
“植える”から始めた歩み
なぜ損害保険会社が植林を始めようと思ったのか
地球温暖化を加速させる、世界規模での熱帯林の減少。損害保険事業の使命である自然災害の防止・減少を図るべく、私たちは2005年度から「熱帯林の再生をめざしたプロジェクト(ジャワ島パリヤン野生動物保護林)」を進めてきました。インドネシア政府と共同で手掛けた、20年間に及ぶ取組の成果を振り返ります。

第Ⅰ期プロジェクト
(2005年4月~2011年3月)
紙をたくさん使っていた保険会社として、考えたこと
約款や保険証券を「紙」でお渡しするのが主流だった2000年代前半。紙を多く使う損害保険会社として、木を地球に返したい。その思いから、インドネシア熱帯林再生プロジェクトの検討は始まりました。
地球に木を返そう
木を地球に返すと言っても、どこで?と検討を始めた私たちに、住友林業の方がインドネシアの状況を知らせてくれました。当時、インドネシア政府は不法伐採による野生動物保護林の荒廃に悩んでいたのです。両者の思いが重なり、パリヤン野生動物保護林の再生に取り組むことになりました。
第Ⅰ期の6年間では約350ヘクタールに計30種、約30万本の植林を行い、荒れ地に緑が戻りました。モニタリングの結果、鳥類や昆虫類など生態系にも回復が見られました。
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植林活動 -
地元住民との合意形成
熱帯林が順調に回復する一方で…
一方、地域住民による不法伐採は依然として課題のままでした。原因を探るために調査を行ったところ、植林だけでは解決できないある問題が見つかったのです。その問題を解決するため、第Ⅱ期へと活動を継続することにしました。


第Ⅱ期プロジェクト
(2011年4月~2016年3月)
なぜ不法伐採は続いたのか?
調査の結果、伐採をしなければ生計が成り立たない住民が多くいることがわかりました。パリヤン野生動物保護林を恒久的に保全するためには、周辺住民が保護林内を開墾せずとも収入を得られるような、持続可能な地域社会を形成する必要があったのです。
地域住民への支援に取り組む
こうして、第Ⅱ期プロジェクトでは地域住民の生計向上に貢献すべく、保護林内で耕作していた農業者のうち40名で農業グループを形成。
トレーニング用農地におけるトウガラシの栽培技術指導のほか、複数人での共同作業や作業記録と費用管理の訓練、マーケティング戦略を学ぶための市場研修など農業技術指導プログラムを実施しました。
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農業技術指導 -
農業研修
安定した生計向上のきざし
農業技術指導プログラムへの参加者の中には、作物を自宅でも栽培する人や周辺住民に栽培技術を普及する人も出てくるようになり、自立的・自主的な取組が浸透していきました。また、40名の農業グループは、2015年2月に法人格をもつ農業協同組合(Koperasi)として県知事の承認を受け、登記されるに至りました。こうして、第Ⅱ期プロジェクトで住民の生計向上のきざしが見えてきました。


第Ⅲ期プロジェクト
(2016年4月~2021年3月)
地域住民が参加する森づくりの仕組み
持続可能な熱帯林の再生には、“誰かの森”ではなく、“自分たちの森”だと住民が考えられることが重要です。そこで、第Ⅲ期プロジェクトでは「住民協働型植林」という、住民が参加する森づくりの仕組みを始めました。
森づくりに関わってよかったと住民が感じられる仕組み
地域住民に産業用樹種の苗木を配布し、植林・育林の技術指導を実施しました。苗木づくりには地元の住民や養護学校の子どもたちも参加。第Ⅱ期プロジェクトで生まれた農業協同組合の運営支援と自立化推進を行うことで、収入の安定化にもつなげました。インドネシア現地法人は住民への講座を行いました。
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育苗の様子 -
インドネシア現地法人による講座の様子

第Ⅳ期プロジェクト
(2021年4月~2024年3月)
住民やパートナーと取り組む、持続的な熱帯林再生の定着
第Ⅰ期から第Ⅲ期までの植林・地域住民の生計向上・住民協働型植林などの活動は、持続可能な熱帯林の再生のために、試行錯誤しながら取り組んできたことでした。これらが地域に根付いていくように、第Ⅳ期でも地域住民や行政等と連携しながら活動を進めました。
自然環境の向上と生計の向上は両立できる
住民協働型植林活動では、産業用樹種の苗木を第Ⅳ期の3年間で436世帯に126,275本配布しました。実際に近隣の製材工場に木材を販売できている事例も生まれました。
農業協同組合での苗木栽培は同じく3年間で約45,000本に到達。このモニタリング活動により、植えた木を確実に育てるための支援につなげることができます。
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成長した樹木を丸太に加工 -
政府関係者による植林モニタリング
第IV期までの成果
植林以外にも取り組んだことで、熱帯林の再生につながった
第Ⅰ期では、350 ヘクタールに30万本の植林を実施し、「荒廃地が緑に覆われる」という大きな成果を達成することができました。4年目から現在に至るまで続けている環境教育が、このプロジェクトへの住民たちの理解を広げる大きな土台となったことは間違いありません。第Ⅱ期からは社員向けスタディツアーも開始。日本国内での理解促進にも取り組みました。
三井住友海上のインドネシア熱帯林再生プロジェクトは、植林した場所が再び不法伐採されることのないよう、植林以外の活動にも長年取り組んできたことが大きな特徴です。これらの取組については次のページで詳しくご紹介します。
こうしたⅣ期までの活動を経て新しく始めるのが、第Ⅴ期からのネイチャーポジティブプロジェクトです。
