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家族も巻き込もう!
片づけと防災対策で叶える「ときめく」暮らし

はじめに

12年前の2011年の東日本大震災発生当時、私は新婚で妊娠中でした。勤務先で帰宅難民となり、見兼ねた上司が自宅に避難させてくれました。

上司の家はモノが少なくホテルのようにスッキリとした空間で、家具が倒れる等の被害もなく、更に備蓄品もありました。

心身ともに疲れ切っていた私が、片づいている空間は安心安全に繋がるのだと身をもって体感した出来事でした。

時は経ち現在は11歳、6歳、1歳の3児の母となるなど、この12年の月日の中でライフステージは大きく変化しました。

出産前からモノが多かった上に子どもが増えるにつれて、更にモノが増え続け、荒れ果てた状態の我が家でしたが、2020年にこんまり®メソッドで片づけをした結果、いつでも人を呼べるようになり、日々ときめく暮らしを送れるようになりました。

2022年11月には埼玉県から山梨県へと家族で移住を決断し、電車生活から車生活、買い物の利便性などライフスタイルも大きく変化したことで、防災に対する対策は今現在も見直しているところです。

今回は、家族間でも防災に対する意識がそれぞれ違った我が家でどのように家族と足並みを揃えていったのか、片づけたあと、家族を巻き込みながら一緒に楽しく実践している防災対策についてご紹介します。

片づけ前の荒れ果てていた我が家

1. 災害が発生!?あなたの家の「防災対策」はしっかりと家族単位で考えられている?

1-1. 実際に「防災対策」をしている人の割合は意外と低い?!

日本は世界でも地震や台風・豪雨などの自然災害が多い国です。皆さんも今までの人生の中で大なり小なり何かしらの自然災害を体験したことがあるのではないでしょうか。その度に「防災対策」が頭によぎるものの、時間が経つにつれ意識が薄まってしまう。まさしく過去の私がそうでした。

防災に関する意識調査によると「防災対策」をしている人の割合は51.6%と約半数。未だ48.4%は対策をしていないことになります。意外にも防災対策をしている人の割合が低いのが実態です。
(情報元:セコム株式会社「防災に関する意識調査」

私自身も東日本大震災にて被災し、実際に防災対策の必要性を感じたものの、時間の経過とともに考えることがなくなり、その必要性も感じなくなっていきました。対して、夫は元々保険会社勤めだったこともあり防災意識は高く、一般的に必要とされている防災グッズは一式揃えてくれていました。

震災直後、液状化現象が起きた自宅付近

今となってはありがたい話ですが、当時の私は防災グッズを次々と買い足す夫に、そんなに必要なのかがわからず、イライラしてはよく喧嘩になっていました。そのように家族間で防災に対する意識や価値観の違いがあり、お困りの方も多いのではないでしょうか。

先ほどの意識調査でも、防災対策をしない理由の5割が「具体的にどのような対策をすればよいかわからないから」である様に、私自身もどこか他人事のように感じていました。

1-2. 家族単位で考える、好ましい「防災対策」とは

それでは、実際にどのような防災対策が必要なのでしょうか?

災害時の避難場所には「避難所」と「それ以外(自宅・車など)」があるため、避難する場所に応じた防災グッズを日頃から準備しておくことが必要です。

例えば、避難所には多数の防災グッズを持って行くことはできません。一方、自宅などでは停電や断水など、ライフラインが止まることも想定する必要があるため、より多くの防災グッズが必要となります。家族で暮らしている方にとっては、ご自身の物だけではなく、お子さんの年齢などに合わせた準備も必要となります。そのことも踏まえて家族全員分の「持ち出し用」と「自宅避難用」といった2つのタイプの防災グッズを用意しておくことが必要です。

例えば、我が家では避難場所を「避難所」と想定した防災バッグには、避難所で提供されるであろう水や食事等は最低限に抑え、持ち運べる重さであることを意識して準備しました。身体の快適さを保つための「水のいらないシャンプー」や体を冷やさない「エマージェンシーブランケット」(アルミ保温シート)なども入れてあります。

また、「自宅避難用」を意識した防災グッズとしては、ライフラインとなるような保存水、防災食、非常用トイレなどに加え、電力確保のためのソーラーパネルやバッテリーなどを準備しています。山梨県に移住してからは車生活となったため、それらに加えレジャーシートや暖を取るためのホッカイロ等も車に積んであります。

家族ごとに必要な基本の防災グッズを把握し、災害による被害を最小限に抑え、命を守れるよう対策を立てておくことが大切です。
ご参考:非常用持ち出し袋(首相官邸HPより)

1-3. 「防災対策」を家族単位で考えるためには

冒頭にも述べたように我が家の場合は、夫は元々リスクを考え防災対策を念入りに準備したいタイプでした。対して、防災意識の低かった私は何をどのくらい用意したらよいのか必要な量もわかっておらず、災害のことを考えるだけでネガティブな気持ちになってしまうため、なるべく考えないようにしていたのです。防災対策をしない方の理由に、同じような気持ちの方もいるのではないでしょうか。

そんな私でしたが、いよいよ子どもが増え、時折来る地震にヒヤッとし、片づけレッスンでお客さまが真剣に防災グッズの片づけをされているのを目の当たりにしたことで少しずつ自分事として捉えられるようになっていきました。

そうして、いざ我が家の防災対策に向き合ってみると、夫が用意してくれているモノだけでは実際には家族を守れないと危機感を覚えました。それと同時に、今までたった一人で家族のために対策を練り、せっせと準備をしてくれていた事に感謝の気持ちが溢れました。

そこから先は、片づけコンサルタントとして身につけた、相手の価値観を受け入れて寄り添うことを意識し、夫と話し合いを重ねました。我が家の場合は、年齢も様々な3人の子ども達がいます。

子ども達それぞれに必要なものの用意を私が担当する事にしました。年に4回季節ごとに実家へ帰省するため、その度に旅行用と兼用している防災リュックの中身の着替えや食べ物の賞味期限等を点検しています。

2. 「片づけ×防災」で家族を巻き込む大切さを思い知ったエピソード

2-1. 実体験の失敗で痛感した「日頃から備える」大切さ

2011年3月11日、東日本大震災が起きた日。
東京で仕事中に被災した私は、長男を妊娠中でした。

全ての交通機関が止まり帰宅難民となり、大きなお腹で不安を抱えながら夜を迎え、フロアに横になっていた所、上司が自宅に招いてくれました。突然の宿泊にも関わらず快く受け入れてくださった上、部屋はホテルのようにスッキリとしていました。被災の影響もほとんどなく備蓄もあったようでとても落ち着いていたのが印象的でした。突然の大地震に心身ともに疲れきっていた私ですが、癒され安心して休ませていただき翌日無事に帰宅ができました。

こんな風に片づいている空間だと、物理的にも心理的にも安心安全に繋がるのだと実感した出来事でした。

片づけ前のモノが溢れていた我が家のキッチン

それに対して、帰宅後の我が家ではモノが多かったので見事に散乱。その上、特に備蓄はしておらず、急いでスーパーに行ってもどこも売り切れ状態。日頃から備える必要性を痛感した出来事でした。その反動もあり、今度はモノが足りないという不安感から、必要以上に買い溜めをして食材を無駄にしてしまったり、収納しきれないほどのモノで溢れるように。やみくもにモノを増やしても漠然とした不安が拭えなかったのです。

2-2. 片づいた部屋が与えてくれた「防災」の安心感

そんな私がこんまり®メソッドと出会ったのは、東日本大震災の翌年の2012年のこと。

こんまりこと近藤麻理恵氏の著書「人生がときめく片づけの魔法」を読み、衝撃を受けました。

「いつでも気軽に人を呼べる家にしたい!」という理想を掲げ、本の通りにこんまり®メソッドの手順で片づけ始めたものの、あれもこれもないと困るという不安感からなかなか片づきませんでした。モノを多く持つことは安心に繋がるどころか、反対にますます不安感が強まっていたことに気がつきました。

子どもが増えるにつれてモノも増え、どんどん家は荒れ果てていきました。
しかし、震災から9年後の2020年。子どもの友人を家に呼ぶことを目標に、こんまり®流片づけに再チャレンジ。

片づけた後の我が家のキッチン

こんまり®メソッドによると、私たちがモノを手放せない理由は「過去への執着」または「未来への不安」の2つ。私の場合は、いつか何かあった時に困るのではないか?という「未来への不安」からくるモノが多かった事に気が付きました。

ついに自身の片づけを終え、ようやく被災時に私を泊めてくれた上司と同じように、いつでも人を呼べる家に変わりました。
空間に余裕ができた事でココロにも余裕が生まれ、漠然とした不安から解放され安心して暮らせるようになったのです。

2-3. 自分から率先して始めた片づけ×防災が家族へ伝染!?

片づけることで防災にも繋がるので、家族のためにもすぐに片づけと防災対策を始めたいところですが、こんまり®メソッドで大切なことはまずは「自分のモノから片づける」こと。

自分のモノは自分のときめきで判断がしやすいためです。それと同じく、防災対策も家族を巻き込む前に、まずは自分のモノから必要なモノを揃えていきました。自分自身の安全なくして、大切な家族のことまで守れないからです。

自分の片づけを終えて防災対策が整うと、今度は家族にとって必要な防災対策をする時間とココロの余裕が生まれました。それとともに片づけに興味のなかった家族まで片づけを始めました。

まず一番初めに影響を受けたのは夫です。「いつか使えるから念のため取っておこう」が口癖だった夫が、いつの間にか私に内緒で「人生がときめく片づけの魔法(近藤麻理恵著)」を読み、黙って片づけを始めた様子は今でも忘れられません。

次々に片づけを進めていった結果、難関である家族の共有物を残すかどうかの話し合いができるようになりました。それと同じくして影響を受けたのは当時3歳だった長女です。ときめくという本来私たちが皆持っている純粋な感覚がまだ鈍っていない年頃のため、とっても楽しそうにときめくモノを残す片づけをしていました。

長男は、自ら積極的に動きませんでしたが、サポートしながら一緒に衣類を片づけてみた結果、彼にとってのときめきは着心地の良さが最重要であるということが明確になりました。これまで、長男は服へのこだわりはないと思い込み、親好みでデザイン重視で買っていましたが、それからは勝手に買うのではなく、本人と相談しながら買うようになり本人も満足そうです。

こんまり®メソッドの片づけは、まずはご自身のモノを集中して片づけることで家の中の空気感が変わっていき、他の家族にも不思議と伝染するのです。

当時住んでいた我が家は59平米2LDKのマンションで5人で暮らすには決して広くはありませんでしたが、片づけが伝染したことで、家族それぞれのモノが適正量になり、家族と一緒に共有のモノも片づけられたことで、家の中が全体的にスッキリとして安全面もアップしました。また、家族団らんの時間も増えました。

  • こんまり®流の畳み方にチャレンジ!

  • 広々としたリビングで寛ぐ様子

  • 片づけが終えた後の家族の団らん時間

2-4. 家族で防災を意識したことが役に立った後日談

2023年1月25日。日本中に記録的な最強寒波が襲い、私たち家族が暮らしている山梨県にも大雪が降りました。
極寒の中、夫が子どもたちを車で保育園や学校に送った後、帰りの坂道で凍結のため登れなくなり停車していたところ、カーブを曲がりきれず横滑りしてきた対向車に突っ込まれるもらい事故に遭ってしまいました。

幸い命に別状はなく鞭打ちで済んだのですが、車は走れないほど壊れ、警察の現場検証やレッカー車の到着を氷点下の中で3時間も待つ事になりました。

ここで、非常時のために車に積んであった、保存水、ホッカイロ、非常用トイレセットなどが大いに役立つ事になったのです。大量のホッカイロに助けられ寒さを凌ぐことができた上、警察の方にも配る余裕まであったようです。
家族で防災対策をしておいた事で、思いがけず役に立った出来事でした。

事故当時、車に積んでいた防災グッズ

また、事故当時迅速に対応いただいた三井住友海上の自動車保険のご担当者さまには、その後も親身になってサポートをいただき、物理的な防災対策だけではなく、心理的・金銭的なサポートの重要性をひしひしと感じました。

3. こんまり®︎流、家族を巻き込んで叶える「防災×ときめく暮らし」の4ステップ!

3-1. 自分のライフスタイルに合わせた防災対策をしよう

皆さんのライフスタイルはどのようなものでしょうか?ライフスタイルとは、簡単にいうと生活様式、人生観や価値観も含め生き方そのものを指します。

私たち家族は結婚して13年。制限の多いコロナ渦もキッカケとなり、子ども達も含めて今後どのような暮らしをしていきたいかを家族みんなで真剣に話し合いました。その結果「大自然の中でのびのびと暮らしたい」という想いが一致し、埼玉県さいたま市から、自然豊かな山梨県北杜市へと移住を決めました。

移住により大きく変化したライフスタイルは、電車生活から車生活になったことです。車の運転による事故も、自然災害と同様に、どんなに気をつけていても起こりうるため、やはり対策が必要となります。

また、スーパーが近くになく車で15分ほどかかるため食材をまとめ買いすることが増えました。大雪等で運転が不可能な事態にも備えて、冷蔵庫を大きいものに換えたり、備蓄品が置けるスペースを以前よりも多めに確保したりしました。

引越しや出産などライフスタイルが大きく変わる時は、これまでの防災対策を見直す絶好のチャンスです。

3-2. 家族にとって何が必要か、ときめく基準を決めよう

我が家は移住してきて、すぐ近くの山へ念願のキャンプに行きました。移住前からキャンプができるような状況だったかというと、とてもその準備をする余裕はありませんでした。

もちろん車を持たない生活だったことや、収納に余裕のある広い家ではなかったということも理由ではあるものの、片づいていない家に更にキャンプグッズを迎え入れる気持ちにはとてもなれなかったからです。

ですが、片づけをしながら少しずつ余裕ができ始め、理想を描いていたらやはりキャンプやBBQをしたいという本音が見えてきました。

そこで、まずは元々持っている簡易式の小さなテントをベランダに広げ、レジャーシートを敷き、家の中で使用しているちゃぶ台を運びピクニック気分を楽しむことから始めました。

正直防災のために始めたわけではないキャンプでしたが、時々唐突にくる地震を体験するたびに、我が家で少しずつ始めたキャンプの準備が防災にも繋がりいざという時に役に立つのでは?と感じるようになりました。そんなことから「防災時にも使えるかな?」という視点で少しずつ寝袋やテントなどのキャンプグッズも買い揃えていきました。真っ暗な中ベランダでランプを灯しながら食事をすることも、防災の練習にもなりました。

我が家のように、初めから何もかも揃えなくても防災に繋がる楽しいイベントがきっとあると思います。家の中で真っ暗にしてテント泊をしたり、車中泊をしてみたり。何が必要なのかは、いざやってみるとときめく基準が決まってきます。

  • 最初は小さな日除けテントからスタート

  • ときめくテントを購入、テーブルは屋内のものを利用

  • ベランダで暗闇の中食べる練習

3-3. 我が家のときめくオススメ防災グッズ

移住先の山梨県北杜市は名水の地で有名なので、近所の湧き水を定期的にポリタンクに汲みにいき日常的に飲む生活をしています。普段は夫が汲みにいってくれていますが、子ども達も手伝ってくれました。

自然のめぐみをありがたくいただいています。これは移住したからこそできることではありますが、このようなポリタンクがあると災害時の水の確保のほかキャンプでも使えますし、特に折りたたみ式のポリタンクも収納しやすく便利です。

我が家では、汲んできた天然水をウォーターサーバーに入れて美味しく飲んでいます。最近購入した炭酸水メーカーも防災時でも活躍してくれそうです。

また、川や海の水を濾過して飲める携帯型浄水器も持っているといざというときに安心です。水は私たちの体に欠かせない大切なモノなので、ぜひ水対策は家族分足りているか等確認してみてください。

3-4. 防災対策を日常の延長線上に!ハードルを下げよう

「あれもこれも用意しないと!」と気負いしすぎると疲れてしまいますよね。災害は非日常でありいつ何が起こるかわかりませんが、防災対策の目的は安心安全な生活を送ることです。日常の中でほんの少し意識するだけでできる防災対策で、我が家で実践していることをご紹介します。

我が家では、避難用の靴として、ワンサイズ大きい上履きを準備し寝室に置いています。
災害時だけではなく、いずれ日常で使うことにもなるものなので、無駄にならずにすみますし、必要な時に慌てて買う手間も省けて一石二鳥です。

また上着やリュック、スーツケース等は防災対策専用ではなく、お出かけや旅行の時には一時的に中身を出して兼用で使用しています。そのため収納スペースも余分に使いません。他には車にお水を常備しておく、就寝時にメガネや携帯電話、ペンライトを寝室に置いておく、抱っこ紐の定位置を決めておくなど。

我が家では子どもに常温のミルクの味や温度に慣れさせています。いざという時に備えて、このように時々飲ませておくことで安心感が高まりました。
防災に対するハードルを下げて、日常の延長線上で少しずつ無理なくできそうなことから家族を巻き込みながら対策をしていきましょう。

こんまり®流片づけと防災に関する連載をお読みいただきありがとうございました。何かヒントになることがありましたら幸いです。

災害は起きないに越したことはありませんが、片づけた先の理想の暮らしを安心して思い切り楽しむためにも、ぜひできることから片づけと防災対策を始めてみてください。

防災対策として時々飲ませている常温のミルク

編集後記

被災した当時のことや片づけ始めたキッカケを思い出す機会をいただき感謝しています。改めて今後も家族も巻き込んで防災対策をしつつ、片づけのプロとして、安心安全なときめく暮らしを楽しんでいける方々が増えるよう心を込めて活動していきたいと感じました。

山口 綾子

山口 綾子
こんまり®︎流片づけシニアコンサルタント
こんまり®︎流片づけインストラクター

山梨県北杜市在住(埼玉県より移住)
理想とする自然のある暮らしを求め、賃貸の一軒家にて夫と3人の子ども(11才•6才•1才)と5人暮らし
片づけレッスン実績700時間以上実施。
2010年に結婚・出産を経て、散らかった家の中で産後うつや離婚危機を経験。
片づけ祭りを終え、家庭円満になったことから2020年よりこんまり®流片づけコンサルタントとして“イライラママからニコニコママへ“をモットーに活動開始。主にInstagramにて片づけのヒントや笑顔あふれる子育てライフを発信中。

ホームページ:https://ayakonmari.com/