こんにちは、秘湯探検家の渡辺裕美です。
会社員時代にハードワークで体調を崩しましたが、「温泉」と「自然」が心身を癒やしてくれたことをきっかけに温泉にハマり、これまで国内外の温泉2,500ヵ所以上を巡りました。
山など自然の景色が眺められる露天風呂がある秘湯がお気に入りで、月の半分は家族と一緒にレンタカーで秘湯宿を訪れています。
今回はあったかい温泉が恋しくなる、冬の季節にぴったりの「雪見露天風呂が自慢の秘湯宿」をご紹介します!
雪見露天風呂で味わえる特別な体験とは?
冬の秘湯宿の楽しみといえば、やっぱりアレですよね! そう、雪見露天風呂。
露天風呂から四季の移ろいを眺める瞬間は、春夏秋冬どの季節においても幸せを感じますが、特に冬の「雪見露天風呂」は別格。しんしんと雪が降る中、熱々の湯に浸かるとぬくもりが体の芯まで染みわたり、幸福感に包まれますよね。
目の前に広がる白銀の雪景色を眺めながら、ゆったりと浸かっていられるのも、雪見露天風呂の醍醐味(だいごみ)ではないでしょうか? 宿泊すれば、冬の味覚を味わったり、温泉を満喫しドライブの疲れを取ったりすることができ、さらに充実した旅になること間違いなし。
というわけで、私が厳選した、東京から車で2時間半から4時間で行ける秘湯宿を紹介していきます!
「雪見露天風呂が自慢の秘湯宿」4選
【1】標高1,800メートル! 白銀の山々と露天風呂が一枚絵に「万座温泉 万座亭」(群馬県嬬恋村)
まず最初にご紹介するのは、群馬県と長野県の境、上信越高原国立公園内に湧く万座温泉の「万座温泉 万座亭」。万座温泉といえば“硫黄含有量日本一“として知られる温泉地。万座亭の源泉「白鐵の湯(はくてつのゆ)」も、規定値の約20倍もの濃厚な硫黄泉が楽しめます!
そして、もう一つの魅力は、標高2,000メートル級の白銀の山々と露天風呂が一枚絵になったログ露天風呂。お風呂自体が標高1,800メートルの高所にあるので、山の尾根と目の高さが同じになるんです。小さな氷の結晶が空を舞ってキラキラと輝いて、本当にぜいたくな眺めですよ!
濃厚な硫黄泉なので、数分浸かっているだけで血流が良くなり、グッと芯から温まるだけでなく、シミ予防などの美肌作用も期待できるんです。こんな美しい景色を見ながら、さらにお肌もきれいになるなんて一石二鳥ですよね。
温泉を楽しんだ後は、館内にあるカフェで雪景色を眺めながら、あったか~いカフェラテをどうぞ。香り豊かなカフェアメリカ―ノやエスプレッソなど、社長自らが一杯ずつ丁寧に入れてくださいます。
ラテアートもコーヒーショップに来ているかのような出来栄えで、ハートのデザインに思わず感激。温泉旅館で本格的なラテをいただけるなんて貴重ですよね。
実はこちらのお宿、スノーアクティビティにも便利なんです。フワフワの雪質が人気の「万座温泉スキー場」のゲレンデと宿が直結しているので、スキーや雪遊びを楽しむこともできます。ちなみに、うちの子どもたちはお宿の玄関脇で雪だるまづくりを楽しみましたよ。
チェックアウトした後は、車で草津温泉の新観光スポット「裏草津」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか(※冬期間は国道292号線、県道466号線は通行止め。万座ハイウェー利用で約50分)。地蔵源泉付近が2021年に再開発され、新たにできた施設がたくさん。
こちらは、顔に蒸気を浴びることで、お肌しっとりになる「顔湯」です。
約1万冊の漫画が置かれた「漫画堂」では、往年の名作から近年の人気作まで漫画を読むことができます。
漫画を楽しんだ後は、併設のカフェ「月の貌」で腹ごしらえをしましょう。草津温泉街には珍しいオーガニックや自家製のメニューが豊富なこだわりのカフェで、スイーツや食事がいただけます。ちなみに先ほど紹介した「漫画堂」の入館料もこちらで支払います。
おすすめは「高原野菜の焼きカレー 」。トロトロのチーズとコクのあるカレーがマッチしていて、子どもたちも大好きな一品です。ぜひ味わってみてください。
【♨メモ♨】万座温泉 万座亭
- URL:https://www.manzatei.com/
- 泉質:酸性・含硫黄―マグネシウム・ナトリウム・硫酸塩温泉
- 住所:群馬県吾妻郡嬬恋村干俣万座温泉2401
- 電話:0279-97-3133
- アクセス:東京駅から車で関越自動車道経由、約3時間30分
- 🚙³₃:Googleマップ
- 周辺スポット:顔湯、漫画堂、カフェ 月の貌(すべて草津温泉地蔵エリア)、万座温泉スキー場
【2】ラウンジや部屋から24時間雪景色を堪能できる「谷川温泉 水上山荘」(群馬県みなかみ町)
続いては、滞在中ずっと美しい雪景色を眺められる冬にうってつけのお宿です。群馬県みなかみ町にある「水上山荘」。旧国鉄の設計技師だったご主人の祖父が、同じく旧国鉄の保養所だった旅館を買い取ったのがこの旅館の始まりです。
旅館に入るやいなや、目の前の大きな窓からの景色に思わず目が釘づけになります。チェックインで通されるこちらのラウンジからは、四季を通じて絵画のような谷川岳の景色を望めるんです。
美しい雪景色は客室からも楽しめます。大きな窓から見下ろすと、眼下には渓流が流れ、対岸の山々に雪が積もると、まるで水墨画の世界のように変わります。ここまで読まれた方は何となくお気づきですよね? 「水上山荘」は館内の至る所で雪景色を堪能できるお宿なんです。
個人的に一番おすすめしたいのが、客室にある半露天風呂からの雪景色。湯船で温まっていると、大きな出窓から涼やかな風と粉雪が吹き付け、頬をそっとなでます。「はぁ~、気持ちいい」。本当に何時間でも入っていられる気持ち良さです。湯船はもちろん、シャワーまで源泉100%なのがまたうれしいです。
館内で最も開放的なお風呂は、大浴場にある露天風呂です。視界を遮るものが一切ないので、目の前に谷川連峰のパノラマが広がります。絶景~!
夜は露天風呂の周りがライトアップされるので、また違った情緒を味わえますよ。雪帽子をかぶった木々が照らされると白色に輝き、いっそう美しさが増します。まさに山奥の秘湯宿でしか味わえない、静かで神秘的な体験です。
雪景色で目のごちそうをいただいた後は、本物のごちそうを。個室の食事処では、地元の野菜や果物、肉をふんだんに使った創作会席料理が出迎えてくれます(※料理の写真は現在提供しているのものとは異なります)。程良く炙ったブリと梅ジュレの酸味が絶妙にマッチした「寒ブリのカクテル」は絶品。
地元の契約農家自慢のリンゴをくり抜いて、そこに奥利根マスやサラミなどをトッピングした「みなかみ林檎サラダ」は前菜でいただきます。リンゴがおいしいのはもちろん、マスとサラミがドレッシングによく合う。食を通して「おいしさ」+「驚き」を与えてくれるのが水上山荘スタイルです。
「館内の蛇口から出るお湯は、全て温泉なんです」。スタッフの方が笑顔で持ってこられた飲み水も実は温泉! アルカリ性単純温泉で、クセがなく飲みやすい泉質なので、グイグイいけるんです。飲泉許可を得るには厳しい基準をクリアする必要があるので、体の内からも温泉を堪能できる機会は希少ですよ。
谷川温泉のある水上温泉郷は手付かずの自然が残され、秘湯の雰囲気が漂っています。そんな山間で「おいしいランチを食べたい!」という方におすすめなのが、本格派イタリアン「小さなレストラン 彩絵」です。絵本に出てきそうなかわいい外観が目印。
地元の新鮮野菜を使ったヘルシーなメニューや手作りのソースパスタが自慢です。私は「魚介のアラビアータ」をいただきましたが、海鮮の風味がしっかり効いたソースにパスタがしっかりと絡まっていておいしいです。
【♨メモ♨】谷川温泉 水上山荘
- URL:https://minakamisansou.co.jp/
- 泉質:アルカリ性単純温泉
- 住所:群馬県利根郡みなかみ町谷川556
- 電話:0278-72-3250
- アクセス:東京駅から車で新潟線/関越自動車道経由、約2時間20分
- 🚙³₃:Googleマップ
- 周辺スポット:小さなレストラン 彩絵、ホワイトバレーみなかみ、群馬サイクルスポーツセンター
【3】美しい星空と創作フルコースでロマンティックなひとときを。「奥山田温泉 レッドウッドイン」(長野県高山村)
さて、突然ですが、長野県の高山村にかつて“世界で3番目に美しい星空”として紹介されたスポットがあるのをご存じでしょうか? そのスポットとは「山田牧場」(ヤマボクワイルドスノーパーク)。次にご紹介する「奥山田温泉 レッドウッドイン」は、その牧場の正面に立っています。
“訪れる人に安らぎを与える”がレッドウッドインのコンセプト。その言葉どおり、館内は木のぬくもりが感じられ、ポカポカの暖炉が出迎えてくれます。ここへ来ると、なんだか心まで温かくなるんですよね。
備え付けのスリッパに履き替え、雪の階段を数段上ると自慢の雪見露天風呂が。
レッドウッドインの湯船は、アメリカのセコイア国立公園から輸入した樹齢1650年のレッドウッドの切り株をくり抜いてできた、ちょっと変わった造りです。こんもりと積もった雪とミルキーブルーの湯とのコントラストを楽しみながら、ゆったり浸かれます。
奥山田温泉は、火山性の蒸気に沢水を当てて温泉水をつくる「噴気造成泉」という温泉の形態に属します。単純硫黄泉で、ゆで玉子のような香りがしっかりとしますが、実際浸かってみるとサラッと優しい肌ざわりが特徴的です。
夜になったら宿からすぐの山田牧場(ヤマボクワイルドスノーパーク)から満点の星を観賞してみてください。晴れた日は、星座を探したり流れ星を数えたり、ロマンティックな時間が過ごせますよ。
星降る夜をたっぷりと堪能した後は、食堂で地元農家の野菜や果物を使った洋食コースをいただきます。年末年始は特に、お食事目当ての常連さんで予約が取りづらいほどお料理も人気です。自家製燻製(くんせい)やワインが豊富なのも人気の秘密。
柔らかくてジューシーなサーロインステーキは、相性バツグンの地元の溜まり醤油を付けていただきます。
「レッドウッドイン」を訪れたついでに、ぜひ立ち寄っていただきたいのが、同じく高山村にある「高井橋」です。四季を通じて松川渓谷に映える赤い橋ですが、特に冬の景色は別格。白銀色にたたずむ姿の美しさに心を打たれます。この景色が見たい方は対岸の「山田橋」「もみじ橋」からどうぞ。
【♨メモ♨】奥山田温泉 レッドウッドイン
- URL:https://redwoodinn.jp/
- 泉質:単純硫黄泉
- 住所:長野県上高井郡高山村大字奥山田3681-347
- 電話:026-242-2418
- アクセス:東京駅から車で新潟線/関越自動車道と上信越自動車道経由、3時間50分
- 🚙³₃:Googleマップ
- 周辺スポット:高井橋、ヤマボクワイルドスノーパーク、見晴茶屋
【4】秘湯感バツグン! 1日1組限定の湯宿「二岐温泉 湯小屋旅館」(福島県天栄村)
最後は、ちょっと足を延ばして福島県の天栄村へ。「東北だし遠いのでは……?」と思われるかもしれませんが、都内から車で3時間半と、意外に早く着くことができます。目的地は二岐山(ふたまたやま)山麓、標高800メートルの山峡、渓流沿いにたたずむ「二岐温泉 湯小屋旅館」。
道路からお宿の入口を確認できるのは、ひっそりと掲げられたこちらの張り紙だけ。「湯小屋旅館 営業中」と書かれた張り紙を頼りに長い階段を下っていきます。
しばらく下っていると、眼下に渓谷にへばりつくようにして立つ、宿の建屋が現れます。こちらが受付です。
既に先客(野生のシカ)が訪れたようです。
「漫画家つげ義春さんの作品『二岐渓谷』のモデルにもなった、歴史ある湯小屋旅館を継承していきたい」と、一大決心をした現在のご主人が、当時の経営者だった男性から宿を譲り受けたのは2003年。館内と外観をリフォームした現在も、作品に登場する木造の家屋は残されています。
湯小屋旅館自慢の野天風呂がこちら。川のせせらぎが手に届きそうなほど、せり出した湯船からは雪景色を一望でき、まるで特等席。この開放感なので湯船からの景色は四季を通してすばらしいのですが、やはり冬は桃源郷のような美しさになるので、ぜひともおすすめしたいです。
ちなみにこちらのお宿、宿泊は1日1組限定。日帰り入浴でも、1時間当たり1組の貸し切り制なので、入浴中に人と出合うことがありません。絶景雪見露天風呂と内湯が両方、家族で、しかも貸し切りで堪能できるなんて……。都心ではあり得ないぜいたくさですよね。
夜ごはんは福島和牛のしゃぶしゃぶを、ご主人お手製のオリジナルポン酢に付けていただきます。天栄村産の新鮮野菜もシャキシャキで、お肉との相性は抜群です。
宿泊棟は2021年に増設されたばかりで、木の香りが漂う落ち着いた造り。大きい窓からも雪景色が望めますよ。
たっぷりと雪が積もれば、お宿の敷地内でテントサウナやソリ滑りも楽しめます。温泉で美しい景色を眺めて、雪遊びで思いっきり遊んだ後は、雪景色に癒やされながら汗を流す。ファミリーで1日楽しめる穴場です。
東京から湯小屋旅館へ向かう途中の白河インターチェンジ(東北自動車道)から、20分ほど走った先にある「森林ノ牧場」もおすすめスポットです。ミルクの成分が高く、香り・味が良いのが特徴の「ジャージー種」という牛を牧場で飼育しており、冬は子牛との触れ合いもできます。併設のカフェもぜひ立ち寄ってみてください。
地域の農家さんの野菜を使ったランチもおいしいのですが、おすすめは、ソフトクリームをはじめとする乳製品。ジャージー牛のミルクを低温殺菌して作るソフトクリームは、濃厚で滑らかな口当たり。うちの子どもたちも大好きです。
暖炉の前でいただく、ホットチョコレートも冬のイチオシです。おなかはもちろん、心も満たされますよ!
【♨メモ♨】二岐温泉 湯小屋旅館
- URL:https://yugoya.jp/
- 泉質:カルシウムー硫酸塩泉
- 住所:福島県岩瀬郡天栄村大字湯本字下二俣22-7
- 電話:0248-84-2210
- アクセス:東京駅から車で東北自動車道経由、約3時間30分
- 🚙³₃:Googleマップ
- 周辺スポット:森林ノ牧場、南湖公園、エンゼルフォレスト白河高原
車で冬の秘湯宿へ行くときに注意していること
雪道運転は初心者ドライバーにとって、ハードルが高いかもしれません。運転のコツや危険なポイントを予習し、冬のドライブを安全に、そして、快適に楽しみたいですよね。最後に個人的に注意しているポイントをお伝えします。
雪道ではスタッドレスタイヤの装着はもちろんのこと、勾配がきつい上り坂を走る場合、4WD(四輪駆動)車を運転するようにしています。
その他、運転中は前の車と車間距離を取りつつ、急発進・急停止・急ハンドルなど、急な操作を絶対行わないようにすることが大事です。
また、冬は目的地まで、他のシーズンの走行時間の30分~1時間増しで見込んでおくなど、余裕を持った運転計画を立てています。以下の記事もあわせてチェックしてみてください。
「雪見露天風呂が自慢の秘湯宿」は、冬だからこそ味わえる貴重な体験ばかりです。
日中、露天風呂から山の雪景色を楽しむのも良いですが、違った趣を味わえる夜の雪見露天風呂も格別ですよ。暗闇の中、周辺がライトアップされると照らされた樹氷が白く輝いて、何とも言えない幻想的な雰囲気になります。
また、子どもたちにとって、もう一つの楽しみは、近くのゲレンデや宿の周辺での雪だるまづくりや氷柱遊び。都心ではめったに体験できない「雪」との触れ合いに大喜びです。
今年の冬は、皆さんも「雪見露天風呂の宿」へ車で訪れてみてはいかがでしょう。
日帰りも、宿泊も。車で「秘湯」へ行ってみよう!
編集:はてな編集部
※2025年1月7日18:10ごろ、一部ルートを修正しました。ご指摘ありがとうございました。