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こんまり®︎流 防災のための片づけプラン!簡単5ステップで、「もしも」に備える

はじめに

初めまして。片づけコンサルタント磯部恵子です。

まずはじめに、こんまり®流片づけメソッドをご存知でしょうか。
「一度片づけたら、絶対にもとに戻らない」近藤麻理恵(愛称:こんまり®)が独自に編み出した画期的な片づけ法です。片づけを通して自分の内面をみつめることで、「どういうものに囲まれて生きたいのか」「自分にとって本当に必要なものは何か」「どんな過去に執着をしてしまって、またどんな未来への不安で物を手放せないのか」片づけを通して自分の価値観を発見し、自分に必要な物を選ぶ決断力を養うことで、キャリアや人間関係など、人生における全ての選択に大きな変革をもたらします。

そのお片づけが防災につながるとの考えから、災害に強く安心・安全な社会づくりに努めている三井住友海上と「防災×片づけ」をテーマに記事を連載することになりました。

私も個人的な震災にまつわるエピソードやこんまり®︎流片づけコンサルティングの経験のなかで、「防災×片づけ」はとても親和性があると思っています。
今回はそんな私のライフストーリーと共に、「防災における片づけの重要性」をお伝えいたします。

私が片づけを始めるきっかけになったのは、1995年の阪神・淡路大震災でした。

報道で見る震災の様子は衝撃的で、もしこれが自分の住む東京で起こったらと思うと、いてもたってもいられず、当時30代だった私と夫は、地域の消防署が募集していた「災害ボランティア」に志願したり、地域防災や、救急救命術を学んだりする一方、自宅の防災対策にも乗り出しました。

ところが、そこでいきなり壁にぶち当たってしまったのです。

※写真はイメージです

「防災対策は片づけないと始まらない」と気づく

自宅の防災対策は、定番の防災リュックや、非常用備蓄品を準備することから始めました。

ところが、何をどれだけ準備すれば良いか調べてびっくり。
3日分あればよいと思っていた備蓄品は、本を読めば、1週間分が望ましいと書いてあったり、さらに当時参加した防災講演会では、「首都直下地震の場合は、ライフラインや道路の復旧状況を考えると2週間分以上必要だ」と聞いたりと、想定と違ったので驚きの連続でした。

水だけでも、大人1人で最低1日3リットル必要なので、2週間で42リットル。3人家族なら126リットル。これは、2リットル入りペットボトルで63本。6本入りのケースで10箱以上になります。

そのほか、食料品やカセットコンロ、ガスボンベ、電池や紙コップなど、どれだけのスペースが必要になるか⋯。考えただけで頭がクラクラしてきました。

防災備蓄品を準備する前に、まずは片づけをして収納場所を確保しなければならないという現実。
自己流の片づけを始めた私が、本当に片づけを終えるまで、実に17年という長い時間がかかってしまうとは、この時まだ知りませんでした。

こんまり®流片づけメソッドとは?

さまざまな片づけ本を読んだり、ときには「収納セミナー」などに参加しながら、時は流れて16年。
とうとう私は救世主ともいうべき本に出会いました。それが『人生がときめく片づけの魔法』です。

2011年1月、出版されたばかりのこの本を読み、「これなら片づけられる」と確信して、片づけを始めたのも束の間、3月11日、東日本大震災が発生。

片づけが終わらないうちに大地震が来てしまったことにショックを受けた私は、今度こそ最後まで片づけを終わらせようと、こんまりさんのセミナーなどを受講し、ついに片づけの歴史に終止符を打つことができました。

16年も片づけられなかった私が、どうして一気に片づけを終わらせることができたのでしょうか?

それは、こんまり®メソッドが、誰でも必ず片づけを終わらせることができる、再現性の高い片づけ法だったからです。

手順は実に明快でシンプル。本来、片づけでやるべきことは、「残すものを選ぶこと(選択)」と「定位置を決めること(収納)」ですが、その2つに、こんまり®流ならではのコツがありました。

それが、「リバウンドしないための5つのステップ」です。

片づけをリバウンドしないための5つのステップ

片付けの5つのステップ

私が片づけに、16年もかかってしまった最大の原因が「やみくもに片づけを始めてしまったこと」でした。
つまり、こうです。

気になる場所から、いらないモノ、捨ててもいいモノを探しては、適当に間引きするというやり方で、片づけた後の家がどうなっているのか、自分の暮らしがどうなるか、考えたことはありませんでした。

いわば、最終目的地も、ルートも明らかでないバスで旅をしているようなもので、途中の景色も楽しくないし、早くそのバスから降りたいとばかり思っていました。

こんまり®メソッドは、目的地を明らかにした上で、最短ルートで、楽しみながら、片づけの旅を進めていく方法。さらにはその旅を終えたあとにこそ、本当の人生の旅が始まることを教えてくれました。
では早速、リバウンドしないための5つのステップの解説をはじめましょう。

まずは、片づけた後の「理想の暮らし」を考えること。どんなものに囲まれているのか、朝起きてから夜寝るまで、どういう時間の過ごし方をしているのかを詳細まで妄想します。自分が映画の主人公になったつもりで、頭の中にリアルな映像を描き、その時の感情を味わえたら完璧です。

そして、モノを選ぶ基準は「触ったときに、心がときめくかどうか」。捨てるモノを選ぶのではなく、「ときめくモノ」を選ぶのがこんまり®︎流です。つまり、それを持っているだけでワクワクする、安心する、大好きというポジティブな感情を湧き起こしてくれるモノ、自分の人生に役立ってくれている、応援してくれているモノのイメージです。

次のステップは、「場所別」ではなく「モノ別」に、正しい順番で片づけること。正しい順番とは、すべてのモノを5つのカテゴリーに分けた上で、片づけの難易度が低いものから順番に進めていくこと。オススメの順番は、「衣類→本→書類→小物→思い出品」。これは「ときめき」がわかりやすく、選びやすい順番です。衣類は毎日肌に触れるモノ、ご自身の好みで選ぶモノなので、ときめきがわかりやすいです。それに対して小物であるキッチングッズなどの「ときめくか?」の判断は、難易度が上がりますので後半に取り組みます。いきなり、写真や思い出品を片づけようとすると、手が止まってしまい、先に進めなくなってしまいますので、この順番で進めるようにしましょう。

最後に、残すと決めたモノの「定位置」を、ひとつ残らず決めること。ここまでを一気に短期に行うのが「片づけ祭り」です。片づけ祭り完了後は「使ったら元に戻す」を徹底すれば、リバウンドすることがありません。

片づけは、本来楽しいものです。なぜならそれは「自分の理想の暮らしを支えてくれる大切なときめくものたちを選ぶ作業」だから。そして、その作業は自分の価値観を明確にし、家の中も思考も同時にクリアにしてくれます。こんまり®メソッドは、片付けのハウツーやスキルではなく、日々の暮らしの軸を決められるため、国や文化を問わず、始める人が増えているのだと思います。

防災も「理想の被災生活」を考えることから始めよう

防災対策に関して「最悪の事態を想定せよ」とか「想定外のことが起きるのが災害だ」と言われます。
すると、防災を考えること自体が嫌になったり、暗い気分になったりしがちです。しかし、30年以内に巨大地震(南海トラフ地震)が起きる確率は70%と言われています。(出典:政府・地震調査委員会 2023年1月13日発表資料
だからこそ、真正面から向き合ってみることをオススメします。

私の片づけコンサルティング体験から一つエピソードをご紹介したいと思います。

片づけ講座受講生のAさんは、東日本大震災を経験された方でした。
2017年に片づけを終えていましたが、その翌年、2018年6月に大阪北部地震が発生。新聞で「本好きで読書家の男性が、就寝中に倒れてきた本棚の下敷きになり亡くなった」という記事を読んで衝撃を受けたそうです。

Aさんのベッドサイドにも大きな本棚があったからです。
Aさんはその本棚を手放す決意をしました。そして再び本を中心に、すべてのモノと向き合い、収納場所を見直しました。その結果、クローゼットと、作り付けの飾り棚と、背の低い白い木製のキャビネットの中にすべてのモノを収めることができ、安心と安全を手に入れたと語ってくれました。

ちなみにAさんが手に入れたのは、それだけではありません。
震災前の2017年に行った片づけの際、「これは大切なものなので」と残すことに決めた、飾る場所がなく、床置きするしかなかった「ときめく油絵」2枚を、本棚を手放して現れた白い壁に堂々と飾ることができ、最高に「ときめく部屋」になったと喜んでいました。

震災をきっかけに再始動したAさんの片づけ。自分にとって本当に必要なもの(ときめくもの)を取捨選択しているうちにいつの間にか、家がすっきり安全になるだけでなくときめく空間を手に入れていました。

「恐れや不安をベースに備える」というイメージの防災を、こんまり®流片づけメソッドを使って、「人生を幸せにする一つの行事」として取り組んでいただきたい理由をご説明できるエピソードです。

ときめく家は、そこに住む人を守る家でもあるのかなと思ってます。

災害が発生したときに、自分はどうなるのか、その後の被災生活はどのように過ごすことになるのか。
それらをリアルに思い描くことから、防災対策が始まります。

一生に1度の片づけ祭りを一気に短期にやり切ろう!

Aさんは、片づけ祭りを終えて、「多くの本に囲まれているより、厳選して本当に大切な本たちと安心して過ごせる部屋にときめく」と気づきました。

遠く大阪で起きた地震による悲劇を、リアルに自分の部屋に置き換えてイメージすることができたので、すぐに行動を起こすことができました。

片づけは「祭り」です。
一年中、だらだらやっている祭りはありません。期間限定、一気にわっしょい、わっしょい、勢いよくやるのが、「祭り」です。もちろん片づけ祭り完了後も、「使ったら元に戻す」という日々の片づけは必要です。

また、ライフステージの変化にともなう見直しもあります。しかし、家中のモノと向き合い、ときめくモノだけを残す片づけ祭りは、一生に1度。

自分と家族の命を守る、防災対策を盛り込んだ片づけ祭りを始めませんか?

防災には物的備えと心的備えがありますが、片づけは、その2つの備えをするために最も有効な手段です。
災害時の被災生活をリアルにイメージする事は、心の準備運動になりますし、物的な備えをするためには、一度、家中のモノを見直すことが必要不可欠です。

次回からは、片づけコンサルタントたちが、防災片づけの具体的なノウハウをお届けしていきます。
一緒に頑張っていきましょう。

編集後記

私は、こんまりメソッドに出会うまで、16年も遠回りをしてしまいましたが、皆さんは今すぐ片づけと防災対策に取り組んで、一気に短期に完璧に終わらせてほしいと、切に願っています。

磯部恵子

磯部恵子
こんまり®︎流片づけコンサルタント

1958年東京生まれ、64歳。34年間の教員生活の後、56歳で第2の天職、片づけコンサルタントになる。教員時代より、家の状態が子供の成長に与える影響の大きさを痛感していた。小学生から80代までの片づけレッスン多数。

http://isobe-keiko.com