家族が増える、生活環境が変わるなどのタイミングで、車の購入を考える方は少なくないのではないでしょうか。ただ、初めて車を購入する方にとって、「車を買った後にどれくらいのお金がかかるのか」をイメージするのは難しいと思います。
今回は「維持費編」。前回の「購入費編」と同じ3家族をモデルケースとして、「軽スーパーハイトワゴン」「ミニバン」「ミドルSUV」の3車種ごとにかかる維持費用の目安を紹介します。駐車場やガソリン代、メンテナンス費用、自動車保険料などを合わせた3年間の総額も分かります。
予算や家族のライフスタイルに合った車を購入するため、ぜひ「購入費編」と一緒に読んで参考にしてみてください。
【監修/アドバイザー】
宇野源一さん:大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。FP視点でのカーライフを提案することが得意。
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- ブログ:げんげんのウサ小屋
3組のモデルケースを紹介
今回はモデルケースとして3組を取り上げます。それぞれの家族の購入車種、居住環境、運転状況を記載しているので、皆さんの状況と近い家族を見つけて、車を買った後にかかる車の維持費をイメージしてみましょう。
【モデルA】購入車種「軽スーパーハイトワゴン」(燃費:23.9km/L)
家族構成:28才前後の夫婦+子ども1人(1才)
居住環境:都内、駐車場付きマンション
運転頻度:通院やレジャーのために使用。走行距離は月に300km
【モデルB】購入車種「ミニバン」(燃費:23.4km/L)
家族構成:32才前後の夫婦+子ども2人(1才と3才)
居住環境:都内、駐車場付きマンション
運転頻度:毎日の買い物やお出かけに使用。走行距離は月に600km
【モデルC】購入車種「ミドルSUV」(燃費:20.6km/L)
家族構成:40才前後の夫婦+子ども2人(6才と8才)
居住環境:都内、駐車場付き戸建て
運転頻度:平日の買い物や送り迎えに加えて、週末はアウトドアの趣味を楽しむために遠出する。走行距離は月に900km
結論:それぞれのケースでかかる3年間の維持費はこれだ!
モデルA/B/Cそれぞれで年間の維持費はどれくらいかかるか想像がつきますか? 3年間でかかるメンテナンス費用や保険料、駐車場代やガソリン代などの維持費を以下の表にまとめました。
なお、こちらの図は新車購入を前提としたものです。それぞれの項目の説明については後ほど詳しく説明していきますね。
車の維持にかかる諸経費は?
それでは、車の維持にかかる諸経費を見ていきましょう。購入を検討している車のスペック、駐車予定のスペースなどを確認して、全体の価格感をイメージしてみてください。
【1】駐車場代
モデルCの家族のように駐車場付き戸建てではない物件に住んでいる場合、駐車場を借りる費用を維持費として考える必要があります。
今回のモデルA/Bの家族の場合は都内のマンション敷地内にある駐車場を借りることを想定していますが、マンションの駐車場代は立地条件などによって大きく変動します。場所によっては月額1〜2万円に収まるかもしれませんが、都心部であれば月額3万円程度かかる可能性もあります(※更新時に賃料の1ヵ月分がかかる可能性も)。
なお、駐車場は購入する車のナンバー登録が完了する前に契約しておく必要があります。最近は新車の納期が長期化しているため後回しにしてしまいがちですが、納車直前に「駐車場がない!」となってしまうのは避けたいところです。駐車場代が数ヵ月分無駄になってしまうリスクもありますが、前もって契約しましょう。
駐車場は一度借りたら変更することが少ないので、慎重に契約先を選ぶようにしましょう。定期的に空き駐車場の情報収集をするのもおすすめですよ。
また、マンションの場合は駐車場の種類によっても駐車場代が変わります。ここでは、「屋根あり駐車場」「平置き駐車場」「機械式駐車場」それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
- 屋根あり駐車場
- メリット:車が汚れにくく、塗装の劣化を防ぎやすい
- デメリット:駐車料金が割高になる傾向がある
- 平置き駐車場
- メリット:駐車スペースを目一杯使うことができるので、多岐にわたるサイズの車を停めることが可能
- デメリット:ドアの開閉時など、前後左右の車に気を付ける必要がある。他人に傷つけられてしまうリスクがある
- 機械式駐車場
- メリット:自分専用の車室に車を入れられるので、他人に傷をつけられる心配がない。いたずらされるリスクも低い
- デメリット:駐車場によっては、全高・全幅・全長にサイズ制限がある場合がある。車に乗り込むまでに時間がかかる
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【2】ガソリン代
ガソリンは車に乗った分だけ消費します。例えばレギュラーガソリンが1リットル当たり174円(※2024年5月現在)、毎月1,000km走行した場合の燃費別にかかる費用例は以下の通りです。
- 燃費が1リットル当たり10kmの場合:1,000km÷10km/L×174円=17,400円
- 燃費が1リットル当たり15kmの場合:1,000km÷15km/L×174円=11,600円
- 燃費が1リットル当たり30kmの場合:1,000km÷30km/L×174円=5,800円
ガソリン代で重要になるのは、なんと言っても「燃費」です。燃費はガソリン1リットルで車が何km走行できるのかの数値で、各自動車のHPやカタログで「○○km/L」と表示されています。数字が大きいほど燃費が良い=ガソリン代が安くなるんですよ!
また、毎月の走行距離は車の使い方によって変わります。
- 毎日の送り迎えで片道5km程度の走行がメインの場合:月に200kmくらい
- 平日はめったに使わないけれど毎週末ちょっと遠くにお出かけする場合:月に500kmくらい
- 通勤で片道25kmを週5日乗る場合:月に1,000kmくらい
今回のガソリン代はモデルAを月に300km走行、モデルBを月に600km走行、モデルCを月に900km走行として試算しました。
どれくらいの燃費なのか、どれくらい車に乗るのかによってガソリン代が変わるので、シミュレーションしてみると良いでしょう。
ちなみに電気自動車(EV)の場合はガソリン代ではなく電気代がかかります。こちらも走行距離や車を使う条件によって金額が変わります。「燃費」ではなく「電費(でんぴ)」と呼ばれ、「○○km/kWh」と表示されます。燃費と同様に数字が大きいほど性能が良いことになります。
EVの場合、電費は車の走らせ方だけでなく、車内でエアコンを使っているかどうかでも大きく変わってきます。ご家庭と同じで省エネ意識を持って車に乗る必要があるんです!👆3年間でかかる維持費総額に戻る
【3】自動車保険料
自動車で相手にケガを負わせてしまった場合に、一定の金額が被害者に支払われる自賠責保険(強制保険)は、新車購入の場合、車検の有効期間分(36ヵ月)+1ヵ月=37ヵ月間加入することが一般的です。
新車購入時に自賠責保険に加入した場合、購入費用に37ヵ月分の自動車保険料が計上されていますので、3年間は追加費用が発生しません。もちろん、車検を更新する際には自賠責保険料の更新も必要となりますので、ご注意ください(今回のケースでは、車検代に含んでいます) 。
自動車保険(任意保険)は、種類によっては車の事故が起きた際、相手だけではなく運転者自身や同乗者、自分の車までも補償することができます。任意の保険のため、加入は義務付けられていませんが、運転事故によるリスクを軽減させるために、多くの人が自動車保険に加入しています。
車種や保険の条件によって金額は変動します。保険の内容は更新のたびに定期的に見直しましょう。
更新のときは「等級」が自動車保険料に影響してきます。個人の場合は1~20まで20段階の等級があって、等級の数字が大きいほど保険料の割引率は高くなり、数字が小さいほど割引率は低くなります。
新車を買って初めて自動車保険を契約する際は、新規6等級(6S)からのスタート。等級は1年間無事故だと翌年に一つ上がり、保険金支払対象事故があると下がる仕組みになっていますよ。👆3年間でかかる維持費総額に戻る
【4】車検代
乗用車の場合、新車購入から3年後に車検を行う必要があり、最初の車検以降は2年ごとに行わなければなりません。車検にかかる費用は大きく分けると「法定費用」と「その他費用」に分かれます。
法定費用は、車の重さによって変わる自動車重量税、強制加入の自賠責保険料、車検の更新手続きに必要な印紙代です。
その他費用としてかかるのが、点検整備費用、部品の交換が発生した場合にかかる部品代と工賃、車検をお店に頼む時には代行手数料がかかります。
車検費用のおおまかな目安は以下の通りです。
- 軽スーパーハイトワゴン:10万円程度
- ミニバン::12万円程度
- ミドルSUV::14万円程度
車検費用は、依頼する場所(ディーラー、整備工場ほか)や車の使用状況による消耗度合いによって変わってきます。
数年に1回大きな出費が発生することを把握しておき、車検に備えてあらかじめ貯金をしておくことをおすすめします。
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【5】メンテナンス費用
メンテナンス費用は車を所有している間は必ずかかってきます。車の使い方によって費用やメンテナンスのタイミングは変わりますが、概ね以下のようなイメージをしておくと良いでしょう。
(1)修理費用
車が故障したときや、ぶつけてしまったときなどにかかります。新車を購入した場合は、自然故障にかかる修理費はメーカー保証で賄えます(一定の条件があるので、保証書を確認しましょう)。こすってしまったときなどの修理費用は内容によって大きく変わりますが、おおむね数万円〜20万円程度を想定しておきましょう。
メーカーの新車保証は国産車の場合、各自動車メーカー共通で「一般保証」と「特別保証」の2種類があります。
一般保証はパワーウインドウやエアコンなどの電装部品に適用されるもので、保証期間は「新車登録日から3年間」もしくは「走行距離60,000km」の早い方。特別保証はエンジン機構、ブレーキ機構、シートベルト機構など安全を守る上で重要な部品などに適用され、保証期間は「新車登録日から5年間」もしくは「走行距離100,000km」の早い方と手厚くなっています。(2)洗車
車の基本的なメンテナンスの一つです。車の保管状況などによって頻度は変わってきますが、最低でも1ヵ月に1回は行うようにしましょう。洗車にかかる費用は、洗車機なら1回500円程度、手洗い洗車を頼むと3,000〜5,000円くらいかかります。自分自身で洗う場合は、洗車用品を買い揃える必要があります。
(3)オイル交換
エンジンを搭載している車なら定期的な交換が必要です。街乗りがメインであれば半年に1回はオイル交換しましょう。交換にかかる費用は、1回当たり約4,000〜7,000円を想定しておきましょう。
(4)タイヤ交換
走行距離によって、タイヤ交換の時期は変わります。走行距離が少ない場合でも、5年に一度はタイヤを交換することをおすすめします。タイヤの交換費用は車種や選ぶタイヤの銘柄によって大きく変わってきますが、軽スーパーハイトワゴンなら8万円、ミニバンは13万円、SUVは20万円くらいを想定しておくと良いでしょう。
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車の維持費を抑えるには?
最後に、宇野さんに「車の維持費を抑える5つのポイント」を教えてもらいました。
【1】「急」のつく動作をしない
急発進や急ブレーキは車の寿命を縮めるだけでなく、ブレーキパッドなどの消耗品の劣化速度を早めたり燃費の低下を招いたりします。時間に追われているときなどは急な動作をしがちですが、慎重な運転を心がけましょう。
【2】点検整備の費用を比較しよう
車の点検整備にかかる費用は自動車販売店や自動車整備工場、カー用品店、ガソリンスタンドなどお店によって変わります。手間ではありますが複数で見積もりをとって比較検討することが大切です。
繰り返しになりますが、駐車場は長期的に使うことになるので、慎重に契約先を選ぶようにしましょう。【3】カー用品も比較して購入しよう
洗車用品や芳香剤などカー用品を扱っているお店は、カー用品店やホームセンター、インターネット通販などたくさんの選択肢があります。こちらも複数の店舗で商品を比較して、適切な場所で購入しましょう。
【4】ガソリンはクーポンを使いこなそう
ガソリンスタンドによっては店舗独自のクーポンを発行していて、ガソリンを安く入れられるケースがあります。クーポンはアプリや公式SNSなどから取得可能です。クーポンの使用でガソリンが10円も安くなることもあるので、活用しない手はありません。
【5】車の状態をチェックしよう
運行前点検で自動車の状態を必ずチェックしましょう。自分自身で車のお手入れをすることで、車の状態を確かめることができるだけではなく、車への愛着も湧いてきて一石二鳥ですよ。
「購入費編」「維持費編」で費用全体のイメージをつかめましたか? 車は購入費用だけではなく、買った後の維持費も想定しておかないと後悔することがあります。
マイカーは人生の中で、大きな買い物の一つ。車の費用について調べていく中で、もし分からないことが出てきたら、ディーラーの担当者に聞いてみましょう。納得のいく車選びができることを願っています。
車のコストや選び方を知ろう!
イラスト:アベナオミ
編集:はてな編集部