はじめまして。秘湯探検家の渡辺裕美です。
私は会社員時代にハードワークで体調を崩したとき、「温泉」と「自然」に心身を癒やされました。それをきっかけに温泉にハマり、これまでに国内外の温泉2,500ヵ所以上を巡りました。
特に「秘湯」など自然豊かな場所にある温泉が好きで、現在でも月の半分は、関東近郊の未開の温泉探しや子どもとの秘湯巡りを車で楽しんでいます。
都内にあるスーパー銭湯も気軽で良いのですが、人が多過ぎたり、子ども同伴の場合は周りの目が気になってリラックスできなかったり……。
でも、「秘湯」ならそんな心配をせずに、静かに温泉を楽しめる場合が多いです。また、山・川など自然環境にも恵まれていることが多く、癒やし効果が倍増します。
そこで今回は、私がおすすめしたい「初心者向け関東近郊の秘湯」をご紹介します。東京から車で2~3時間走れば、個性的で本物志向の温泉と出合えますよ。
初心者向けの秘湯ってどんなところ?
「秘湯」と聞くと、「山奥にあってアクセスしにくい」「脱衣所がなくてハードルが高い」といったイメージを持っている方もいると思います。
そこで、この記事では「初心者向けの秘湯」を選ぶに当たり、以下の3つの条件に配慮しました。
- 車で比較的アクセスしやすい温泉施設 or 宿の日帰り入浴(東京から車で2~3時間圏内を目安に)
- 男女別のお風呂や貸し切り風呂がある(混浴などの施設は除外)
- 温泉自体が本物志向
できるだけエリアを分散させ、温泉もバラエティーに富んだセレクトにしました。
関東近郊のおすすめ秘湯10選
♨秘湯に行く前に♨
定休日以外にも不定休を設けている施設があったり、日帰り入浴の時間が宿泊客の状況で日ごとに変わったりすることもあります。
訪れる前には必ず、ホームページなどで営業日時を入念にチェックしてください。私も必ずそうしています。
【1】江戸時代にタイムトリップ! 奥那須の秘湯「北温泉旅館」(栃木県那須町)
最初に紹介するのは、栃木県でも人気の那須温泉の、さらに奥にある秘湯宿「北温泉旅館」です。江戸時代に宿として創業、当時は全100室を超える大規模な湯治旅館としてにぎわった由緒ある秘湯なんです。
見どころは、江戸・明治・昭和と年代ごとに増築し守られ続けてきた木造3階建ての建物。江戸時代から続く「帳場(旅館などで帳付けや勘定をするところ)」なども残されていて、一歩踏み入れるとタイムトリップしたような気分になります。
日帰り入浴では、男女各4種類のお風呂を楽しめます。
中でもおすすめは、名物「天狗の湯」(日帰りでは男性のみ入浴可)。昔、大天狗が湯を発見したとされる由縁から、浴室には巨大な天狗の面が掲げられています。
お湯は少し熱めですが、泉質は「単純温泉」で成分が濃過ぎないので、子どもから高齢の方まで安心して入れます。
北温泉旅館は映画『テルマエ・ロマエ』のロケ地にもなりました。レトロ温泉の世界をぜひ体感してみてください。
【♨メモ♨】北温泉旅館
- 泉質:単純温泉
- 住所:栃木県那須郡那須町湯本151
- 電話:0287-76-2008
- アクセス:東京から車で東北自動車道経由、約2時間30分
- 🚙³₃:Google マップ
【2】温泉グルメが楽しめる変わり種の秘湯「パンサラッサのうみ 足利温泉」(栃木県足利市)
お次はちょっと変わった秘湯です。東北道の足利インターチェンジを降り、県道から分岐する林道をしばし進むと、「温泉マーク」が描かれた看板が見えます。「こんな山奥に?」という意外なロケーションにあります。
この足利温泉は、ご主人が山に分け入り、気管が弱かった自分の娘さんのために自力で源泉を探し当てたそう。
当初は家族だけで入浴、調理に使っていたそうですが、「一般の人にも利用してほしい」という思いから、温泉の販売・宅配(※)、そして、温泉水を使ったカフェを始めたとのこと。
(※)販売:あらかじめ持参したポリタンクなどに温泉水を入れる。18リットル当たり100円(税別)。宅配:熱い温泉をお風呂の窓からホースで入れてもらう。足利市内の温泉配達は浴槽約300リットルで3,000円(税別)。
購入した温泉は、カフェの隣にあるテントでつかることもできます。
温泉の量に応じて湯船を選ぶのですが、おすすめは400リットルの浴槽が2つあるお風呂。家族で行っても広々。毎回換水し、新しいお湯に張りかえられるので、塩素を加えておらず、温泉そのものの香りや肌ざわりを楽しめます。
湯上がりは温泉グルメを。大きなエビを温泉で解凍し、自家製ローズマリーなどの香草を付けて焼いた「スパイス焼」は、足利温泉の名物にもなっています。
その他、温泉水を使った自家製パンやおにぎりも、もっちりとしておいしいですよ。ぜひ味わってみてください。
【♨メモ♨】パンサラッサのうみ 足利温泉
- 泉質:単純温泉
- 住所:栃木県足利市名草上町2715
- 電話:0284-64-0964
- アクセス:東京から車で東北自動車道経由、約1時間30分
- 🚙³₃:Google マップ
【3】天候により色が変わる七不思議の湯「奈良田温泉 白根館」(山梨県早川町)
関東近郊の温泉でも指折りの個性派泉質の秘湯「奈良田温泉 白根館」を紹介します。
開湯は古く、奈良時代にまでさかのぼります。病気がちだった孝謙天皇が、夢の中で「甲斐の国に霊泉あり」とのお告げを聞いて、たどり着いたのが奈良田温泉だったとされています。
現在は日帰りのみの営業ですが、遠方から多くのファンが訪れています。
露天風呂は男女別に一つずつあり、奈良田湖ののどかな景色をバックに入浴できます。
ところで、何が「個性的」なのかというと……こちらの温泉、透明・緑色・白濁と、天候や気温によって色が変わる「不思議の湯」なんです。天候や気温によって色が変わる温泉は全国的にも希少です。
個性的なのは色だけではありません。成分に含まれるアンモニアや硫黄が混ざりあった、鼻をつく独特の香りもインパクト大です。また、つるつるの感触にも驚きます。
唯一無二の魅力に、あなたもとりこになること間違いなしですよ。
【♨メモ♨】奈良田温泉 白根館
- 泉質:含硫黄―ナトリウムー塩化物泉
- 住所:山梨県南巨摩郡早川町奈良田344
- 電話:0556-48-2711
- アクセス:東京から車で中央自動車道経由、約3時間
- 🚙³₃:Google マップ
【4】気泡が弾ける山の出湯「佐野川温泉」(山梨県南部町)
次にご紹介するのは、山梨県と静岡県の県境、山梨県南部町の山奥に位置する「佐野川温泉」。1974年、川に硫黄のような匂いがする水が流れているのを発見したのが創業のきっかけとなったそうです。
山奥の一軒宿だけなので、周りは山に囲まれ静か。まさに「秘湯」と言うにふさわしいロケーションです。
実はこちらの温泉、つかるとお肌に小さな気泡が付きます!
「メタンガスや、地中のいろんなガスが混ざっているんだ。温泉は自然のものだから、(この泡の正体は)人間が計り知れないね」と、ご主人が教えてくれました。自然の奥深さを感じますね。
内湯にある約30℃の源泉槽につかって1分もすれば、気泡が手足にびっしりと付きます。泡が付いた手をなでると、プチプチと気泡が弾けて、まるでせっけんの泡を手で拭うような感覚です。
佐野川温泉は、“極上ぬる湯”としても知られています。これからのシーズン、いつまででも入っていられそうな気持ち良さです。
【♨メモ♨】佐野川温泉
- 泉質:単純硫黄泉
- 住所:山梨県南巨摩郡南部町井出3482-1
- 電話:0556-67-3216
- アクセス:東京から車で東名高速経由、約2時間30分
- 🚙³₃:Google マップ
【5】全国的にも珍しい湯巡りテーマパーク「湯の小屋温泉 源泉掛流しの湯めぐりテーマパーク 龍洞」(群馬県みなかみ町)
次の秘湯は、群馬県の水上温泉郷の最奥に位置する「湯の小屋温泉」にあります。
知名度こそ高くはありませんが、夏場はオートキャンプも楽しめる「ならまた湖」や紅葉の名所「照葉峡」など、自然の見どころが多い温泉地です。
そんな野趣あふれるロケーションにあり、18種類もの温泉を貸し切りで楽しめるのが「源泉掛流しの湯めぐりテーマパーク 龍洞」です。
18種類の温泉の中から、今回は自然と一体化した人気の2湯をご紹介します。
まずは、露天風呂「川龍」。木の根沢川を間近に見ながらお湯につかれる絶景温泉で、10人ぐらい余裕で入れる広さです。1人から貸し切りで使えるなんて、ありえないほどぜいたくです。
もう一つは、木の根沢川に一番近い露天風呂「音龍」。川のせせらぎを聞きながらお湯につかると自然と肩の力が抜け、心身ともにリラックスできます。
18種類のお風呂を巡るスタンプラリーもできるので、コンプリートしてみてはいかがでしょうか。お子さん連れも楽しめます。
【♨メモ♨】源泉掛流しの湯めぐりテーマパーク 龍洞
- 泉質:単純温泉
- 住所:群馬県利根郡みなかみ町藤原6192
- 電話:0278-75-2086
- アクセス:東京から車で関越自動車道経由、約2時間50分
- 🚙³₃:Google マップ
【6】冷え性にイチオシ! 東京から一番近い炭酸泉の宿「下仁田温泉 清流荘」(群馬県下仁田町)
次は全国的にも希少な炭酸泉を、都内から車でわずか2時間の距離で味わえる穴場の宿です。その秘湯は「下仁田温泉 清流荘」。
山に囲まれた約2万平方メートルという広大な敷地に建つ一軒宿で、庭園、自家農園、遊歩道、猪鹿牧場などもあります。
下仁田温泉は、村人が川辺で傷ついたイノシシが湯治している様子を発見したことが始まりと伝えられています。
炭酸泉に含まれる二酸化炭素は、末梢血管を拡張する作用があり、血流を良くするため、切り傷や冷え性などにも良いとされています。イノシシの嗅覚は間違ってないようですね!
日帰り専用の露天風呂では、源泉13.7℃の非加熱浴槽と約40℃の加温浴槽があり、交互浴を楽しめます。炭酸泉は温めると気化してしまうので、源泉槽があるのはうれしいですね。
川のせせらぎを聞きながら、とろみのある湯につかると何とも幸せな気分になりますよ。
【♨メモ♨】下仁田温泉 清流荘
- 泉質:含二酸化炭素―カルシウム・ナトリウムー炭酸水素塩冷鉱泉
- 住所:群馬県甘楽郡下仁田町吉崎769
- 電話:0274-82-3077
- アクセス:東京から車で関越自動車道経由、約2時間
- 🚙³₃:Google マップ
【7】美人の湯×パワースポットに癒やされる「濃溝温泉 千寿の湯」(千葉県君津市)
房総半島のほぼ真ん中、千葉県君津市にある秘湯「濃溝(のうみぞ)温泉 千寿の湯」。山の裾野から自噴する鉱泉を、温める以外一切手を加えず、かけ流しで楽しめる貴重な温泉です。
植物由来の有機物を含むモール泉で、重曹成分も含むため、「美人の湯」と評判です。アトピーで悩む方が常連さんとして通うことも多いのだそう。
美人の湯でお肌をいたわったら、ぜひ行っていただきたい場所があります。温泉のある「清水渓流公園」の入口から、緑いっぱいの散策路を歩くこと10分……。
人気のパワースポット「亀岩の洞窟」があります。3月と9月のお彼岸前後には、洞窟に差し込んだ朝日が水面に反射し“ハート型”に見えると、SNSで話題となったスポットです。
公園内は新緑・蛍・紅葉と四季折々の自然を楽しめるので、3月と9月以外でも、十分に満喫できます。美人の湯×幻想的な自然の風景に癒やされてください。
【♨メモ♨】濃溝温泉 千寿の湯
- 泉質:温泉法の温泉(メタけい酸、重炭酸そうだ含有)
- 住所:千葉県君津市笹1954-17
- 電話:0439-39-3791
- アクセス:東京から車で東京湾アクアライン経由、約1時間20分
- 🚙³₃:Google マップ
【8】トロトロの湯が湧く丹沢の隠れ宿「かぶと湯温泉 山水楼」(神奈川県厚木市)
丹沢山系の東麓、七沢の自然に佇む一軒宿「かぶと湯温泉 山水楼」は、“関東から一番近い秘湯”と言われています。
山の中、煙突から煙をあげるレトロな建物を見ると、ここが首都圏近郊だということを忘れてしまう秘境感です。
湧出のきっかけは、関東大震災のとき(1923年)。田んぼの中にあるかぶとの形をした岩の麓から温泉が自噴したそうです。
山水楼が開業した1946年から現在まで機械での掘削は行わず、自然湧出のまま温めて浴槽へ注いでいるのだそう。pH9.7のアルカリ性で、化粧水のようなトロトロとした肌ざわりが気持ち良く、心と体を癒やしてくれます。
露天風呂からは渓流が間近に見渡せ、森林浴も楽しめます。温まった体に涼しい風が吹くと至福のひととき。
カランやシャワーも源泉が使用されているので、体を洗うのも楽しみになりますよ。
【♨メモ♨】かぶと湯温泉 山水楼
- 泉質:温泉法の温泉(メタけい酸、メタほう酸含有)
- 住所:神奈川県厚木市七沢2062
- 電話:046-248-0025
- アクセス:東京から車で東名高速経由、約1時間
- 🚙³₃:Google マップ
【9】豊富な「湯」が湧く元小学校「祢宜ノ畑温泉 やまびこ荘」(静岡県西伊豆町)
次は圧巻の湯量を誇る秘湯です。西伊豆・堂ヶ島と松崎の中間地点を流れる仁科川沿いに建つ一軒宿「祢宜ノ畑(ねぎのはた)温泉 やまびこ荘」。
1973年に廃校となった小学校の木造校舎を地元の希望でそのまま残し、現在は青少年の宿泊施設(日帰り入浴も可)として開放しています。
館内は階段や教室など小学校だった頃の面影を色濃く残しており、何だか懐かしい雰囲気!
やまびこ荘の魅力は、その湯量にあります。
裏山にある源泉から「やまびこ荘」だけでなく、周辺の各家庭にも温泉が引かれていますが、湯船は常に新鮮な湯であふれかえっています。39℃の体温より少し高めの絶妙な温度も心地良いです。
お風呂だけでは湯が余るので、併設の25mプールにも注がれているのには驚きです。通称“でっかい露天風呂”。私の子どもたちは、熱い温泉は苦手ですが、温泉プールでは大はしゃぎでした。
バーべキューができ、近くに昆虫の聖地“クヌギ林”もあるので、お子さん連れにはうれしいですね!
【♨メモ♨】やまびこ荘
- 泉質:カルシウムー硫酸塩泉
- 住所:静岡県賀茂郡西伊豆町大沢里150
- 電話:0558-58-7153
- アクセス:東京から車で東名高速経由、約3時間
- 🚙³₃:Google マップ
【10】自然を五感で味わう湯治処「大澤温泉 野天風呂 山の家」(静岡県松崎町)
大澤温泉は、1764年ごろ、川沿いに湯けむりが立つのが発見され、地域住民のお風呂として親しまれてきたのが始まりです。
古い木造の橋を渡ると、見えてくる築80年以上の木造建築が「山の家」。1953年に湯治処として開業、男女別の露天風呂と貸し切り風呂を楽しめます。
大澤温泉の魅力を語るのに、自然の要素は欠かせません。周りは木立に包まれ、土の香りや風の音なども五感で味わうことができ、心身ともにリラックスできます。まさに、保養にはうってつけの秘湯なんです。
湯船の底から、“美肌の湯”といわれる46℃の硫酸塩泉がボコボコと自噴しています。空気に触れることなく、大地から湧き出たばかりの源泉につかれるので、いつ行っても鮮度バツグンです。
【♨メモ♨】大澤温泉 野天風呂 山の家
- 泉質:カルシウム・ナトリウムー硫酸塩泉
- 住所:静岡県賀茂郡松崎町大澤川之本445番地の4
- 電話:0558-43-0217
- アクセス:東京から車で東名高速経由、約3時間
- 🚙³₃:Google マップ
秘湯を楽しむためのヒント
最後に秘湯をもっと楽しんでもらうためのヒントをご紹介します。
- 秘湯ドライブの計画は入念に
実は温泉は「注ぎたて」が最も新鮮です。Google マップで目的地までの所要時間を調べたら、オープン時間から逆算して早めの到着を目指しましょう。
車にタオルを2~3枚積んでおくと、“はしご湯”も楽しめ便利です。
秘湯巡りの計画を立てるときに、道の駅などを事前にGoogle マップに登録しておくと、地元の食材を味わう楽しみが増えます。
- 秘湯では五感で楽しむ
木々の緑、川のせせらぎなど、自然を五感で楽しみましょう。温泉での何も考えない時間は、心身のバランスを整えてくれます。そして、お風呂では地元の人とのふれあいを楽しみましょう。
- 秘湯に入ったら肌をこすらないで
「美人泉質」と呼ばれるアルカリ性単純温泉・硫黄泉・硫酸塩泉・炭酸水素塩泉などの泉質は、つかるだけで古い角質や皮脂を取ってくれます。体を洗いたいときは、タオルでこすらず、優しく手で洗いましょう。
車で少し遠方へ出かけ、温泉だけでなく、その土地ならではの自然・食文化・ふれあいを通して元気になる。「秘湯」は現代湯治の理想だと思っています!
秘湯の魅力、皆さんにもぜひ感じてほしいです。
編集:はてな編集部