著者
山本剛志:1969年、東京都生まれ。2000年「TVチャンピオン ラーメン王選手権」で優勝。全国10,000軒以上のラーメン店で、15,000杯以上のラーメンを堪能。雑誌・テレビ・WEB媒体などでラーメン情報の紹介多数。ブログは毎日更新し、ラーメン情報とラーメンに関するニュースを発信。「日本ラーメンファンクラブ」実行委員会代表委員を務める。
- Twitter:@rawota
- ブログ:ラーメン評論家 山本剛志のら~マニア共和国
はじめまして。ラーメン評論家の山本剛志です。
私は、新横浜ラーメン博物館でラーメンという食文化の幅広さと奥深さに感銘を受けて以来、25年間で10,000軒以上のラーメン店を巡ってきました。昨年は年間で372杯、最高で1日に16杯食べたこともあります。それだけ食べていても、まだ他にない個性的なラーメンに出合うこともあります。そんな時にはテンションが上がって、次のラーメン店に向かう元気も出ます。
みなさんは普段、どんなシチュエーションでラーメンを食べに行くことが多いでしょうか。自宅の近くにあるお店、会社近くでランチ、都内の人気店、旅先の観光地近くの有名店へ足を伸ばす……などでしょうか。ラーメンフリークの方ならラーメン店を連食するためだけに遠征をすることもあるかと思います。
私も、まだ見ぬラーメンのために、遠出することがしばしばあります。全国各地へ行くときは、車を使って多くのラーメン店を巡りました。車で行かなければ出会えない、その土地ならではの魅力的なラーメンが、全国にたくさん存在しています。そんなお店に、ぜひとも足を運んでほしい!
車でのラーメンドライブならば効率的に移動できますし、臨時休業や早仕舞いなどのハプニングにも、次の候補店へ向かうことでリカバリーできます。
そこで今回は、全国各地のラーメンドライブを楽しんできた私が、皆さんにもぜひ車で訪れてほしいラーメン店とおすすめメニューをお伝えしたいと思います。
お店を選ぶにあたり、まずはハードルの低さを考慮して、以下の3つの条件に決めました。
- 駐車場が用意されていること
- ラーメンの味、ラーメン店の雰囲気に「ここにしかない」ものがある
- 東京から車で3時間以内(といいつつ、関西の方向けのお店も最後に1店舗紹介します)
次の週末は、ぜひ絶品ラーメン目がけてハンドルを握ってみてください。
ラーメン巡りの旅は、マナーから
お店へ行く前に、いくつか注意点をお伝えしておきます。定休日、営業時間の確認は大前提ですが、突発的な事情で臨時休業したり、早仕舞いしたりしている事もあります。そんな時に備えて、予備の候補も用意しておくとよいでしょう。
駐車場が満車の時は、お店の指示に従うか、近隣のコインパーキングを利用してください。路上駐車は絶対にダメです。交通違反であるだけでなく、渋滞や事故の原因にもなりかねません。
また、近隣の商業施設などの駐車場を許可なく利用することもいけません。その店の人や近隣に住む方からのクレームがお店に届いてしまい、営業が続けられなくなった店もあります。ラーメン巡りの旅は、マナーから。このことをどうかお忘れなく!
車で訪れたいラーメン店
1. 力強い豚骨ラーメンを深夜にも楽しめる「田中商店 本店」(東京都足立区)
2000年に環七沿いで開店し、瞬く間に人気店になり、2007年に現在の場所に移転した「田中商店 本店」。「都内であれば公共交通機関を利用すればいいのでは」と思うかもしれませんが、このお店が車で行くのに適している理由が3つあります。
まずは、最寄り駅(つくばエクスプレス六町駅)から約1km離れており、歩くと15分程度と少々遠いこと。次に、駐車場が10台以上用意され、混雑時に備えて誘導係の人も待機しているなど、車でのアクセシビリティが考慮されていること。そして、深夜まで営業しているので、東京のナイトドライブとラーメンを楽しむ、というドライブプランを楽しめるからです。
「東京向けにアレンジしない博多ラーメン」を標榜しますが、ここまで濃厚で力強い豚骨スープには、東京どころか博多でもなかなか出会えません。福岡から取り寄せている細ストレート麺が濃厚スープに絡み、麺をすする手が止まりません。また、手間暇かけて香ばしく窯焼きされた叉焼(チャーシュー)もうれしいポイント。
今回は「ラーメン」(¥820/税込)に「海苔」(¥150/税込)をトッピング。スープに浸した海苔を、ご飯に巻いて食べるという罪深いコンボを楽しむべく追加しました。なお、サイドメニューの「明太ごはん」(¥300/税込)もオススメです。
豚骨の濃厚さを堪能し、替玉は「はりがね」「やわ」など茹で加減を変えつつ食感の変化を楽しむのもまた一興。辛党ならば、辛い味付けがされた挽き肉「赤オニ」(¥200/税込)を追加することで、つけ麺風に楽しむこともできます。
帰り道は夜ならば腹ごなしとばかりに首都高に乗れば、ライトアップされた東京スカイツリーや東京タワー、夜景が人気の工場地帯など、都会的な風景も楽しめます。
店舗情報
店名:田中商店 本店
住所:東京都足立区一ツ家2-14-6 アンスリューム1F
電話番号:03-3860-3232
年中無休
2. 甘さと辛さのバランスが絶妙なアリランラーメンが名物「らーめん八平」(千葉県長生郡長南町)
千葉県南部に広がる房総半島は、外房に「勝浦タンタンメン」、内房には「竹岡式ラーメン」など、魅惑のラーメンがたくさんありますが、半島の中央部にも、ぜひ味わいたい独特なラーメンがあります。
東京からは、アクアラインから圏央道を進んで1時間半ほどですが、カーナビの指示通りに進んでいると「ほんとにこの先にラーメン屋さんがあるの?」と不安になるほど、目印がない田園地帯を進んでいきます。
田園地帯の奥に佇む古民家風の店舗が「らーめん八平」。公共交通機関で訪問するにはバスの利用が可能ですが、1日の本数が極めて少なく、最寄駅の小湊鉄道上総鶴舞駅からも約8kmの丘陵を越える道のりを1時間ほど歩かないとたどり着かないような場所にあります。そのためドライブの甲斐がある店で、駐車場にはツーリングの途中に立ち寄ったであろうバイクも目立ちます。
この「らーめん八平」の自慢のメニューが「アリランラーメン」(¥1,000/税込)。タマネギをベースに、豚肉・ニンニク・ニラ・ネギを使い、ラー油のピリ辛味でまとめた食欲をそそる一杯です。タマネギをしっかり煮込むことで素材の甘さが引き出されており、ラー油の辛さとのバランスが絶妙。ゴロッと入ったニンニクも特徴的で、ここにしかない強烈なインパクトを出しています。
なお、このアリランラーメンは同店と、長柄町にある本店「八平の食堂」でしかいただけないメニュー。不思議なその名の由来は、本店が峠道沿いにあり、韓国民謡で歌われた「アリラン峠」も越えていけそうなスタミナのつく一杯として名付けられたそうです。
房総半島は風光明媚な上に牧場や水族館など、レジャースポットも多彩です。「アリランラーメン」でスタミナチャージしたら、国道297号線に出て、ワインディングロードを楽しみつつ大多喜町に駆け下りていくドライブルートがオススメ。その先は勝浦に寄り道するもよし、北上して太平洋沿いに走る爽快な九十九里有料道路に足を伸ばすのも素敵なドライブプランです。
店舗情報
店名:らーめん 八平
住所:千葉県長生郡長南町山内813-2
電話番号:0475-46-1167
定休日:水曜日
3. カレー店での経験が脈打つスパイスラーメン「伊豆 あまからや」(静岡県伊豆市)
東京から2時間程度と手軽に行ける伊豆半島は中伊豆、修善寺郊外にある一軒家。ここが週末になると、絶品ラーメンを楽しめる「伊豆 あまからや」になります。
ご主人は元々沼津でカレー店を営んでいましたが、1999年、新横浜ラーメン博物館が開催したコンテスト「ラーメン登竜門」で優勝してラーメン店を開業。一度閉店して、家業のわさび農家に専念していたそうですが、2015年からは、金・土・日・祝日限定でカレーとラーメンを提供する同店をご実家に開きました。文字通り「アットホーム」なお店です。
この店でまず食べてほしいのは「スパイス醤油ラーメン」(¥860/税込)。ご主人のカレー店での経験が脈打つ巧みなスパイス使いと、鶏ガラと魚介を合わせたあっさり味のスープが出会った一杯は、非常に個性的。世に「辛いラーメン」は数あれど、スパイスとラーメンスープがまろやかに調和した味わいはここだけにしかないでしょう。
サイドメニューの「わさび農家の本生わさび飯」(¥390/税込)もぜひいただきたい一品。伊豆の本わさびを自分でおろし、ご飯にかけていただけば鮮烈な辛さを楽しめます。
また、10種類以上のスパイスを使ったインド風カレーライス、そのカレーとラーメンを組み合わせた「贅沢カレーラーメン 小ライス付」(¥1,100/税込)も、もちろん本格的。カレー店でもあり、ラーメン店でもある「二刀流」を堪能できます。
そして、お店がある伊豆半島は言うまでもなく絶好のドライブスポット。東伊豆ならば伊東や熱海といった観光地、西伊豆に出れば駿河湾の先に拝める富士山。絶景ドライブウェイの「伊豆スカイライン」を北上すれば箱根もすぐです。絶品ラーメンと爽快ドライブを楽しむなら、ぜひ「伊豆 あまからや」へ!
おすすめ記事:ツーリング雑誌編集長がこっそり教える伊豆の穴場ドライブスポット10選!絶景、グルメ、温泉など徹底紹介
店舗情報
店名:伊豆 あまからや
住所:静岡県伊豆市原保246
電話番号:0558-99-9895
金・土・日・祝日のみ営業
4. 絶品のワンタンメンを堪能「とら食堂」(福島県白河市)
関東を飛び出して福島県へ。目当てのお店がある白河市は県南部にあり、東京中心部からでも東北自動車道を順調に進めば3時間以内で到着します。白河中央インターから15分ほど走った、白河市の郊外にあるのが「とら食堂」。40台以上停められる駐車場を構えていますが、週末には全て埋まるほどの人気ぶりです。
こちらで味わえる「白河ラーメン」は長い歴史を持つご当地ラーメンですが、その知名度を一気に高めたのがこの店の創業者、竹井寅次氏。ワンタンが人気の店で修業し、1973年に独立。現在の店主・竹井和之氏が2代目として約40年前にお店を引き継ぎ、絶品の白河ラーメンを提供し続けてきました。
「店を守る」ことは「味を守る」ことと同義ではありません。食に対する人々の価値観や環境が変わるなか、同じ味ではお客さんに認められ続けることはないという店主の思いの元、毎日打つ麺、煮込むスープのレシピをブラッシュアップし続けていています。
そんな「とら食堂」を堪能するには、やはり「ワンタンメン」(¥1070/税込)がオススメ。自家製の中太手打ち麺はプルプルとした食感とコシを両立していて、グイグイとすすれます。
鶏ガラや豚骨を使った澄んだスープはすっきりして飲みやすく、上にのるチャーシューは燻製された焼豚を使用。白河市周辺には多くのラーメン店があり、とら食堂出身の人気店も少なくありません。それでも、長い研鑽を重ねたこの店の一杯は特別に感じられます。丁寧に改良を積み重ねることで、安定感と新しさが同居した味が成立していると感じています。
東北の玄関口でもある白河市には、ラーメンだけでなく、観光名所もいろいろとあります。「白河の関」「小峰城」など、歴史の雰囲気も楽しめるスポットが豊富で、帰り道は東北道を戻るだけでなく、奥久慈方面への寄り道もオススメ。中でも、「袋田の滝」は絶景です。
店舗情報
店名:とら食堂
住所:福島県白河市双石滝ノ尻1
電話番号:0248-22-3426
定休日:月曜日
【関西編】豚バラ肉&生卵が特徴的。濃厚スープの徳島ラーメンを楽しむなら「王王軒(わんわんけん)」(徳島県藍住町)
最後に、関西からのドライブで楽しめるラーメン店もご紹介します。京都や和歌山など、関西の中でもラーメン処がありますが、新大阪から約2時間、徳島県まで足を伸ばすルートはいかがでしょうか。
徳島市周辺では、戦後間もなく豚骨を使った白濁スープのラーメンが人気になりました。白濁スープのラーメンといえば博多風を想像しますが、徳島のラーメンはちょっと趣が異なります。丼の上にのるのは、チャーシュー代わりの醤油で煮た豚バラ肉、そこに生卵がトッピングされるのが、徳島で親しまれるスタイル。そして、この徳島スタイルのラーメンを楽しめるのが、今回ご紹介する「王王軒(わんわんけん)」です。
なんともかわいらしい響きの屋号の由来は、プロ野球界のスーパースター王 貞治選手から。王選手のように世界の人に愛されるお店になりたいという思いとともに、1998年に開業。徳島市の北側の藍住町にあり、徳島自動車道の藍住インターからすぐです。
オススメは「支那そば 肉卵入り」(小 ¥800、大 ¥900/それぞれ税込)。豚骨と鶏ガラを長時間煮込んで、旨味とコクに溢れて、匂いも強めな濃厚スープを提供。国産小麦を使い、卵を入れずに仕上げた中細ストレートの自家製麺が馴染んで、トッピングの生卵を崩せば、濃厚スープがまろやかになって楽しめます。四半世紀を経て、子供からお年寄りまで、世代を問わずに愛される、徳島ラーメンの中でもインパクトある一杯になっています。
藍住町は、藍染め「阿波藍」の一大産地であり、藍染体験ができる「藍住町歴史館 藍の館」などがあります。徳島市に寄れば観光スポットは更に多いですが、眉山ドライブウェイを使って、眉山山頂からの眺めは是非堪能してほしいと思います。
店舗情報
店名:王王軒 本店
住所:徳島県板野郡藍住町徳命字牛ノ瀬446-15
電話番号:088-693-0393
定休日:木曜日
ラーメンドライブを楽しもう!
私は47都道府県のラーメン店を巡りました。ラーメン店を目的地とすることが多いため、周りからは「観光地には行かないんですか?」と聞かれることもあります。でも私にとっては、ラーメン店も観光地のひとつであり、立派な「ドライブで行きたい場所」なのです。
今回紹介した5軒だけでなく、全国には個性的なラーメン店がまだまだたくさん。皆さんも「これは!」と気になるラーメン店を見つけたら、ぜひハンドルを握り、そこに観光要素もトッピングして、ラーメン+ドライブを楽しんでください!
※各店のメニュー価格や休業日の最新情報は公式HPなどをご確認ください。
編集:はてな編集部