2023.07.14
危険運転の種類や危険運転致死傷罪とは?事故の実態や罰則を解説
2023.07.14
危険運転の種類や危険運転致死傷罪とは?事故の実態や罰則を解説
危険運転は、悪質なあおり運転や飲酒運転など、人を大きな危険にさらす運転のことです。危険運転は重大事故につながるおそれがあり、絶対にやってはいけない行為です。
もし、危険運転によって人を死傷させたときは、単なる過失とは扱いが異なり、重い処罰を受けることになります。
この記事では、危険運転の種類や危険運転致死傷罪が設けられた背景のほか、危険運転による事故発生の実態と、あおり運転の被害を受けた場合の対応策について解説します。
目次
危険運転とは死傷事故を招くおそれのある運転のこと
危険運転とは、死傷事故を招く可能性が高く、もし人を死傷させた場合は危険運転致死傷罪に問われる運転を指しています。危険運転となる行為は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)」によって、以下の8種類に類型化されています。
<危険運転の8種類の類型>
- (1)アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
- (2)その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
- (3)その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
- (4)人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
- (5)車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
- (6)高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう)をさせる行為
- (7)赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
- (8)通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
この法律にもとづくと、以下のような運転は危険運転にあたる可能性があるので、注意が必要です。
<危険運転にあたる運転の例>
- ・アルコールや薬物の影響で、正常な判断ができない状況での運転
- ・信号を無視し、速度も落とさないまま交差点に進入する運転
- ・制御できないほど高い速度を出す車の運転
- ・車を運転する上で初歩的な技能を習得していない
- ・人や車の通行を妨害する目的での故意な割り込みや接近(悪質なあおり)をする運転
- ・スクールゾーンなど通行禁止道路を高い速度で走行する運転
危険運転致死傷罪とは?
危険運転致死傷罪とは、危険運転の結果として、人を死傷させたときに適用される罪です。
危険運転致死傷罪が設定されるまで、車を運転して過失により人を死傷させたケースには、業務上過失致死傷罪(刑法)が適用されてきました。
しかし、過失(不注意による失敗)とはいえないような悪質かつ危険な運転に対し、厳罰化を求める声が高まりました。そして2001年の刑法一部改正で、悪質で危険な運転については、故意犯として重く処罰する危険運転致死傷罪を新設。そして、悪質かつ危険な運転に見合った処罰ができるように、危険運転致死傷罪に関わる規定を、刑法から移すことになったのです。
現在、危険運転致死傷罪は、2014年に施行した自動車運転死傷行為処罰法の第2条と第3条に規定されています。
危険運転致死傷罪の発生の実態
警察庁が公表している資料によると、2021年の危険運転致死傷罪の適用件数は以下のとおりです。内容別では、アルコールの影響と殊更信号無視(対面信号が赤色または赤色に相当するものであることを認識した上であえて信号無視すること)が多いことがわかります。
■2021年の危険運転致死傷罪の適用件数
自動車運転死傷処罰法 | 致傷 | 致死 | 小計 | |
---|---|---|---|---|
第2条 | アルコールの影響 | 129(3) | 8 | 137(3) |
薬物の影響 | 17(3) | 2 | 19(3) | |
高速度 | 29(4) | 10 | 39(4) | |
無技能 | 3 | 0 | 3 | |
妨害目的 | 41(2) | 2 | 43(2) | |
殊更信号無視 | 168(29) | 9 | 177(29) | |
通行禁止道路進行 | 11 | 1 | 12 | |
合計 | 398(41) | 32 | 430(41) | |
第3条 | アルコールの影響 | 159(5) | 8(1) | 167(6) |
薬物の影響 | 24(3) | 0 | 24(3) | |
一定の病気の影響 | 71(1) | 5 | 76(1) | |
合計 | 254(9) | 13(1) | 267(10) | |
総計 | 652(50) | 45(1) | 697(51) |
- ※件数はいずれも送致数のほか、送致後に罪名変更となったものを含む
- ※()は自動車運転死傷行為処罰法第6条の無免許加重の件数で内数
- ※警察庁「令和3年 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」を使用しています。
また、2017~2021年の適用件数合計の推移は以下のとおりです。
■2017~2021年の危険運転致死傷罪の適用件数の推移
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|---|---|
適用件数 | 670 | 613 | 666 | 730 | 697 |
危険運転に対する罰則
危険運転を問われた際には、どのような罰則を受けるのでしょうか。自動車運転死傷行為処罰法における罰則は以下のとおりです。いずれも、無免許の場合は罪が重くなります。
■危険運転致傷罪ならびに準危険運転致死傷罪の罰則
内容 | 罰則 | |
---|---|---|
自動車運転死傷行為処罰法2条にあたる行為 (危険運転致死傷罪) | 飲酒等影響、高速度走行など、危険運転の8種類の類型にあたる行為 | 死亡:1年以上20年以下の懲役 負傷:15年以下の懲役 (無免許の場合は6ヵ月以上20年以下の有期懲役) |
自動車運転死傷行為処罰法3条にあたる行為 (準危険運転致死傷罪) | ・アルコールや薬物の影響により正常な運転ができないおそれがある状態での走行 ・特定の病気の影響により正常な運転ができないおそれがある状態での走行 | 死亡:15年以下の懲役 (無免許の場合は6ヵ月以上20年以下の有期懲役) 負傷:12年以下の懲役 (無免許の場合は15年以下の懲役) |
あおり運転に対する罰則
あおり運転とは、前方を走行する車との距離を詰めたり、周囲の車を威嚇、挑発したりする危険運転のひとつです。
前述の危険運転の8類型のうち、(5)と(6)は、2017年よりあおり運転による死亡事故が相次いだことを受けて、2020年6月30日から施行された改正道路交通法に妨害運転(あおり運転)に対する罰則が創設されました。同時に、特に悪質なあおり運転にはより厳しい罰則を科すために、自動車運転死傷行為処罰法も2020年7月2日に施行。危険運転致死傷罪にあたる行為に、悪質なあおり運転が加えられたのです。
道路交通法において定められたあおり運転の罰則は、「交通の危険のおそれがある場合」と「実際に交通の危険を生じさせた場合」で分けられています。
■道路交通法の定めるあおり運転の罰則
内容 | 罰則 | |
---|---|---|
交通の危険のおそれがある場合 | ほかの車両等の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等の違反行為をした場合 | 違反点数25点加算(免許取消、欠格期間2年) 3年以下の懲役または50万円以下の罰金(前歴・累積点数がある場合、欠格期間最大5年) |
実際に交通の危険を生じさせた場合 | 上記の罪を犯し、高速道路などでほかの自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合 | 違反点数35点加算(免許取消、欠格期間3年) 5年以下の懲役または100万円以下の罰金(前歴・累積点数がある場合、欠格期間最大10年) |
あおり運転について詳しくは下記の記事をご覧ください。
あおり運転の定義とは?妨害運転の種類と罰則を紹介
あおり運転を通報する流れとは?あおり運転の概要も解説
あおり運転の被害を受けた時の対策
あおり運転を受けた時は、駐車場やサービスエリア、パーキングエリアなどに避難し、相手の車からなるべく離れることが大切です。
相手側のドライバーなどから強く迫られても、決して車外に出たり、ドアロックを外したりしてはいけません。身の安全を優先しつつ、ためらわずに110番通報しましょう。その際には、あおり運転を受けた状況や相手の車のナンバー、車種、車の色などをわかる範囲で警察に伝えます。同乗者のスマートフォンのカメラなどで映像を記録するのも有効です。
自分や相手の運転が自動的に記録されるドライブレコーダーは、自身があおり運転を受けた証明として活用できるだけでなく、あおり運転の抑止効果としても期待できます。
なお、あおり運転を見かけたなど、あおり運転に関する情報がある場合は、近くの警察署や警察本部の相談窓口「#9110」に通報してください。
危険運転対策にはドライブレコーダー付き自動車保険がおすすめ
危険運転は厳罰化が進んでいますが、直近5年間で年約700件はコンスタントに発生しており、危険運転が大きく減るような見通しは立っていません。そんな中で身を守るには、相手の車から離れるといった適切な対処法を知る必要があります。同時に、自分自身も危険運転を起こさないよう、安全運転をサポートするドライブレコーダー活用がおすすめです。
三井住友海上では、眠気や脇見、車線逸脱のほか、高速道路の逆走などを検知する機能を備えたドライブレコーダー付きの自動車保険プランをご用意しています。この機会にぜひ、ドライブレコーダー付きの自動車保険加入をご検討ください。