ドライブに出かけて、今日は何を食べましょう? ラーメン? ハンバーグ? それもいいけど、せっかく車で見知らぬ土地に行くのだから、その土地の「ご当地回転寿司」なんていかがでしょうか。なにしろお寿司は大人も子どもも大好きなメニュー。それでいて、土地土地のネタも楽しめるとあって、旅情もそそる。家族ドライブにぴったりなご馳走だと思いませんか?
でも、どこのお店が美味しいの?
こんな疑問を投げかけたのは、回転寿司評論家の米川伸生さんです。
世にも稀な肩書きで活動する米川さんは、そこに回転寿司店があればとにかく自分の足で行ってみる、というスタンスで、全国津々浦々の回転寿司店を巡ることのべ5,000店。訪れるのは、個性溢れる地元密着型の回転寿司店で、それこそ北は青森から南は鹿児島まで、魅力的な回転寿司を求めて自らハンドルを握るのだから、絶品「ご当地回転寿司」をおすすめしてもらう上で、これ以上ない心強い存在。
米川さん厳選のお店を、ぜひ、皆さんのドライブプランの一つとして、ご検討あれ!
【お話を聞いた人】
米川伸生さん:1970年、大阪「元禄寿司」で回転寿司と出合い、その魅力に取り憑かれる。以降、全国各地のお店巡りにいそしむように。1990年代から回転寿司評論家として活動し、「回転寿司はアミューズメントパークだ!」を信条に、メディア出演、書籍執筆などを通じ、回転寿司文化の発信に努める。現在ではブランディングや集客施策などのよろず相談を通じ、業界の支援にもあたる。
- X(Twitter):@sushiyone
「独自の取り組み」が生み出す、唯一無二のお店を楽しもう!
ーーまずは、米川さんが思う、「ご当地回転寿司」の魅力を教えてください。
米川伸生さん(以下、米川):ときに私は「四国一周7日間回転寿司巡礼ツアー」や「東北一周回転寿司と温泉の10日間」のようにテーマを決め、愛車とともに全国各地を駆け巡りますが、そこまでして訪れる価値があるというのが、地元密着型回転寿司店(グルメ回転寿司)の面白いところです。各地の「ご当地回転寿司」は、大手チェーン店ではできない独自の取り組みによって、唯一無二の店舗づくりに励んでいて、それが店の個性となっているからです。
回転寿司は「どこで食べてもさして変わらない」と思われがちですが、実はそれぞれの店舗ごとに個性やご当地性が楽しめます。職人さんが朝獲れの鮮魚を捌いて提供しているのは当たり前。他にも驚きのサービスやその店でしか味わえない逸品などがあるというのが、私を惹きつけてやまない魅力です。ご当地回転寿司とは、いうなれば小さなアミューズメントパークのように、ワクワクさせてくれる存在なのです。
ーーどんなお店を教えてくださるのか、楽しみです!
米川:今回ご紹介するのは、どこもユニークな取り組みに努めるお店ばかり。東京、名古屋、大阪を起点にお店を選んでいますが、複数エリアにまたがり多店舗展開しているローカルチェーンもご紹介しますので、「くるまも」読者の皆さんのお住まいにほど近いお店が見つかるかもしれません。1週間とはいわないまでも頑張れば日帰り、余裕を持って1泊2日の回転寿司の旅なんてのもやってみたら楽しいものです。すべての店をコンプリートすればあなたもその日から回転寿司評論家ですよ!
【横浜〜宇都宮】関東地方のわざわざ行きたい回転寿司×4
横浜ドライブは絶品マグロと仕入れ力抜群の「まぐろ問屋 三浦三崎港 横浜ポルタ店」へ!
ーーまずは、関東地方のお店を教えてください。
米川:回転寿司に一番求められているのは、言わずもがな「安くて旨い」でしょう。値段と味のバランス、いわゆるコストパフォーマンスの評価は人それぞれかもしれませんが、評論家として「この価格でこの味わいはすごい!」と自信を持ってご紹介したいのが、「まぐろ問屋 三浦三崎港」です。ここでご紹介するのは、ドライブに最高な海風薫る横浜エリアにある「横浜ポルタ店」です。
ーーこちらのお店は、どこがユニークなのでしょうか?
米川:回転寿司ではめずらしい、総大将の力が遺憾なく発揮されている店、ということがポイントです。
関東を中心に10店舗を展開する「まぐろ問屋グループ 三浦三崎港」は、その名のとおり三浦三崎にあるマグロ問屋が直営していて、それだけに、マグロの質、メニュー数は全国トップクラスです。そして、自慢のマグロに加え、毎日市場で仕入れる鮮魚の質にも定評があります。
こうした「三浦三崎港」の上質なネタと手頃な価格は、同店を取り仕切る総大将・川股竜二氏が、毎朝3時に横浜中央市場に入り、市場が終わる10時過ぎまでじっくりと品定めをしてお値打ちの魚を送っているからこそ実現します。お買い得の魚や供給過多の魚を交渉で安く仕入れるのはもちろん、ときには行き場を失った魚たちを引き取るのも大事な役目です。この道40年を超えるキャリアがあり、市場関係者からの信頼も厚く、Win Winな関係性が築かれているからこそ、川股氏にはお得でいい魚がついて回ってくる。それが店で還元されるから、私たちにもお得でいいネタが回ってくるという寸法です。
ーー仕入れの力こそが、同店の魅力になっているのですね!
米川:30年ほど前は回転寿司関係者が市場に魚を買いに行っても売ってもらえない、というのが当たり前の時代でしたが、そんな時代から足繁く市場に通い続けたのが川股氏であり、その努力が実を結び、市場に回転寿司の門戸が開いた、という歴史があるのです。まさに業界のレジェンドと呼ぶに相応しい人物が取り仕切っている魅力的なお店なのです。
と、そんな同店の取り組みを思い浮かべながら食べていただきたいのが、市場で仕入れた魚が並ぶ「白身三点盛り」(価格は魚種によって変動)です。川股氏の情報網は全国多岐にわたり、良い魚、お買い得な魚の情報は全国から日々届くからこそ、こうした一皿が提供できるんです。
そして、自慢のマグロを味わい尽くすなら「まぐろの恵」(1,650円税込)がおすすめ。マグロ問屋の名にかけて妥協はしないという絶対の自信を感じさせる一皿です。
本マグロの大トロや赤身といった定番の人気ネタ以外に、「これは!」と思わせられるのが「塩漬けまぐろ」。もちもちっとした食感も絶妙ならば、塩漬けで凝縮されたマグロの旨味が、口の中で弾け出す時の味わいもたまりません。同店の追求するマグロの奥深さに驚かされる一貫です。
さらに、店の一番人気「まぐろとろひっかき軍艦」(649円税込)も間違いなしの味わいです。
こちらは本マグロの骨からトロ身を手作業で掻き出して作っているという凝った一品で、口いっぱいに広がる甘味にクラッとするほど。この部位をこれほど集めた軍艦はちょっと見たことがありません。いわゆる「回転寿司のネギトロ」とはまったく違う本物の味がここにあります。
ーーもう既に「お寿司の口」になっています……。
米川:同店の魅力は、味だけではありません。不定期開催ですが、ぜひとも堪能していただきたいのが、川股竜二氏による「まぐろ解体ショー」です。
仕事柄、こうしたショーは数百回と見ていますが、川股氏のそれは完成度がすごい。ひたすら飛び出す昭和ギャグの洪水は何度見ても飽きないレベルで、氏の陽気なキャラクターが生き生きと輝くその様子は、ただの「解体作業」とは一線を画す、まさにショーと呼ぶべき面白さです。
そしてなにより氏が振るうマグロ包丁の迫力と切れ味たるや。スパッと一刀両断で、マグロを切り落とす爽快さは他では見ることができない、深い深い経験を感じさせる仕事です。面白さと迫力を兼ね備えた解体ショーの真髄が堪能できるのは、年間100回ものショーをこなす川股竜二氏を擁する「まぐろ問屋 三浦三崎港」だけでしょう。(開催日時はホームページを確認のこと)
ーー「人の魅力」が、同店を素晴らしいお店にしているのですね。
米川:なかなか人の素顔が見えづらい回転寿司業界にあって、ここまで商品やサービスに「店の顔」が浮かび上がってくる店はなかなかありません。「マグロと鮮魚と川股氏」という三位一体を味わいに、横浜まで出かけてみてほしいです。
住所:神奈川県横浜市西区高島2-16-B1 横浜ポルタ内
電話:045-620-6123
営業時間:11:00~23:00
定休日:施設に準じる
キッズメニュー:「山盛りコーン軍艦」「ツナサラダ軍艦」など、子ども向けメニューあり
キッズ向け設備:子ども用イスあり
駐車場:あり (横浜ポルタ駐車場を利用)
https://neo-emotion.jp/kaitensushi/
小田原漁港から毎日直送!スーパー鮮度の秘密は“競り”にあり!「独楽寿司 大和本店」
ーー続いても神奈川のお店ですね。
米川:横浜から保土ヶ谷バイパスを北上していくと、ほどなく「独楽寿司」の楽しげな看板が見えてきます。
こちら、関東屈指の鮮度自慢の回転寿司店、と自信を持っておすすめできるお店で、回転寿司業界では非常にめずらしい漁港の買参権を有しているのが大きな特徴です。買参権とは市場の競りに直接参加できる権利で、仲買人を介さないため中間マージンを抑えられるとあって、コスパが求められる回転寿司では非常に大きなメリットとなるのです。
メリットは価格面だけにあらず、です。買参権があるからこそ、「独楽寿司」のネタは正真正銘の漁港直送。「朝獲れ」という売り文句と差別化するべく、あえて「今朝獲れ」という表現を用いているほど、鮮度に自信をみなぎらせます。
なお、コロナ禍で飲食店や旅館などが軒並み店を閉めていた時には漁業関係者たちの力になるべく、小田原港に揚がったアジをすべて買っていた、という業界への献身もあり、関係者から一目置かれる存在でもあるのです。
ーーなるほど……。ではこちらのお店でぜひ試したい一皿とは?
米川:このアジこそが「独楽寿司」の食べるべき一皿です。回転寿司で鮮度に対するこだわりが一番分かる魚がアジなんです。高級寿司店の場合、アジは酢〆にされることも少なくありませんが、回転寿司の場合は上質なアジをいかに鮮度抜群で提供するかが腕の見せ所。酢〆のアジもたまらなく美味ですが、同店の角が立ったアジのコリッとした身もまた格別ですよ。下の「天然地あじ」(330円税込)で「今朝獲れ」の味わいをじっくりと堪能していただきたい。
他にも、小田原漁港「今朝獲れ」が3種類盛られた「小田原三点盛り」(価格は内容によって変動)や、回転寿司では極めてめずらしい、活穴子を店内で捌いて提供する「活〆煮穴子」(385円税込)などは何も言わずにとにかく食べていただきたいメニューです。ただ、私は「独楽寿司」のもう一つの魅力にいつも負けてしまいます。
ーー「もう一つの魅力」とは?
米川:それはずばり、「型破りな独楽寿司」です。まずネーミングにたまらなく惹かれるのが「具だくさん極みの巻物」シリーズ。下の「極み鉄火巻」(385円税込)をご覧ください。
こちら、ご覧のとおり、ほとんどが具、というとんでもない巻物。巻物のなかはほとんどがマグロという容姿に見ているだけでテンションが上がってしまいます。
そしてこれまた型破りなのが「納豆巻天ぷら」(220円税込)。
ちょっと想像してみてください。納豆を温めた時のあの存在感を。熱々の巻物の天ぷらをかじると鼻腔をくすぐる納豆の風味を。これほど大胆でやみつきになる寿司はありません。揚げ物と酢飯のコンビネーションと、そこに納豆が加わったその破壊力たるや、です。
ーーこうしたネタは、確かに他のお店ではなかなかいただけなさそうですね。
米川:鮮度へのこだわりと回転寿司ならではのダイナミックさが両立した、近所にあったらうれしい回転寿司店の筆頭格といっていいお店です。保土ヶ谷バイパスから八王子バイパスへ抜ける国道16号線沿いには橋本店もあるので、そちらもおすすめですよ。
住所:神奈川県大和市桜森2-26-13
電話:046-261-1114
営業時間:11:30〜22:00
定休日:無休
キッズメニュー:子どもに人気の握りとデザートをセットにした「お子様にぎり」など
キッズ向け設備:子ども用イス、食器あり
駐車場:あり
https://komasushi.com/
群馬愛を寿司で表現する創意工夫!「群馬を握る、まぐろ問屋いちもん 伊勢崎本店」
ーー続いては、いよいよ神奈川を飛び出し、群馬ですね。
米川:相模原から圏央道に入り、関越道経由で伊勢崎までまっしぐら。圏央道ができて北関東が本当に近くなったと実感できます。そして、ここまで車を走らせてでも訪れてもらいたいのが「群馬を握る、まぐろ問屋いちもん 伊勢崎本店」です。
「ご当地」の回転寿司店として、私が真っ先に思い浮かべるのがこちらのお店です。これまでご当地回転寿司とは地元の食材を使ったり、郷土料理をイメージした寿司のことだとばかり思い込んでいましたが、同店の寿司を見ると、その思いが浅はかであることに気付かされます。例えばこちらの「たむらや握り」(460円税込)を見てください。
一見すると何の変哲もない真鯛の寿司のように見えますが、寿司ダネと酢飯の間に大根の味噌漬けがはさんであります。この味噌漬けは群馬では有名な老舗漬物店「たむらや」オリジナルの漬物で、シャキッとした食感がたまらないと評判の一品です。しかも、ただ漬物をはさんだ、というわけではなく、ポイントはこの寿司を開発するにあたり、企業と共に二人三脚で作り上げた、というところにあります。
これが「いちもん」の素晴らしいところ。地元で愛される企業と共同開発した寿司こそが、真のご当地回転寿司ではないかと思い知らされます。
ーー「群馬を握る」という言葉どおりのこだわりですね。これはぜひ食べてみたいです!
米川:これだけじゃありませんよ。さらに、群馬愛に満ちた地元企業コラボ寿司を一皿で楽しめるのが「上州かかあ天下」(1,200円税込)です。
群馬産最高級のニジマス「ギンヒカリ」、赤城牛みすじの炙り、国内生産量第2位を誇るうずらを使ったとろろ軍艦、「たむらや」の漬物を使った創作寿司など、まさに群馬を握った一皿で、この店に来たら真っ先に食べていただきたい。これこそが「いちもん」なんだ!と実感できるはずです。
もともとはマグロ問屋が経営していたこともあって、マグロ寿司も豊富で人気です。また、金沢まいもん寿司のグループ店ということもあって、北陸の寿司もおすすめです。しかし、ぜひ試していただきたいのが「究極イカ納豆」(460円税込)。創業60年を迎える老舗納豆メーカー「下仁田納豆」渾身の大粒黒豆納豆を使った、見た目のインパクト絶大な一品です。
イカ納豆ファンならずとも試すべき麗しの一貫だと思いませんか。果たしてこれを超えるイカ納豆軍艦が回転寿司界に存在するのか!とさえ感じさせられます。うずらも実にいい味を出しています。
ーーここまで、地元への愛を感じさせるお店はなかなかありませんね……。
米川:多くの業界で機械化、自動化が進み、入店から退店まで一度も人と触れ合うことがない、という体験も増えてきています。気軽に食事をするという観点に絞れば、それもやむなしです。しかし、回転寿司店が家族団らんの食事の場として利用されるようになったいま、人との触れ合いやサービスを大切にするお店こそ、家族みんなが楽しめる場所として、ぜひ活用していただきたいところです。
そして、同店を訪れたら、ぜひメニューブックに目を通していただきたい。同店には30ページにもわたるメニューブックがあり、すべての寿司に写真と説明がついています。それだけでなく、店の想いや群馬の人々の想いがぎっしりと詰め込まれており、商品に対する愛情がひしひしと伝わってきます。メニューブックはこちらでオンラインでも閲覧できます。海に隣接しない群馬にありながらも、全国どこのお店にも負けないご当地愛を握る、「いちもん」という回転寿司店があることを、皆さんに知っていただけたら、非常にうれしいですね!
住所:群馬県伊勢崎市連取町3280-2
電話:0270-70-4455
営業時間:平日11:00〜15:00 17:00〜21:30 土日祝11:00〜21:30
定休日:無休
キッズメニュー:子どもが自分で寿司をつくって楽しめる「たのしいおすしやさんセット」などあり
キッズ向け設備:子ども用イスあり
駐車場:あり
https://www.ichimon.com/
本格江戸前寿司の仕事を回転寿司で堪能!宇都宮「すし華亭 長岡店」
ーー関東最後のお店は、群馬のお隣、栃木ですね。
米川:前橋から北関東自動車道に入り、東北自動車道を行くと1時間ちょっとで宇都宮に到着します。
宇都宮は餃子だけにあらず!と教えてくれるのが、この地の人気寿司店が経営する「すし華亭」です。このお店に来たら、ぜひ「職人さんの仕事」に注目してみてください。
ーー「仕事」というと?
米川:近年の回転寿司職人の方々のレベル向上は目を見張るものがあり、高級寿司店の職人さんと遜色ない腕前を持っている人も少なくありません。しかし、それでも、素早さが要求される回転寿司の世界ではなかなかお目にかかれないのが、江戸前寿司の仕込みです。
全国レベルで人気の回転寿司店はどんどんとレベルが上がっており、味での差別化が難しいところにまできています。美味しいのは当たり前、といった中で、更なる美味しさを追求するとなると江戸前の仕事をする、という選択肢もあるでしょう。そして、「すし華亭」はまさに江戸前の仕事が楽しめるお店なのです。
そんな同店の江戸前へのこだわりを実感させてくれる一皿が「自家製こはだ」(418円税込)です。
ーーコハダで「職人さんの仕事」を味わえるんでしょうか?
米川:私は回転寿司でお店仕込みのコハダを見かけたら必ず食べるようにしているんです。マグロが江戸前寿司の華なら、コハダは真打ち、といわれるくらい職人の腕がものを言う寿司で、その店のこだわりが見えるネタだからです。そして、こちらの一品は、絶妙な酢加減、皮の香り、脂の旨味……いやはやこれほどきっちりと仕込まれたコハダが回転寿司でいただけるとは、と思わず絶句してしまいます。同店の丁寧な仕事へのこだわりが伝わってくるようです。
その他、お店が絶対の自信を持つマグロももちろんおすすめですが、ちょっと面白いのが「前日光和牛握りローストビーフ」(561円税込)。
肉寿司の中でも特にローストビーフの寿司は難しく、肉を切り置きしてしまうとパサパサになってしまいます。しかし、栃木のブランド和牛を使ったこの寿司にはローストビーフらしい、しっとりとした味わいと肉の力強さを感じます。いかに美味しい状態で提供するか、という基本を丁寧に実践しているかがうかがえる寿司なのです。
ーーお魚とお肉の波状攻撃で、お腹いっぱいになりそうです(笑)。
米川:そう言わず、もう一つ、宇都宮駅に程近い「宇都宮中央店」だけで提供している面白いランチをぜひ紹介させていただきたい。
こちらは、その名も「自家製ハンバーグと握りずし(5貫)のランチ」(1,850円税込)です。
宇都宮中央店の2階は系列のロール寿司とステーキを提供するレストランになっていて、そちらで人気のハンバーグと「すし華亭」の握り寿司が一体となった唯一無二の寿司ランチがいただけるんです。昼時に訪れたらほとんどの方がこのランチをオーダーしているという人気ぶりに驚かされますよ。女性グループの来店も多く、寿司と肉という魅惑のコンビの強さを思い知らされます。
ーー「職人の仕事」だけじゃない魅力があるんですね。
米川:そうです。“鮨屋”としての誇りと仕事を大事にし、丁寧な仕込みで伝統を守る一方で、新しいチャレンジにもどんどんとトライしていく革新的な面も持つ新時代の回転寿司店。「宇都宮に来たら、餃子じゃないよ!寿司だよ!」と、皆さんに声高に伝えたくなる店です。
住所:栃木県宇都宮市長岡町494-1
電話:028-600-1551
営業時間: 11:30〜15:00 17:00〜21:00
定休日:木曜
キッズメニュー:年令に合わせた寿司のサイズ調整など、子どもに合わせた対応あり
キッズ向け設備:子ども用イスあり
駐車場:あり
https://yacco-sushi.co.jp/
【名古屋〜富山】中部地方のわざわざ行きたい回転寿司×3
エンタメ回転寿司の雄!ファミリーで楽しい「廻鮮江戸前すし 魚魚丸 緑区鹿山店」
ーー関東を飛び出し、次は中部地方のお店ですね。どんなお寿司屋さんドライブを紹介してくれるのですか?
米川:私の調査による『回転寿司が熱い!都道府県ランキング』で第3位の愛知県から第4位の富山県へと北上するルートはいかがでしょう。愛知県が第3位というのは意外に思われるかもしれませんが、同県は水産会社や鮮魚店が経営する回転寿司店がひしめいていて、寿司は総じてハイレベル。なお、1位、2位は北海道と石川県が接戦を繰り広げています。
そんな本格回転寿司店がひしめく中にあって、圧倒的な人気を誇っているのが「廻鮮江戸前すし 魚魚丸(ととまる)」です。
ーーこちらのお店のポイントはどこにあるのでしょうか。
米川:ここはまさに「超エンターテインメント回転寿司店」。これほどエンタメに振り切っている回転寿司店は、私の知るかぎり全国どこにもありません。
例えば、藁焼きブースを備えたお店(「魚魚丸」全27店舗中21店舗と「金の魚魚丸 ららぽーと
みなとアクルス店」)で毎日行っている「藁焼きショー」は店内の照明を落とし、掛け声と共に威勢よく行います。その様子はまるでキャンプファイヤーです。定番の鰹に旬の魚、肉などさまざまな食材を藁焼きにするのですが、藁の薫香が寿司ダネになんともいえない風味を醸しだします。
他にも、期間限定ではありますが、超大盛りのマグロ中落ちやカマトロなどの希少部位を客同士で競り合う「とと競り」や、水槽のホタテを時間内に吊り上げたら無料になる「ホタテ釣り」、30秒間で軍艦の上にマグロの中落ちを倒れるまでいくらでものせられる「南マグロ倒れるまでチャレンジ」など、ファミリーで楽しめるイベントが盛りだくさんです。
ーーこれは、お子さんと一緒に楽しめそうなお店ですね!
米川:そうでしょう。もう一つの人気の秘密がコストパフォーマンスの高さにあります。グランドメニューの8割が300円以下、うち6割が200円以下とお手頃メニューが実に豊富なんです。それでいて、三河朝獲れの地魚が毎日直送され、職人さんが店内で捌いて握る本格グルメ回転寿司のスタイルを実現しています。このオペレーションでこの価格設定はすごいの一言。
その他、おすすめなのは、週末となると職人さんがひたすら焼き続けているほど人気の「名物焼玉子」(198円税込)。
できたて、ほくほくの出汁巻き玉子は、「揚げたて 焼きたて 握りたて」の「3たて」を信条とする「魚魚丸」の寿司を象徴するかのような一品なんです。
そして、三河地方の回転寿司店には必ずある、というご当地メニューの「穴子天ぷら」(440円税込)もぜひ注文していただきたい。
ーー天ぷらを握るんですか? これは珍しい。
米川:特大煮穴子の一本握りを見かけることは多いですが、天ぷらにしてしまうのが三河流で、揚げたての衣をまとうと、迫力が違います。ぜひこの特大穴子天ぷらで、三河といえば海老フライか、などという先入観を打ち消していただきたい。
ーーお寿司だけでなく、お店にいる時間すべてが楽しくなりそう。これはぜひご家族で訪問してもらいたいですね。
米川:「回転寿司店はアミューズメントパークである!」が私の信条ですが、「アミューズメント」をここまで実践しているのは「魚魚丸」くらいのものです。「見て面白い、やって楽しい、食べて美味しい」という3つが揃う体験型回転寿司店という新たな世界を切り拓いたお店、ぜひご家族で楽しんでみてほしいです。
住所:愛知県名古屋市緑区鹿山3-3-1
電話:052-875-3601
営業時間:平日11:00〜21:00 土日祝11:00〜22:00
定休日:無休
キッズメニュー:子どもに人気のネタをセットにした「わさび抜きお子様三貫」あり
キッズ向け設備:子ども用イスあり
駐車場:あり
https://www.comline.co.jp/totomaru/
まさかの店内活け〆!驚異の鮮度の回転寿司店「活き魚回転寿司 魚鮮 三福寺店」
ーー続いて紹介いただくのは、これまた海に接さない岐阜のお店ですね。
米川:一宮から東海北陸道に入り、高山まで。高山市街を抜けるとほどなく、お目当ての「活き魚回転寿司 魚鮮 三福寺店」に到着します。
山間の回転寿司店と侮るなかれ。ここは究極ともいえる鮮度へのこだわりを見せるとんでもないお店なのです。運営母体はホテルや飲食店に鮮魚を卸している水産会社で、毎日、名古屋中央卸売市場から鮮魚を仕入れるとともに、生きたままの魚も活魚車で運んできます。その証のように、店舗内に設けられた超巨大な水槽にはたくさんの魚が悠々と泳いでいます。
注文ごとに水槽から活魚を取り出し捌いて提供する回転寿司店は数あれど、こちらの店の場合、〆の技法に違いありです。なんとその活魚をお客さんの目の前で神経〆して提供してくれるのです。
いやはや、こんな手間のかかることをしている回転寿司店があったとは。神経〆とは魚のうま味の元となる成分の減少を防ぎ、さらに鮮度を保ち、生臭くなることを防ぐ技術ですが、いくつかのプロセスがあり、手間がかかります。活魚を捌いてすぐに提供すれば、この技法でなくともさして品質に変わりはないのでは、とも思いますが、たとえわずかでも鮮度にこだわるのが「魚鮮」の矜持であり、〆の技法が重要な味付けの一つとなっているのです。
同店の鮮度へのこだわりが実感できるのが、名物「あばれ海老握り」(660円税込)です。
この海老、運ばれてくると、なんと踊り出します。尻尾をくねくねさせたり、開いたり閉じたりと実にダンシングです。こんな元気な海老、どうやって食べればいいのだろう? と心配になるほどの鮮度ですよ。
ーー海老が光り輝いている……! お店の鮮度への“取り組み”は、目を見張るものがありますね。
米川:もう一つ、山に来たら山のもの、ということで「飛騨牛炙り」(1,980円税込)もおすすめの一品。
もちろん、牛を神経〆にしてる、なんてことはありませんが、レアな炙り加減でこれが酢飯となかなかにマッチします。回転寿司の肉寿司もここまでのレベルに、と思わずうなる一皿です。
内陸にありながらも、強烈なこだわりが作り出した圧倒的鮮度の回転寿司店。日本のど真ん中にすごい回転寿司店があったものだと、ぜひ足を運んで驚いてみてください。
住所:岐阜県高山市三福寺町3321-2
電話:0577-36-7722
営業時間:平日11:00〜14:30 17:00〜21:30 土日祝11:00〜21:30
定休日:無休
キッズメニュー:子どもに人気のネタをセットにした「お子様三種盛り」などあり
キッズ向け設備:子ども用イスあり
駐車場:あり
https://seafood-marui.co.jp/
まるごと富山湾が味わえる!北陸回転寿司の真打ち「氷見回転寿司 粋鮨 高岡店」
ーー中部地方の最後は、富山県です。
米川:東海北陸道の終点、砺波(となみ)で降りて、しばらくすると「氷見回転寿司 粋鮨(いきずし) 高岡店」へと到着します。
電車で名古屋から富山まで行くとなると4時間ほどかかりますが、車で高速を使えば約3時間。北陸の魚介を東海地方でもよく見かけるようになったのも、2008年の東海北陸道の全線開通の恩恵か、とも思えます。
とはいえ、やはり「ご当地」の寿司には代えがたい魅力があります。その魅力の一つが魚種の豊富さです。白エビやホタルイカ、氷見ブリといった北陸のメジャーな魚ならば他の地域でも流通しますが、現地であれば、もっと多くの魚が楽しめます。
そして「氷見回転寿司 粋鮨」はまさに富山の魚をこれでもかと堪能できるお店なのです。同店で驚かされるのは、魚種の豊富さ。毎日、氷見から10種類近くの鮮魚を仕入れているのです。ここまでの魚を毎日仕入れている回転寿司店はほとんどありません。というのも、お客さんのオーダーはやはりメジャーな人気メニューに集中し、マイナーな魚はどうしても売れ残りのリスクを抱えてしまうからです。
しかし、こうしたリスクを恐れず、知られざる美味な魚に出合わせてくれるのが、仕入に強くこだわる「粋鮨」なのです。
ーー「粋鮨」ではどんなネタがいただけるのでしょうか?
米川:豊富なメニューのなかでも、富山湾の幸がまるごと楽しめると評判なのが「氷見浜5種盛り」(990円税込)です。
こちらは毎朝、氷見漁港で競り落とした鮮魚ばかりというスペシャルな盛り合わせで、旬の氷見を凝縮した一皿です。なかでも注目すべきは地物の「のど黒」。北陸産の「のど黒」はその高価さゆえ、残念ながら回転寿司ではなかなかお目にかかれませんが、地物の「のど黒」が入って、このお値段は破格といっていいでしょう。氷見に根を張り、氷見を愛する「粋鮨」ならではのプライドを感じます。
ーーこれは豪華ですね!さすが富山のお寿司屋さん、という感じがします。
米川:まだありますよ。富山のご当地寿司といえば、昆布〆の寿司を忘れてはいけません。富山では江戸時代より北前船で運ばれてきた昆布の一大消費地という歴史的背景があり、県民食とも言われる文化があります。
魚の水分を昆布が吸収することで身が締まり、じんわりと昆布の旨味が広がっていくのが昆布〆の素晴らしさですが、なかでも「かじき昆布〆」(330円税込)は富山ならではの一品。富山では「サス」と呼ばれ愛されるかじきは、昆布〆寿司の代表格といえるメニューです。
また、一年のうち11月からの7週間しか提供されない、冬の北陸の風物詩ともいえる「香箱がに」(770円税込/今季はすでに終売)も、ぜひ試していただきたい一品です。
雌ズワイガニの内子、外子、蟹身が三位一体となった軍艦で、これなくして北陸の冬は始まりません。魚卵のプチプチ感、濃厚な蟹味噌、ジューシーな蟹の身が織りなす味わいは、私の脳に刻まれているのか、毎年解禁日が近づくとそわそわしてくるほどです。季節には何度も訪れたくなってしまいます。
ーー富山寿司の魅力、私の脳にも刻まれました……!
米川:北陸魚介として人気のホタルイカも白えびも氷見ブリも獲れるのは富山湾。ならば、富山で寿司を食べない理由はありません。質実剛健な富山寿司の魅力を存分に味わえる「粋鮨」は、わざわざ来た甲斐があった、と心から実感できる店なのです。
住所:富山県高岡市あわら町110
電話:0766-21-8193
営業時間:11:00〜21:00
定休日:無休
キッズメニュー:子どもに人気のネタをセットにした「お子様三種盛り」や、寿司、サイドメニュー、デザートをセットにした「お子様セット」などあり
キッズ向け設備:子ども用イスあり
駐車場:あり
https://ikizushi.wp-x.jp/
【大阪〜広島】関西・中国地方のわざわざ行きたい回転寿司×2
割烹と回転寿司の奇跡的融合!一品料理が絶品な「活魚廻転寿司 にぎり長次郎 垂水店」
ーーいよいよ関西、中国地方に突入しますが、まずは大阪のお店ですね。
米川:回転寿司が誕生したのは、1958年の大阪。だからこそ、大阪はいまも大手チェーンの本社が集中する「回転寿司の都」として存在感を発揮しています。そんな激戦区たる大阪にあって、洗練された雰囲気と極上の料理で楽しませてくれるのが「活魚廻転寿司 にぎり長次郎」です。
こちらは関西を中心に68店舗を展開する大手ですが、驚かされるのは、これだけ多店舗ながら職人養成に力を入れ、非常に手の込んだメニューを提供するというスタンスです。今回は2023年11月に明石大橋の近くにオープンした神戸の垂水店を紹介します。
こちらのお店でぜひ、試していただきたいのが季節の旬メニューです。「季節のお造り盛り合わせ」は必ず注文しています。
※写真は取材時のもので、現在とはメニュー内容、盛り付けが異なります
旬の食材を使った寿司や一品料理のクオリティがとにかく素晴らしく、個人的には季節メニューを取り扱わせたら全国屈指だと思っています。上のお造りにしても、器や氷の演出、盛り付け方など細かな気配りに感心させられます。
こちらの「紅ずわい北海道いくらのせ」(580円税込)を見ても、同店がいかに「魅せる寿司」を意識し、丁寧に追求しているかが伝わってきます。「食べなくてもおいしさが伝わってくる」寿司を見ると、食べる側のモチベーションが変わってきます。モチベーションが上がる寿司というのはなんと素晴らしいことか。そして同店には、もう一つの魅力があるんです。
ーーぜひ教えてください!
米川:では、下の「金目鯛しゃぶしゃぶ」をご覧ください。
湯通ししたブリを酢飯に乗せたしゃぶしゃぶ寿司、というのは回転寿司でもちらほら見かけますが、ここまで本格的なしゃぶしゃぶ料理には滅多にお目にかかれません。しゃぶしゃぶは残念ながら終売になってしまいましたが、こういった本気の一品料理が「長次郎」の魅力で、過去には「あわびの水貝」や「鱧と松茸のせいろ蒸し」といった、「ここは割烹ですか?」的なメニューや「毛蟹まるごと一杯」(10,000円)といった、とんでもないこだわりを感じさせるメニューが提供されていたこともあるんです。
ーーすごい手間のかけようですね。
米川:こういった手が込んだ料理を、均一なサービスが求められる大型チェーンで実現するのは、もちろん簡単なことではありません。それでも実施するというのは「全店でやり切れる!」という自信と相当の覚悟があるという証とも読み取れます。やはり「長次郎」恐るべし、です。
大阪で回転寿司が誕生してから66年。長らく回転寿司とは「手軽で素早く」を基本としてきましたが、最近は居心地の良い空間と、作り込まれた料理で大人がゆっくりと楽しめる店がトレンドになってきています。この新たな潮流を体現する関西グルメ回転寿司の先駆者「長次郎」で、ぜひ新鮮な回転寿司体験を楽しんでみてください。
住所:兵庫県神戸市垂水区向陽3-5-24
電話:078-798-5536
営業時間:平日11:00〜15:00 17:00〜22:30 土日祝11:00〜22:30
定休日:無休
キッズメニュー:子どもに人気のネタをセットにした「わさび抜きセット」を複数種類、寿司とサイドメニュー、ドリンク、デザートなどをセットにした「チャイルドセット」あり
キッズ向け設備:子ども用イスあり
駐車場:あり
https://www.chojiro.jp/
これぞ回転寿司の二刀流!本格カウンター寿司と回転寿司が楽しめる「すし遊館 あさひLECT店」
ーーいよいよ、最後のお店がある、広島です。
米川:神戸からひたすら山陽道を走っていれば、気がつくとそこは広島。西日本で最も回転寿司が熱い県だと私が感じるのが、ここ広島なんです。実力店がひしめき合うなか、まぎれもなく全国に誇れる強豪店、ともいうべき存在が、同地の古豪「すし遊館」です。
こちらは一般的な回転寿司スタイルの「すし遊館」と、業界初にして驚きの取り組みをしている「すし遊館 あさひ」という2つのブランドを有しており、今回紹介する「あさひ LECT店」は、まさに驚きのチャレンジに取り組む、どんなに遠くから車を走らせてでも来る価値があるお店なんですよ。
同店の本社がある倉敷は優美な「白壁の街」として知られますが、こちらのお店の外観は倉敷にちなんだ白壁と無垢の木を基調とした落ち着きのある店構え。その凜とした店構えに、思わずピッと背筋が伸びます。また、店舗ブランド名の「あさひ」とは、お店で使用される自然栽培された岡山の銘品種米「朝日米」から名付けられており、この安心安全で美味しいお米へのリスペクトが強く感じられます。
そして、メニューを見てすぐに気付くのは、マグロへの強いこだわりです。なにしろ、お店で提供されるのは生本マグロ。生本マグロは変色しやすく、賞味期限も短いことから、回転寿司ではなかなかお目にかかれませんが、同店ではこの貴重なネタを常時提供しているというこだわりぶりです。
リスキーで管理の大変な生本マグロを同店が追求しているのは、一番美味なマグロの食べ方であると確信しているからでしょう。だからこそ、一番美味しいマグロをお客さんに食べてもらうべく、全店で努力を重ねていることを考えると「すし遊館」、これまた恐るべし、としか言いようがありません。
ーー生本マグロだけでもそそられますが、米川さんのいう「驚きのチャレンジ」とは?
米川:生本マグロだけでも回転寿司ファンなら絶対に行くべきだと思いますが、同店の真髄は二刀流ともいうべき独自の店づくりにあります。
ご覧のとおり、なんと店内が回転寿司コーナー(写真左側)と本格カウンター寿司コーナー(写真右側)に分かれているのです。しかも“なんちゃってカウンター寿司”などというレベルではなく、超のつく本格的な作り込み。一枚板のヒノキを使ったカウンターに木箱のネタケースも見事で、これぞ高級寿司店のカウンター!といった世界観です。しかも、カウンターに立てるのは選ばれたごくわずかな職人のみ、という真剣勝負の場でもあります。回転寿司店で本格カウンター寿司を体験できるという、前代未聞の仕組み、本当に驚かされます。
ーーそれでいて、回転寿司の気軽さもありますね。
米川:回転寿司も好きだけどいつかはカウンターの寿司店で熟練の大将の握りを食べてみたい、と思っていても、時価が怖い、注文の仕方が分からない……など、敷居の高さにどこか気後れを感じてしまう方もいるでしょう。そんな方にとって、これほどとっつき易いお店はありません。回転寿司コーナーで食べながら横目でカウンターを観察し、あれだったら座りやすいから次回は向こうで食べてみよう、と踏み出す最初の一歩にこれほど向く店はないからです。
そして、こちらのカウンター、お値段も実に良心的。2種類のおまかせコースのみですが、「あさひ」(3,480円税込)、「あかつき」(3,980円税込)と手が出しやすい価格設定になっています。これも本格的な寿司を気兼ねなく楽しんでいただきたい、という思いの表れでしょう。もちろん、その仕事にも手抜かりはありません。
ご覧のとおり、寿司にはしっかりと仕事がされており、「これって1万円でも安いのでは?」と思わせるような寿司が次から次へと提供されます。やっぱり寿司ダネが違うんですよね、と意地悪にも尋ねたら、驚いたことに回転寿司コーナーで使っているのと同じ魚を使っているといいます。
これが職人の腕というものか。いや、これだけの腕を持った職人が回転寿司店にも存在する時代になってきたのだ、と時の流れを感じます。
ーーいわゆる「回転寿司」のイメージとはまったく異なる体験ができるお店ですね。ここもぜひ行ってみたいです!
米川:回転寿司が誕生してから66年。生まれた時から回転寿司が存在し、寿司といえば回転寿司にしか行ったことがない、という方が増えています。もしかしたら、あと何年かしたらカウンター寿司の文化を知るのはごく限られた人だけ、という時代になるかもしれません。
だからこそ回転寿司と高級カウンター寿司の間を取りもつかのような「すし遊館」の取り組みが、私はたまらなくうれしいのです。これほど敷居が低く、身近に感じられるカウンター寿司があればこそ、寿司文化の懐の深さを多くの方が体験できるのですから。
私も若いころ、「いつかは寿司屋のカウンターで寿司を食べてみたい」なんて思いを胸に回転寿司を食べていましたが、「すし遊館 あさひ」に来れば、今日は回転寿司、今日はカウンター寿司、といったように、気軽にスタイルを選んで寿司を堪能できます。こんな時代が来るなんて思いもしませんでしたが、いい時代にいい店ができたものだと強く感じます。皆さんにもぜひ、この新時代の寿司体験を楽しんでいただきたいですね。
住所:広島県広島市西区扇2-1-45 LECT2階
電話:082-961-6668
営業時間:平日11:00〜15:30 17:00〜21:00 土日祝11:00〜21:00
定休日:無休
※おまかせコースは要予約確認のこと キッズメニュー:「海老フライ巻き」「ウインナー」など、子ども向けメニューあり
キッズ向け設備:子ども用イスあり。一部店舗にはキッズスペースもあり
駐車場:あり (LECT駐車場を利用)
https://sushiyoukan.com/
ドライブで楽しむ全国ご当地回転寿司巡り
ーーたくさんのお店を紹介してくださって、ありがとうございました。「取り組み」の違いによって、それぞれにお店に魅力と個性が生まれることが、よく分かりました。
米川:そうです。回転寿司はお店によって千差万別。今回ご紹介したのは、独自性を全面に打ち出したオンリーワンのお店ばかりですが、それだけに、提供している商品もシステムも、こだわりの「取り組み」もすべてが違います。だからこそ、お店のこだわりを知れば、回転寿司体験がもっと楽しくなっていくのです。
全国、車で走っていれば、いろいろな場所で回転寿司店を目にすることでしょう。一人でも、デートでも、そしてもちろん家族と一緒でも、ドライブのさなか、「知ってる? 実は回転寿司って奥が深くてさ…」なんてうんちくとともに、この深遠な食文化に誘ってあげてほしいと強く願います。
「そんな店があるんだ! 行ってみたい!」となるのか、「いや、興味ないよ」となるかは、語り部の熱量次第。この記事を参考に、ドライブで回転寿司店を訪れる人が少しでも増えたならこんなに幸せなことはありません!
ーー米川さん、ありがとうございました!
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編集:はてな編集部