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“植える”から、その先へ

地域とともに進める持続可能な熱帯林の再生

木を“植える”だけでは不法伐採の抑止にはならず、熱帯林は再生していかない――。地域住民が不法伐採を行う原因に向き合い、禁止と伝えるだけでなく、生活向上のための取組を行う必要があることに私たちは気づきました。
森林を保全することが災害発生の低下につながり、植林活動によって将来の収入源を作ることができる。環境教育やさまざまな機会を通して“植える”先にある未来を共有することも、欠かせないことがわかってきました。

自然と生きる、そのために自然の重要性を伝える

私たち人間は森林という自然資源から多くの恩恵を受けています。しかしその恩恵を受けているという実感が持てなければ、その重要性を理解することは難しくなります。
そこで私たちは、地域の未来を担い、身近な大人に重要性を伝えることのできる子どもたちや、毎年多くの生徒たちに授業を行うことができる教師たちに対して、「森」を題材にした環境教育を行ってきました。

環境教育

  • 植林活動の様子_1
  • 植林活動の様子_2
  • 植林活動の様子_3
  • 植林活動の様子_4
  • 環境教育の様子

    小学校を対象にした環境教育プログラムの設計には、プロジェクト実施者である私たちのほか、森林を管轄する政府機関(環境林業省)、地元政府機関、教育機関(小学校教師)、児童の親を含むコミュニティ(村長など)がディスカッションを行い、共通認識を広げていきました。第Ⅴ期の環境教育は、パリヤン野生動物保護林を管理する環境林業省からの強い要望を受け、計画、実施しています。
    具体的な取組は、ガジャマダ大学主導の環境教育と現場レベルでの植林活動を通じた環境教育の2つのアプローチから進められています。環境教育プログラムとしては、①小学校、養護学校での苗木づくり、②小学生を対象とした自生種の植林活動、③森林パトロールと森からの学びがあります。

    三井住友海上
    (現地法人)
    住友林業
    ガジャマダ大学
    三井住友海上
    (現地法人)
    • パリヤン地域の親と教師を対象に、保険や金融リテラシーに関する講座を実施
    住友林業
    • 森林パトロールや苗畑建設など現場での植林活動を通じた環境教育を実施
    ガジャマダ大学
    • パリヤン地域の親と教師を対象に、森林の大切さや暮らしにもたらす価値に関する講座を実施

    自然とともに豊かになる

    持続的な熱帯林の再生のためには、周辺に住む住民の経済的な状況の改善が重要です。加えて、住民自身が森づくりに関わることで「自分たちの森」だと感じ、主体的に参加し、愛着をもつことができれば、環境保全と経済的利益は二者択一でなく、両立できる目標になります。そのために行ってきた、さまざまな取組を紹介します。

    Ngudi Rejeki農業協同組合の方々達

    取組 01

    農業組合の設立と運営支援

    Ngudi Rejeki農業協同組合は、法人格を持つ農業協同組合です。地域住民の生計向上を目的に、設立当初から農業技術の指導や共同作業、費用管理、マーケティング戦略に関するトレーニングの支援を行っています。現在は月例会や年次会合が開催され、組合員を対象とした資金貸付等も行われています。透明性と責任性を重視し、持続可能な農業経営の自立を目指す組合です。

    • 農家グループの定例会合
      農家グループの定例会合
    • 農家グループの定例会合
      農家グループの定例会合
    地域住民の写真

    取組 02

    農業技術の指導

    安定した需要があり、高値で販売が期待できる換金性の高い農作物として、トウガラシ栽培の指導を実施しました。野生動物のサルの被害がない点でも育てやすく、各家庭での栽培も普及・促進しました。
    ガジャマダ大学は、生計向上を目的としてトウガラシの作付・マーケティング指導や、早く収穫ができるキノコの栽培方法指導などを行いました。

    • 井戸掘りの様子
      井戸掘りの様子
    • 農家グループ向け育苗研修
      農家グループ向け育苗研修
    活動の様子_3

    取組 03

    植林の指導

    植林指導は、植林を行う目的について理解を深めるところから始めます。地域住民が森林保全の意味を自分ごととして理解し、植林活動に賛同して初めて、植林技術指導に意味が生まれるからです。
    技術指導としては、定期的に参加者の植林地を訪問し、苗木の成長状況や植林の進捗を確認。植林ステージや季節に応じた保守管理などを行います。指導内容は、苗木の植え方、植栽直後の管理方法、除草や施肥の方法など実践的です。

    • 育苗の様子
      育苗の様子
    • 社会林業の苗畑を視察
      社会林業の苗畑を視察

    取組 04

    パリヤン野生動物保護林フォーラムの運営支援

    • 議論の様子
    • 集合写真

      地域一丸となって森づくりを進める住民協業型植林のモデル確立のために、保護林管理事務所、地域の代表者、警察、農業協同組合、学校関係者などと共同で、本プロジェクトの進捗報告や持続的な森林管理のための方策について議論を行っています。フォーラムで出た意見は、プロジェクトの運営方法に反映されたり、政府の地域支援プログラムに採用されたりしています。

      取組 05

      植林地の見守り

      • パトロール活動の様子_1
      • パトロール活動の様子_2

        保護林管理事務所と共同で植林地の見守り活動を行っています。具体的活動として、①不法伐採(家畜のエサや薪の採取など)の抑止とモニタリング、②森林火災防止のための消火訓練や定期パトロール、③病害や枯死の有無などを確認する、植林木の成長モニタリング、④地域コミュニティとのコミュニケーション、⑤炭素固定、生態系モニタリングなどがあります。

        取組 06

        野生動物の観察

        • オナガザルの写真
        • 猛禽類の写真
        • 調査の様子

          スタッフの日常業務中の観察に加えて、専門機関(ガジャマダ大学)による学術的な調査を定期的に行っています。特にオナガザルや猛禽類を対象として定期的なモニタリングを行っており、オナガザルについては、ほぼ毎日観察されています。2023年にはパリヤン野生動物保護林内の141区で188頭、140区で76頭のオナガザルが生息していることが確認されました。2023年の乾季には保護林内で36種類の鳥類、2024年の雨季には43種類の鳥類が生息を確認。プロジェクト開始時よりも生物多様性が回復していることが明らかになっています。

          “その先へ”がもたらしたこと

          「“植える”から、その先へ」として展開してきたこれらの活動が、三井住友海上の熱帯林再生プロジェクトの大きな特長です。こうした活動なくして荒廃した熱帯林がここまで再生することもなく、成功事例としてインドネシア政府から高く評価されることもなかったでしょう。ある州では環境教育が学習指導要領に組み入れられたとも聞いており、長年この地で活動を継続してきた価値の表れだと感じます。
          こうした活動を始めた経緯については「“植える”から始めた歩み」のページをご覧ください。
          この20年の活動を元に、第Ⅴ期から新たに始めるネイチャーポジティブプロジェクトについては、TOPページでご紹介しています。

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