こんにちは。『モトツーリング』編集長の神田英俊です。
僕の作っている雑誌は、隔月刊にて発行中のオートバイツーリング雑誌情報誌。日本全国の知られざる絶景や秘境、地域独自のグルメスポットや観光地といった、魅惑の旅先情報をモリモリお届けしていますが、とりわけ力を注いでいるのは、「穴場の情報」です。僕自身が現地に足を運んで得た廃道や道路史・地域の知られざる郷土文化といった、ちょっとマニアックな情報も盛り込みつつ、一般的なツーリング / ドライブ雑誌とは若干違った視点で誌面づくりを行っています。
本稿は、そんな僕がお勧めする伊豆半島全域の穴場スポットを「絶景」「走って気持ちいい道」「グルメ」「温泉」の4ジャンルに分け、厳選してお届けしたいと思います。「穴場」と聞いて身構えることなかれ。今回は運転初心者でも比較的アクセスしやすいライト級のスポットを紹介しますので、ご安心を!
【旅に出る前に】伊豆ドライブの注意点と本稿のお品書き
首都圏からアクセスしやすく多くの絶景スポットに恵まれた伊豆は定番のドライブ先&観光地。ただし、覚えておいていただきたいのは、“絶景が多い=地形が険しい場合が多い”ということです。
断崖絶壁の斜面を走るルートや山岳ワインディング・海原展望のシーサイドロードなど、地形の厳しさゆえの多彩な風景変化が楽しめますが、同時に急カーブが連続し見通しの悪い道もたくさん。今回ご紹介するスポットは道路事情が厳しいスポットを除外しており、一般的な運転技術があれば、十分この伊豆ガイドを楽しめると思います。しかし一方で、事故も頻発しているので、お出かけの際はくれぐれも無理な運転をすることなく、細心の注意を払ってドライブを楽しんでください。
さて、前置きが長くなりましたが、今回の伊豆の穴場ドライブスポットのお品書きは以下の通りです。
▶Google マイマップ版「伊豆の穴場ドライブスポットマップ」
それでは、まずは魅惑の絶景ポイントからご紹介していきましょう!
伊豆の地形がつくり出す絶景スポット×4
龍宮窟<南伊豆エリア>
上の写真のとおり、洞窟を進むと眼前に広がる秘密のビーチ。天井にぽっかりと空いた巨大な天窓(?)。神秘的という言葉以外に表現しようのないスポットがこちらです。「どうやって行くの!?」と思われるかも知れませんが、洞窟周辺は安全に整備されており、観光スポットとして盛り上がりつつある場所なのでご安心を。
このスポットは、伊豆半島がまだ陸地ではなく、海底火山だった時代の地層が露出しているのが大変ユニークです。この特異な地形を生み出したのは波。長い時間をかけて崖を浸食し洞窟が生み出され、その天井が崩落したことで、井戸の底のような独特の光景が生まれたのです。天窓の直径は実に40〜50m。国内屈指の規模とユニークさを誇る絶景です。そして、見どころは洞窟上部にも。
崩落した天井周囲には遊歩道が整備されており、巨大な空洞を上から眺めることもできるのですが、洞窟の形状がハート形に見える事から恋人達の聖地とも……!?
観光客も散見され、南伊豆では定番になりつつあるスポットですが、秘境感と神秘的な雰囲気は伊豆屈指!一度は行くべきスポットの一つとしてお勧めです。
仁科峠展望台<西伊豆エリア>
続いては、西天城山脈と富士山を一気に遠望できる超絶展望スポットです。展望台は伊豆半島の背骨とも言える西天城山脈の中央部、標高900m付近に位置しており、まさに空から伊豆を一望するかのような大パノラマを楽しめる穴場ポイント。
行き方は簡単で、駐車場より伊豆山稜線歩道を約260m登るだけ。約10分程度のハイキングで伊豆半島すべてを見渡せる大パノラマに出合えるのです。遊歩道は若干の凸凹がありますが、十分に整備されており安心感は抜群なので、行かない手はありません。
そしてこれだけの大絶景を楽しめるにもかかわらず、観光客は極めて少なく、休日や連休時でも存分にその展望を堪能できるのです。実はハイカーたちにとっては定番のポイントで、展望台にて一息入れる方々も散見されますが、観光客の多くは駐車場より近場の展望地へ行くケースが多く、この場所は意外な空白地となっているのです。
眺望良し、穴場感ありの良スポットではありますが、ちょっと注意すべきは道路状況。西天城高原道路よりここまでは幅広2車線の爽快ロードですが、ここから南側は1.5車線の狭路。運転に不慣れなドライバー&ライダーの方は十分にご注意くださいね。
浅間山展望台<東伊豆エリア>
目前には太平洋と伊豆大島。広大な水平線展望が広がる伊豆屈指の展望絶景が楽しめるのが浅間山(せんげんざん)展望台。「あさまやま」ではなく「せんげんざん」と読みます。山稜上にいるにもかかわらず潮風感が抜群!そして、その穴場感たるや……。僕がロケで訪れた際は、平日でしたが1時間滞在して誰一人見かけなかったほどです。付近には屈指の観光地、伊豆アニマルキングダムがあり、多くの方がここへ訪れるがゆえに、エアポケットのような絶景スポットになったのでしょう。
人影はまばらでも、その展望は伊豆屈指。水平線や海だけでなく、眼下の稲取半島や丘陵地も一望できる多彩なパノラマ情景が魅力です。標高は516mと決して高くはないですが、東伊豆の情景が濃厚に凝縮され、感激度は抜群! 満足感トップクラスのお勧め絶景ポイントです。
ただし、看板が小さく非常に見つけ難いのが難点。しかも展望台までのラスト700mが急坂&狭路。完全舗装路で車両の走行には問題ない道ですが、最後まで気を抜かぬよう運転には要注意ですよ。
入間千畳敷<南伊豆エリア>
最後にご紹介する絶景スポットは大海原の解放感と共に、圧倒的な威容で迫る巨岩塊や岩盤が観察できる入間千畳敷です。伊豆半島南端付近にあり、都内からだと少々時間がかかります。また、駐車場(入間港)から現地までは片道徒歩約45分程かかるので、たどり着くのはちょっと大変。しかし、そのおかげか訪れる人が少なく、“伊豆最後の秘境”という別名どおり、穴場感は抜群です。
見どころは「千畳敷」の名に恥じない目前に広がる荒涼とした広大な岩盤。これこそ、伊豆半島が形成される過程で火山噴出物が堆積した太古の地球の大地そのものなのです。まさに地球の息吹を肌で感じられるジオスポットの一つです。また、もう一つの目玉は石切り場。
この岩は伊豆石と呼ばれ、かつては盛んに採掘されていました。ここ入間千畳敷からは、小田原城築城の際に使用した伊豆石が採石されており、その跡も観察できます。歴史ロマンを肌で感じられる絶景スポットと言えるでしょう。片道徒歩約45分程度の道程ですが、一部を除きほぼ完全に舗装された遊歩道ルート。時間はかかるものの、ハイキング感覚で秘境感を楽しめるのもうれしいポイントです。
「 走るだけで、気分爽快」な伊豆の道×2
静岡県道16号下田石廊崎松崎線<南伊豆エリア>
伊豆は言うなれば、絶景ロードの集合体。首都圏のみならず、関西から訪れる方も多いのもうなずけます。ここでご紹介する静岡県道16号下田石廊崎松崎線は伊豆の南端を周回するように走る道。伊豆一周ドライブを経験された方にはお馴染みのルートかもしれません。
概要は、東側のひなびた漁師町を継いで走る潮風感漂う海道と、西側の断崖と山肌が豪快な絶景路の2部構成です。コーナーのきつい古い線形の道が一部残っておりますが、全線2車線。路面状態も良く、初心者でも十分に楽しめるルートでしょう。
また、観光客の多くがより内陸部を走る国道136号線を通ることから、こちらの県道は通行量が比較的少ないのも特徴です。そして、この道は地域の生活道路。それゆえ、現地の生活感を実感できるのも魅力の一つでしょう。
静岡県道127号(西伊豆スカイライン)〜411号(西天城高原道路)<中伊豆エリア>
伊豆に来たならまずはココを走りたい!定番ルートの一つですが、それでもお勧めしたい抜群の良道です。伊豆のスカイラインは現在2本。東側の「伊豆スカイライン」と西側のこのルートですが、こちらは車両通行量が少なめで適度な穴場感を楽しめます。
ルート概要は西天城連山の山稜中央部を貫く約19kmの絶景山岳ワインディングロード。西伊豆側の移動経路としての価値も高く、伊豆旅では外せないルートです。便宜上、127号〜411号の2路線の組み合わせになっていますが、実態は連続した1つのルートとなっており、迷うことなく走破可能。また、道路の作りも非常に魅力的です。全線幅広2車線の上、2路線連続19kmの区間において信号はゼロ。さらに、アップダウンに富んだルートながら、タイトコーナーは少なめ。のんびりと走りやすいこともドライバーやライダーを惹きつける理由の一つかもしれませんね。
達磨山の高原風景の中、伊豆半島の背骨を見渡しつつ駿河湾と富士山の黄金コンビも望め、まさに伊豆ロードの魅力を凝縮したかのようなルートなのです。
郷土の味で腹ごしらえ。伊豆ローカルグルメ×2
横浜生まれ稲取育ちの郷土ソウルフード。肉チャーハン<東伊豆エリア>
あちこち走り回れば腹が減ります。地域に根付いた美味しいグルメが多々ある伊豆では迷うこと必至! 海に囲まれた伊豆ならば、すぐに思いつく大定番は海鮮丼でしょう。でも、ちょっと趣向を変えて、絶品チャーハンはいかがでしょうか。いただくのは、ただのチャーハンにあらず。東伊豆の稲取周辺のソウルフード「肉チャーハン」です!
内容は実にシンプル。玉子チャーハンに豚肉・キャベツ等を具材とした餡かけ野菜炒めを載せたもの。この餡とチャーハンの調和が絶妙!ボリューム感抜群の盛りですが、あっという間に完食してしまい、毎度“大盛でも良かったか?”と思ってしまいます。
この魅力的なローカルグルメのルーツは稲取中心部にあるかっぱ食堂。横浜中華街で修行された先代が創作したメニューで、稲取での創業より50年以上もの歴史を持っております。現在、稲取周辺では10前後の店舗が肉チャーハンを提供していますが、伊豆の穴場銘グルメとして県外客も通う人気ぶり。旅の醍醐味の一つは“そこにしかない味”に出合うこと。まさに稲取の肉チャーハンは、ココにしかない郷土グルメ。絶対に味わっていただきたいメニューなのです。
その歴史1,200年以上!カネサ鰹節商店の潮鰹をお土産に<西伊豆エリア>
鰹の産地と言えば直感的に焼津や高知が連想されますが、実は西伊豆田子地区も、奈良時代頃より国内有数の鰹漁港として知られているのです。文献によれば、田子の鰹は平安時代には朝廷に献上されていた由緒正しきひと品。しかし、当時はまだ鰹節製法の黎明期で、塩漬けした鰹を干し上げる“潮鰹”が主流でしたが、この製法を基礎として現在の鰹節づくりが確立されていったのです。
ご紹介するカネサ鰹節商店は、伝統製法である手火山式焙乾製法にて鰹節を製造しているメーカーですが、なんと現在も古の潮鰹を製造しています。実に1,200年以上もの歴史を誇る潮鰹ですが、現在その製造者はごく少数。もはや、重要文化財級の郷土グルメといえるでしょう。
それが、直売店はもちろん周辺の土産物店の一部にて安価に購入可能なことも驚きです。西伊豆を訪れた際はこの潮鰹をぜひ探してお土産にしてみてください。1,200年間、受け継がれてきたこの旨味、試さない手はありません!
豊かな源泉から湧き出る伊豆の銘湯×2
金谷旅館の千人風呂<南伊豆エリア>
火山によって生まれた伊豆半島は関東屈指の温泉地。修善寺温泉や伊東温泉は歴史的にもその代表格の一つと呼べるでしょう。伊豆全域における温泉源泉数は何と約2300本!全国第3位の源泉数を誇る静岡県の温泉は、その約92%が伊豆半島にあるのです。
火山によって錬成された伊豆半島は、もはや全域が巨大な温泉地。なかでも、穴場としてお勧めしたいのが、全国の温泉ファンが垂涎するとも言われている銘湯、金谷旅館です。この温泉の名物は千人風呂と呼ばれる巨大な総ヒノキ造りの浴槽。その規模たるや国内屈指ですが、投入量も凄まじく、浴槽鮮度も極めて高い至福の温泉なのです。千人風呂以外にもさまざまな温泉浴槽が設置されており、歴史深い湯殿の造りも鑑賞に値します。
泉質は弱アルカリ性の単純泉で浴槽温度は若干温めの最適温。長湯で楽しめるのもうれしいポイントです。温泉ファンでも、そうでなくても、この浴槽鮮度と湧出量は堪能しておきたいところ。ただし、注意点が一つ。この千人風呂は混浴浴槽なのです。女性は湯浴み着やバスタオル着用で入浴でき、マナーの良い雰囲気ですので安心感は高いと思いますが、どうかご留意を。
住所:静岡県下田市河内114-2
TEL:0558-22-0325
日帰り入浴可 大人1人 / 1,000円(時期によって変動あり)
日帰り入浴の営業時間は施設に確認のこと
定休日:要確認
Webサイト
大澤温泉 野天風呂 山の家<西伊豆エリア>
もう一軒は西伊豆、松崎町の秘湯です。渓流沿いの山中にひっそりと湧く湯治宿の温泉ですが、なんと足元湧出の銘湯。足元湧出とは浴槽内に源泉が直接湧出しているスタイルで、温泉ファンにとっては贅沢極まりない体験となるはず。浴槽は大きな露天風呂のみのシンプルなスタイルですが、注目すべきはその膨大な投入量。湯柱が立つ程の勢いで投入されており、凄まじい量のオーバーフローが味わえます。当然、浴槽鮮度は極めて高く、さながら天然ジェット風呂のように温泉流圧を楽しめる垂涎至福の温泉なのです。歴史も古く、開湯は1700年代。湯治場としても長く愛されてきた場所で、建屋は約80年前の建造物で趣と情緒も抜群です。
もちろん現在も湯治場として宿泊利用も可能。安価にて利用可能なのもうれしいポイントです。これ程のクオリティにもかかわらず、意外と観光客は少なめ。穴場感も抜群で伊豆温泉の中ではお勧め度トップクラスですよ。
住所:静岡県賀茂郡松崎町大澤川之本445-4
TEL:0558-22-0325
日帰り入浴可 大人1人 / 600円
営業時間:8:00 〜 21:00(5~8月) / 9:00 〜 21:00(9~4月)
定休日:毎月第2水
Webサイト
【ちょっと寄り道】伊豆ドライブを快適にする道路と渋滞の話
まず、知っておきたいことが道路の幅とクルマの幅のこと。道路は規格に沿って設計されており、ご自身の運転する車の幅を知っておくと、狭路での対向の可否の目安として参考になると思います。その簡単な概要とは…
- 道の幅(1車線あたり)
- センターラインあり2車線路
- 規格では2.75m〜3.5m ※伊豆の一般道では2.75mおよび3mが多い。
- センターラインなし1車線路
- 通称1.5車線路。規格では3mまたは4m ※伊豆では3mも多い。
- センターラインあり2車線路
- クルマの幅
- 軽自動車:1.48m以下
- 5ナンバー車1.7m以下
- 3ナンバー車:1.701m以上
といった具合です。
伊豆の道路は旧線形路や狭路の宝庫。整備も進んでいますが、山間部では一気に道幅が狭くなることも珍しくありません。伊豆の道路幅イメージとしては、海岸一帯の国道・県道部は概ね心配することはありませんが、普通車で山間部の1〜1.5車線路を走る場合は、若干注意が必要でしょう。とはいえ、舗装車道を走る限りでは、ご自身のクルマの幅以下の道路に出合うことはまずありません。
また、狭路に出合った場合も落ち着いて走ることを心がければ問題ないでしょう。ただ、舗装状態が悪い箇所は多く、段差などにはご注意を。車体下部を擦るとトラブルの原因になる場合があります。伊豆に限った話ではないですが、ロードサービス等の確認も入念に。
そして、もう一つ知っておきたいのは、渋滞についてです。伊豆は一大観光地。特に休日は随所で渋滞となります。この対策も心得ておくことをお勧めします。その対策とは、渋滞箇所を把握しておくことです。以下にいくつか有名な渋滞ポイントを挙げておきましょう。
では、各ポイントの渋滞を避ける有効な手段とは?
それは“早めに出発する”ことです。昼に到着して昼食は伊豆で……という感覚では、ちょっと遅いのです。東京発を想定すると都内が混む前、朝6時頃には東名高速・東京ICを抜けるくらいを目安にすると安心かもしれませんね。
極端な話ですが、帰りは渋滞でも良いのです。休日の限られた時間で伊豆を十分に堪能するには“早めの行動”がキーワードです。これだけで快適度が格段に変わりますよ。
旅先を知れば知るほど、ドライブが楽しくなるかも
深淵なる伊豆の穴場と魅力を駆け足でご紹介しましたが、伊豆の名所はまだまだたくさん。ドライブを兼ねて冒険心くすぐる穴場巡りの旅は、愛車と過ごす最高の時間です。さらに、走るだけでなく目的地を事前によく調べておけば、意外な魅力も見つかります。
絶海の火山島だった伊豆。伊豆の絶景や名物はすべてこの地理的要因がバックボーンにあります。伊豆の歴史を探究してみると、貴方だけの素晴らしい名所の発見ができるかもしれませんよ。
では皆さま、安全かつ快適に奥深い伊豆半島の旅を存分にお楽しみください!
編集:はてな編集部