まれる場合は、原則、保険会社が残存物の引取・売却を行うか、損害賠償金額から残存物価額を控除した額を保険金としてお支払いします。

<民法第422条(損害賠償による代位)抜粋>

債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。