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そなえトリビア

2022.10.06

【名誉毀損罪になる?】プロバイダ責任制限法改正は抑止力になるか、増え続けるインターネット上の誹謗中傷

そなえトリビア

2022.10.06

【名誉毀損罪になる?】プロバイダ責任制限法改正は抑止力になるか、増え続けるインターネット上の誹謗中傷

「単なる批判のつもりでSNS上に書き込んだ内容が誹謗中傷だとして訴えられ、慰謝料を請求されることに」……。インターネットでの情報発信には思わぬリスクが潜んでいます。大人はもちろん「子ども同士のスマホでのやり取りが、ネット上でのいじめの温床になっていた」といったトラブルも決して他人ごとではありません。2022年10月には、誹謗中傷の被害者救済を図る「プロバイダ責任制限法」の改正法も施行されています。今回は、身近だからこそ知っておきたい、自分や家族を守るための「インターネット上での誹謗中傷トラブルの基本的な考え方と対策」をご紹介します。


まずはなにが「批判」でなにが「誹謗中傷」なのかを把握しよう

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批判は「誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じること」
インターネット上での誹謗中傷や名誉毀損によるトラブルは、しばしば「批判のつもり」であると弁明されます。辞書によると、批判とは「人の言動・仕事などの誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じること」を指します。あくまでも誤りや欠点を主体とし、それを改善するための建設的な行為であって、相手自身を貶めたり、それによって発言者が気晴らしをしたりするものではないのです。もちろん、ここでの誤りや欠点は批判者の主観によるものではなく、根拠を持った客観的なものである必要があります。

誹謗中傷は「根拠のない悪口を言いふらして、他人を傷つけること」
正当な批判であっても、受け手が傷つくことが全くないわけではありません。しかし、根拠がなく「批判のつもり」でしかない内容を発信することは、批判ではなく「根拠のない悪口を言いふらして、他人を傷つけること」とされる誹謗中傷にあたるのです。

「人格攻撃」や「人格否定」は誹謗中傷にあたる
「人格攻撃」や「人格否定」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。昨今、パワハラ問題などでもよく取り上げられる行為で、相手の言動や仕事などの誤り、欠点などを指摘するにあたって言動や仕事そのものを根拠とするのではなく、相手の個性や信念などを根拠とし論点をすり替えてしまうことをいいます。
例えば、ある人の意見に対して検討もせず「あいつは学がないからどんな意見を述べたところで取るに足らない」と却下したり、「不細工のひがみだ」と容姿や性格のせいにするのは人格攻撃・人格否定にあたります。

「虚偽ではない事実を指摘するのは名誉毀損にあたらない」わけではない
名誉毀損とは「公然と事実を指摘して人の名誉、すなわち社会的評価を傷つけること」をいいます。ここでいう「事実」が虚偽であれば当然違法ですが、たとえ真実であったとしても、社会的評価を傷つけるためにこれを指摘すれば罪に問われる可能性があります。つまり「本当のことなのだから指摘して構わない」とは限らないのです。

誹謗中傷・名誉毀損は犯罪になったり、訴えられたりすることも

民事訴訟で損害賠償を求められることも

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誹謗中傷や名誉毀損をした側のリスクとしてまず考えられるのが「被害者によって民事訴訟を起こされ、損害賠償や慰謝料を求められる」といったケースです。加害者としては自分を正当化するために「嫌なら見なければいい」、「目立つ人だから仕方ない」といったように事態をことさらに軽く認識したり、「自分が正しいのだから責めを負う必要はない」と思い込んだりしがちです。しかし、被害者にとって深刻な状況であれば、当然起こり得ることだと心得ておきましょう。

殺害や危害を加える予告は罪に問われることがある
「誹謗中傷で民事訴訟を起こされることはあっても逮捕されることはないだろう」と甘く考えていないでしょうか。直接的な殺害予告やテロ予告はもちろん、「懲らしめてやる」「天罰が下る」といった文言でも、犯罪行為の予告として威力業務妨害罪や脅迫罪などにあたる可能性があります。

拡散しただけで賠償が発生する可能性も
「訴えられたり捕まったりするのは投稿したユーザーだけ」というのも危険な考え方です。面白がって誹謗中傷の投稿を拡散してしまうと、再投稿による発信者として身元を特定され、民事訴訟で訴えられてしまうこともあります。

「〇〇だから大丈夫」と考えるのはやめ、冷静な行動を

「みんなやっている」は同調性バイアスのようなもの、SNSは特に注意を
「これくらいの悪口はみんなが言っている」というのは、集団の中で主体的に考えず周囲の人と同じ行動をとってしまう「同調性バイアス」に近い心理状態といえます。しかも、SNSには自分と近い趣味趣向のユーザーをおすすめする機能などがありますから、SNS上で見えている「みんな」は、知らず知らずのうちに「悪口好きの集まり」になっている可能性すらあるのです。

匿名アカウントであっても事が起これば身元は明らかになる
「匿名だし、職場や学校、住所がバレる書き込みもしていない」、「リアルの知り合いとはつながっていないアカウントだから」といっても、残念ながら逃れることはできません。犯罪捜査であれば令状によって身元を照会することができますし、民事裁判であっても裁判所の許可があればプロバイダなどに発信者情報の開示を求めることができます。ちなみに、2022101日に改正法が施行された「プロバイダ責任制限法」では、新たな裁判手続(非訟手続)が創設されたことで発信者の特定に必要な手続きが軽減されたり、情報開示請求を行える範囲が見直されたりしており、インターネット上での誹謗中傷に対する対応はさらに厳しくなっています。

もし誹謗中傷などの被害に遭ったら?

「法的措置を取る」旨を目立つ場所に掲載する
今回は「インターネットでの誹謗中傷や名誉毀損で人を傷つけない」ための内容をご紹介してきましたが、最後に「自分自身が誹謗中傷や名誉毀損などの被害にあった場合」についてお伝えします。

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SNSやブログなどでの誹謗中傷の投稿者が不明だったり、相手が分かっていても削除などの話し合いが難しいと思われたりする場合は、自分のSNSの固定投稿欄や、ブログのプロフィール欄など目立つ場所に「現在〇〇といった内容の誹謗中傷を受けており、専門家に相談のうえ法的措置を検討しています」といった訪問者向けの告知を掲示してみましょう。実際に法的措置へ向けて動いていなくても、その可能性を示すだけで投稿削除につながるかもしれません。

虚偽、事実無根の場合は明確に否定する
誹謗中傷や名誉毀損の内容が虚偽であったり、事実無根であったりする場合は、明確に否定しておきましょう。ただし、投稿者やその賛同者などと感情的なやり取りを重ねるのは精神的なダメージが大きいですから控えめに。先述の訪問者向けの告知などを活用しながら、冷静に理路整然と説明するのがよいでしょう。

SNS事業者などに該当する投稿の削除を依頼する
投稿者による自主的な投稿削除が望めないようであれば、該当する投稿のURLを控えてスクリーンショットを撮り、動画の場合は保存して、SNSを運営している事業者のお問い合わせフォーム(削除依頼の専用窓口があればそこへ)から提出し、削除を依頼しましょう。

状況に応じて信頼できる人や相談窓口を利用する
投稿を削除したり、ブロック機能などで相手から見られないようにしたりしたとしても、別のアカウントを使うなどして嫌がらせが続く可能性もあります。心ない誹謗中傷や名誉毀損でつらいと感じることもあるでしょう。インターネット上の誹謗中傷については各省庁などにより目的別に多くの相談窓口が設けられていますので、状況に応じて活用してみましょう。

誹謗中傷に関する悩みや不安を聞いてほしい場合は、厚生労働省「まもろうよ こころ」で電話・SNSでの相談窓口を紹介しています。書き込んだ人に賠償などを求めたい場合は弁護士、または日本司法支援センター「法テラス」のお近くの事務所か、サポートダイヤルへ。脅迫など身の危険を感じたり、犯人を処罰してほしい場合は最寄りの警察署、または都道府県警本部のサイバー犯罪相談窓口に相談しましょう。

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総務省「インターネット上の誹謗中傷に関する相談窓口のご案内[PDF:512 KB]」を加工して作成

書き込みの削除や、解決策についてまず相談したい場合は上の図の3つの機関がよいでしょう。ネットトラブルの専門家を擁する総務省「違法・有害情報相談センター」、人権問題の専門機関である法務省「人権相談受付窓口」、統計や効果検証スキームなどで実効的な誹謗中傷対策を立てている一般社団法人セーファーインターネット協会へ相談してみましょう。

インターネットやSNSは手元ですぐにやり取りできることから、相手や他のユーザーの立場や気持ちを深く顧みず、雑談のような気持ちで不用意に投稿してしまいがちです。しかし実際は文字や画像などの限られた情報でコミュニケーションをとり、しかも世界中から閲覧でき、意図しない形で切り取られたり拡散されたり、投稿自体を削除してもコピーされたデータが残り続けたりする可能性もあるという、取り扱いの難しいものでもあります。投稿する前にまず一息おき「この内容を相手や他のユーザーがどう思うか」を落ち着いて考えてみましょう。被害にあった場合も、感情的になっては相手に付け込まれかねません。まず信頼できる人を味方につけて、自分の心を守ることを第一に行動していきましょう。

参考:
政府広報オンライン「SNSの誹謗中傷 あなたが奪うもの、失うもの #NoHeartNoSNS(ハートがなけりゃSNSじゃない!)」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202011/2.html
国民生活センター「国民生活」202110月号
「特集 SNSでトラブルにあわないために|SNS「誹謗中傷」に負けないために」
https://www.kokusen.go.jp/wko/data/wko-202110.html
総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html

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