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片づけコンサルタントが選ぶ
被災時に心の安らぎをもたらす防災バッグ

はじめに

地震や台風がくるたびに、焦って水や食料、オムツなどを買いだめしていませんか。

防災グッズ置き場もなく、お部屋のあちこちに床置きして、物置状態。実はこれ、数年前の我が家の状態です。

「もしも、地震が起きてケガをしたり、ライフラインが止まったりしたらどうしよう」という災害への大きな不安は、家を片づかない状態にします。

自宅から避難しないとならない場合に備えて、「家族分の防災バッグを備えておきたいと思っても、何をどれだけ準備したらいいのかわからない、置く場所もない。」我が家も同じ悩みを抱えていましたが、こんまり®︎メソッドを実践したことで、ときめくインテリアを楽しみながら、しっかり家族分の防災バッグも備えて安心して暮らせるようになりました。

今回は、家族分の防災バッグの準備と収納方法をご紹介します。

安齋家の防災バッグたち

1. 必要とわかっていても、準備できていない防災バッグ

1-1. あなたのお宅は防災バッグを準備できていますか

ある防災意識調査によると、約6割の方が防災セットを用意していないそうです。
(情報元:株式会社エコンテ 防災についての意識調査

私は片づけレッスンでたくさんのお宅に行きますが、防災バッグがないお宅もあれば、逆に防災グッズを買い込みすぎてモノが溢れ、何がどこにあるのか把握できていないお宅もありました。

日本はこれまで、地震や台風、洪水などさまざまな災害に見舞われてきました。また、いつ災害が起きてもおかしくありません。防災バッグは大切とわかっていても、なぜ、私たちは災害に備えて事前にしっかりとした防災バッグを準備できていないのでしょうか。

1-2. 防災バッグを準備できていない理由

私が片づけレッスンを通してさまざまな方のお話を伺って感じた、防災バッグを準備できていない代表的な理由は4つあります。

  • 1. 防災バッグに何をどれくらい入れたらいいのかわからない。
  • 2. 防災士が推薦した!などの防災専用バッグは高額で、いざ家族全員分揃えるとなると、経済的に厳しい。
  • 3. 家族全員分の防災バッグを置きたくても、部屋が狭くスペースがなく、どこに置いたらいいのかわからない。
  • 4. 防災バッグの中身の見直しがめんどう。

以上4つの理由から、家族にあった防災バッグをしっかりと準備できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。もし、防災バッグを準備せず、子どもたちだけが家にいる時に、地震や災害が起きたらどうなるでしょうか。

1-3. 不安を安心に変えてくれる “お守り” ―防災バッグ

「いざという時は、学校など避難所に行けばいいでしょ。」という方もいらっしゃいますが、避難所に行くのは最終手段です。
私は、子どもの小学校でPTAの役員をしていた時に、学校の備蓄倉庫を見学しましたが、避難所には地域住民全員分の備蓄品はありませんでした。

そうなると高齢者の方や、ケガをした方などが優先されるでしょう。

災害発生時、電気やガス、水道などライフラインが止まってしまった場合、自宅にとどまるとしても、どこかへ避難するとしても、何が必要かを想定して、今のご家族構成やお子さまの年齢にあった防災バッグを事前に備えておくことが大切になります。

何も準備されていなければ、命を守る手段もなく、「こんなことになるなら準備しておけばよかった」と後悔と不安な時間を過ごすことになります。

非常用ブランケットがあれば寒さをしのげ、笛があることで助けを呼べる、ケガをしても手ぬぐいや絆創膏があれば応急処置ができます。

家族に合った防災バッグは災害時に家族の命を守り、私たちの不安を安心に変えてくれる大切な“お守り”です。

小学生の息子でも防災バッグを背負えるか試している様子

2. 「片づけ×防災」日々の暮らしを楽しみながら、防災に備える

2-1. 片づかない原因は、災害への大きな不安が関係

災害への大きな不安は、家が片づかない原因とも関係しています。
2011年3月11日、東日本大震災が起きた日。

今でもあの日のことは忘れません。長女はまだ2歳で保育園にいました。
私は当時、会社員をしており、家族は大丈夫だろうかと不安な気持ちをかかえたまま東京汐留の職場から練馬にある自宅まで約15kmの道のりを歩いて帰りました。自宅から徒歩5分のところにコンビニやスーパーがあるから大丈夫、ストックは場所をとるからと、防災バッグも用意していなかったため「水やオムツが足りないどうしよう!」とパニック状態。

今、振り返ってみれば、災害への不安から、とりあえず水を買いに走ったり、カップラーメンを買いだめしたり、周りの情報に流されて、自分の家族にとって本当に役立つ安心できる防災グッズなのかもよく考えないまま、数年間、やみくもにモノを増やした結果、危険な物置部屋にしてしまいました。

その後、2015年に、“こんまり”こと近藤麻理恵さんが考案したこんまり®︎メソッド(自分がときめくかどうかの基準でモノを残し、手放すモノにはありがとうと感謝して手放す片づけ)を実践したことで、防災グッズも片づけ、その危険な物置部屋は息子が安心して遊んだり、勉強したり、また夫はギターを楽しめる部屋に変わりました。

2-2. 安心から生まれる、暮らしを楽しむ心のゆとり

片づけを通して、私が物置部屋で見つけたモノは「いつかやろう」と後回しにしていた、自分のやりたいことや、大切な生き方でした。「防災バッグを揃えて安心できる暮らしがしたい」も私の大切な生き方の1つでした。

私は、災害に対する不安と向き合い、やみくもにモノを増やすことをやめ、「どうしたら安心して暮らせるのだろうか」を想像しながら片づけたことで、安心できる防災バッグを準備することができました。防災バッグがあることで、不安は安心に変わり、ときめく暮らしを楽しむ心のゆとりもできました。

片づけたことで、防災バッグを準備できただけでなく、好きなお花を飾る心のゆとりもできました。

2-3. 防災バッグもときめきが大切

我が家は、わざわざ高価な防災専用バッグを購入していません。「災害時にどんなモノがあると快適で安心安全に過ごせるかな?」について、家族と一緒に想像し、話しあいながら、ふだん使っているときめくモノを利用し、無理なく防災バッグを準備しました。ときめくモノは、私たちの心を元気にしてくれます。使えるか使えないか、役に立つか立たないかも重要ですが、地震や災害でライフラインが止まり危機的で不安な状況だからこそ、自分や家族が“ときめく”防災バッグを準備しておくと、「助かった!準備しておいてよかった!」と安心でき心も元気づけられます。

3. ときめくインテリアも楽しみながら防災バッグを準備する4つのポイント

3-1. 今、持っているモノを片づける

「家族分の防災バッグを買いたいけれど、高いし、収納する場所もない」という方もいらっしゃいますよね。市販で売られている防災専用バッグを買う前に、ぜひ、してほしいことがあります。

それは、今、持っているモノを片づける、です。

家中のモノを、洋服→本→書類→小物→思い出の順で片づけます。片づけることで、防災に使えるときめくバッグが見つかることがあります。普段使いのバッグとしては、お役目が終わってしまったけれど、防災バッグとしては使いたいと思えるバッグでOK。例えば、劣化していなければ、昔、山登りで使っていたアウトドア用リュックもオススメです。

また、家中のモノを片づけることでどんどん家の中にスペースができ、玄関や、押し入れなど、安心して取り出せるところに家族分の防災バッグの収納場所をつくることができます。
防災バッグを買わなきゃ!置く場所がない!と思っている方は、ぜひ、片づけからはじめてみてください。

3-2. 家族のための防災バッグいろいろ

「家族分の防災バッグをどうやって準備したらいいの?」と迷う方もいらっしゃいますよね。
まずは、防災資料を参考にして「災害時に我が家にはこれがあったら家族も快適に安心安全に過ごせそうだな」というモノをリストアップ。足りないモノは補充します。家族4人で防災バッグ1つでは足りません。

我が家は家族4人。夫、私、中学生長女、小学生息子、ワンコ1匹と暮らしており、準備したのがこちらの防災バッグたち。

リュックとベストは逃げる時用、アンティークのスーツケースは予備の防災グッズを収納しています。

防災専用バッグを新たに購入せず、片づけをしながら家にあったバッグを防災用として活用しています。防災バッグといっても、防災専用バッグにとらわれず、ぜひ、自宅避難の時、家族が逃げる時、どんなバッグをどれだけ準備すれば安心して快適に過ごせるのかを家族で話し合い、防災バッグを準備してみましょう。

家族で防災会議の様子。家族と話し合うことで、一人ひとりの防災意識を高めています。

3-3. インテリアを楽しめる防災バッグ収納

家族4人分の防災バッグを収納するとなると収納場所に悩みますよね。
防災バッグの収納ポイントは2つ、"分散収納"と、"取りだしやすい場所に隠す"です。

分散収納とは、玄関に1つ、寝室に1つ、子ども部屋に1つという具合に、収納場所を分散させることです。こうすることで、例えば部屋に閉じ込められた場合でも安心です。そして、防災バッグを各部屋に収納する際は、クローゼットや、押し入れなど取り出しやすい場所に隠して収納するのがオススメです。

たまに、廊下や玄関などに防災バッグを床置きしているお宅がありますが、足に引っかかって転んだりするなどケガをしてかえって危険です。

もし、お部屋の見える場所に収納する際は、お気に入りのデザインのバッグにすると、インテリアを邪魔しませんよ。我が家の場合は、お気に入りの古いアンティークのスーツケースを活用して、ベストや、予備の簡易トイレや水タンクなども収納しています。

寝室にはインテリアも楽しみながら、防災バッグなどを収納しています。左:予備の防災グッズが入ったアンティークのスーツケース、右:押し入れには防災バッグ2つ、ベッド下:ヘルメットや靴、軍手を収納

3-4. 防災バッグと一緒に準備したいペット用バッグ

ペットを飼っている方は、防災バッグと一緒にペット用バッグも準備してあると安心です。

ペット用バッグは拡張して、ちょっとしたゲージ代わりにもなるタイプのモノもあります。日常でお出かけする時や、家で使い慣れておくことで、わんちゃん猫ちゃんなども快適に過ごせますし、災害時にも安心して大切なペットを守ることができます。

安齋家の愛犬はこのバッグがお気に入りです。

編集後記

我が家の防災バッグと片づけについて、家族と振り返る貴重な機会をいただきました。改めて日々の暮らしを快適に楽しみながら、しっかりと防災に備えて安心して過ごせる方が増えるよう、これからも心ときめく片づけをサポートしていきたいです。

安齋 しほこ

安齋 しほこ
こんまり®︎流片づけコンサルタント

これまでの個人宅向けレッスン実績は1700時間以上。東京都在住。2015年 こんまり®︎メソッドを学び実践。子育ても家事も楽になり自分の生き方を見つけ会社員から一転。家事代行業を経て、2016年から本格的に片づけコンサルタントとして活動スタート。現在は、小学校での片づけ出前授業や、親子向け片づけレッスンを通じて家族みんなで片づけることで、子育てや家事が楽になる仕組みをつくり、“今”をもっと楽しく自分らしい暮らしを叶えるための片づけをサポートしている。

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