私は48才になり、息子たちも29才(長男)と21才(次男)になった。
子どもが成人したら肩の荷も下りて、さぞかしアグレッシブな人生を過ごしているんじゃないかと思っていたが、今のところそういう感じでもない。
最近は息子たちと顔を合わせることも少なくなり、何かをお願いされることもなくなってきた。だからだろうか、少し寂しさみたいなものを感じて過ごしている。
彼らもしっかりと自分の人生を歩んでいるのだろうから、親としてもうれしく思うのだけれども。
そんなとき、この寄稿の依頼をいただき、編集者から「がもんさん、ドローンの資格を持っているなら家族写真を空撮してみるのはどうですか?」という提案をもらった。
とても面白そうだ。撮ってみたい。こんなことでもないと大人になった息子たちと集まって出かける機会は少なくなっていくだろうし。
私は2022年にドローンの民間資格を取得してドローン購入までしているのに、実はまだ一度も飛ばしていない。初めは都内よりも大自然が広がるところで空撮をしてみたいと思っていたら、長い時間がたってしまっていた。
ちなみにドローンを飛ばすこと自体は今のところは免許や資格はいらないのだけど、いろんな場所で飛ばそうとすると国土交通省などの許可が必要になる。そのときに資格があると許可申請がとても楽になるので取得した。
編注:ドローンの飛行に関しては、記事中の民間資格だけでなく、2022年12月5日から国家資格制度がスタートしました。国家資格は必須ではありませんが、取得することで、国土交通省の許可・承認が不要になる場合があります。
あと「俺、ドローンの資格持ってるぜ!」って言うの、なんだかカッコ良さそうだったから。
というわけで、いろいろとナイスなタイミングだったので、息子たちを久しぶりに誘ってみることにした。
私「父さんドローンの練習をしに車でどこかに行きたいのだけど、一緒にどうだい? よければ家族写真も撮りたいなぁと思ってるんだ。ドローンで空からバーンと」
長男「スケジュールが合えば。でも今月はちょっと仕事が忙しいんだよね」
次男「バイトや飲み会の予定がなければ。あと川魚が食べられるなら。食べられないなら行かない」
子どもたちが大人になると、予定と要望を合わせて出かけるのもなかなか大変なのだなと思う。「いいね! 行こう、行こう!」と二つ返事で一緒に出かけてくれていた昔が懐かしい。
二人ともドローンには微塵も興味を示さなかったが、まぁそれは良しとして、とりあえず3人の予定を合わせて撮影に行けることになった。
さてどんな家族写真が撮れるだろうか。いざ出発!
長男の運転で那須塩原へドライブ
目的地は昔から家族旅行でよく行っていた那須塩原。ここにしたのは、ドローンの練習場と次男が要望している川魚を食べられるところがあるから。
うれしいことにこの日は晴天に恵まれた。ドローンは雨が降っていたり、風が強かったりすると飛ばせないので本当にありがたい。
そしてもう一つうれしいことに、運転は長男がしてくれた。長男は2年前ぐらいに免許を取ったのだが、それから車を使った生活をとてもエンジョイしているように見える。
私「どう、車に乗るようになって何か人生に変化とかあった?」
長男「うーん、行動範囲が増えて便利になったけど、特に変わったことはないかな」
そっけない答えが返ってきたが、私からみるとキャンプを始めたり、仕事で車を活用するようになったりして、なんだかとてもカッコいい感じになったように思う。
免許を取ったばかりの頃には私たちをいろんなところに連れていってくれて、父親の私よりも父親みたいだったし。
それにしても息子が家まで車で迎えに来てくれてお出かけする日が来るなんて夢にも思わなかった。うれしいものだ。
次男も最近出かけることが多い。
私「君は車の免許取らないのかい?」
次男「僕はバイクに乗りたいと思っているんだよね」
と返ってきた。以前は「僕は誰かに運転してもらって後ろに乗ってるのがいいんだよね。だから車と運転手が欲しい」とずっと言っていたので、この変化に私は少し驚いた。
次男も20才を過ぎた頃から少しずつ変わってきたように思う。昔はゲームばかりやって完全に引きこもっていたのに、最近はバイトや遊びでとても忙しくしている。なんていうか、少しずつ社会に溶け込もうとしている感じがする。
そういえば今日も出かけるとき、出発の30分前に起きて着替えて準備していた。以前は家族で出かけるときは出発時間まで寝ていて起こすのが大変だったのに。
私「何か心境の変化でもあったのかい?」
次男「僕ももう大人だからね。それぐらい当然だよ」
と、ニヤリ。こんな感じで彼らと、最近の近況を話しながら車を走らせていたら那須塩原にあっという間に着いた。
川魚好きな次男のために那須渓流パークへ
小腹も空いてきたので、ドローンを飛ばす前に「那須渓流パーク」へ、次男が要望していた川魚を食べに行くことにした。ここを訪れるのは2回目になる。
季節によって遊べるアトラクションは変わってくるが、ヤマメやイワナなどの川魚釣りの体験は一年中できる。釣れた川魚は1匹400~500円(魚によって値段が違う)で塩焼きか唐揚げにしてもらえる。
以前、家族3人でここで釣りをしたことがある。今回も本当は釣りをしたかったところだが、あいにくドローンを飛ばしに行く時間がなくなってしまいそうだったので、まずは食事をすることにした。
次男「僕は川魚ではイワナが好きなんだよなぁ。塩焼きで食べるのも良いんだけど、イワナはアユより身がふっくらしてるから唐揚げで食べてもうまいんだよ。先日も友人とイワナの刺身を安全に食べさせてくれる専門店に行ったんだけどさ、想像以上に食感が良くて最高だったなぁ」
などなど、満足した表情で「イワナ愛」を語ってくれた。
それにしても川魚を食べられるだけで那須まで付いてきてくれるなんて、本当に川魚が好きなんだなと思う。前世はクマとか森の動物だったのだろうか。
小腹を満たしたので出発しようとすると、
次男「え? 本当に釣りはしないの?」
私「まずはドローンを飛ばしたいのよ、父さん」
長男「動物園にも行かない? 那須にはおすすめのところがあるんだよ」
私「いや、まずはドローンを飛ばしたいのよ、父さん」
予約時間もあったので、私は息子たちの要望をいったん押し切り、ドローンの練習場に向かうことにした。
【スポット情報】那須渓流パーク
- 公式サイト:https://www.e-nkp.com/
- 所在地:栃木県那須郡那須町湯本213
- 電話:0287-78-0080
- アクセス:東北自動車道那須ICから車で約15分
- 🚙³₃:Google マップ
ドローンでの家族写真にチャレンジ
今回お世話になるドローン練習場は「那須塩原ドローン練習場」。
カーナビの地図を見たらクネクネと曲がりくねった坂道を上っていき、山頂のあたりにあるようだ。
インターネットのサイトには「1ヘクタールもの広大な練習場で山々に囲まれており、常に大自然を感じながら悠々とドローンを飛ばすことができます」と書いてあった。
都心を離れればドローンを飛ばせそうな場所はたくさんあるが、私有地だった場合はきちんと持ち主を調べて許可を取らないといけないし、場所によっては警察や海上保安庁にも連絡しなければいけない。今回はとりあえずドローンの練習と記念撮影ぐらいなので、そういった許可が必要がない方が良いだろうと思い練習場を選んだ。
この記事を読んで「ドローンを飛ばしてみたい」と思う方もいるかもしれない。ドローンはいつでもどこでも飛ばせるわけではないので注意してほしい。とりあえず住んでいる場所の近くの練習場やスクールへ行ってみるのがいいと思う。
山道を30分ほど車を走らせたら練習場らしき場所に到着した。
練習場というより広大な空き地といった感じにも思えるが、ドローンを自由に飛ばして良いのなら何の問題もない。
スタッフの指示通りに車を乗り入れ、私が外に出てドローンを飛ばす準備をしていると息子たちはすぐに車の中に戻っていった。
私「あれ外に出ないの?」
長男「山頂だからかメチャクチャ暑いね。とりあえず車の中にいていい?」
次男「夏の山だから虫が多いね。とりあえず車の中にいていい?」
長男「父さんにはドローンの練習してもらって、撮れるようになったら外に出るよ」
次男「うん、さすがに家族写真を撮るときは出るよ」
もっとドローンでの家族写真撮影にテンション上がってくれると想像していたが、私の趣味に付き合ってもらってるので仕方ないだろう。
10才ごろの彼らならきっと、
長男「パパぁ! 僕もドローン飛ばしたい!」
私「おお! いいぞ! 父さんが教えてやる」
という感じだっただろう。那須に旅行に来たらはしゃいでいた息子たちの姿が遠い昔に感じる。
とにかく空撮でナイスな家族写真を撮るために、練習が終わるまで車で待ってもらうことにした。
やはり広い場所でドローンを自由に飛ばすのはとても気持ちが良い。
とりあえず、練習場の周りの風景を撮ってみよう。
空撮で見る那須塩原の景色はなんて素晴らしいんだろう。楽しくなってきた。
ウヒャヒャヒャ! たーのしぃー! ヒャッホー!
私のテンションはドローンとともに上がっていく。それにしてもこういった空撮が個人で簡単にできるようになるなんてすごい時代になったものだ。
しばらく練習して操縦にも慣れてきたのでそろそろ家族写真を撮ることにした。さて、どんな家族写真を撮ろうか。とりあえず息子たちに車から降りてきてもらって試しに撮ってみた。いかがだろう。
いや、分かっている。なんていうか、絵心が全くない写真だ。楽しさが感じられないし、ドローンが高過ぎて誰が誰だか分からない。家族写真どころか防犯カメラの映像みたいだ。このアングルはダメだ。
私「よし、次はもう少し、楽しそうに手とか振ってもらっていいかな」
長男「分かった」
次男「オケ」
意外と彼らは私の指示に素直に従ってくれた。次の一枚はこれ。
うん、なんだろう、悪くはない。悪くはないが良くもない。高さも微妙だし息子たちもやらされてる感が満載の表情だ。
しかし少し良くなってきた。ドローンはもう少し高くした方がいいかもしれない。私の描くイメージとも近くなってきた。
私「よし、今度は車を動かして家族だけで撮ってみようか」
長男「分かった」
次男「オケ」
この家族写真はどうだろう。
いやこれはダメだ。さらに悪くなった感じがする。なんだか角度が真上過ぎるし、無人島で助けを待ってる感じにしか見えない。次男は顔が写ってないし。それにしてもドローンで家族写真を撮るのって意外と難しい。低過ぎるとドローン感がないし、高過ぎると表情が分からない。
長男「角度が悪いんじゃじゃないかな」
次男「虫が多いから早く」
私「分かった、次で決める!」
渾身の一枚だ。
きた! これはかなりいい感じだ。とても自然な家族写真ではないだろうか。ドローンで空撮した感じがあって高さもちょうど良い。息子たちもとても良い表情だ。かなりコツがつかめてきたような気がする。
よし、この調子で最後はだんだんとドローンが離れる旅番組のエンディングみたいな感じで撮ろう。
いい家族写真が撮れたので、ドローンでの撮影レポートはこの辺で終わりにしようと思う。
息子たちの成長を感じたドライブ
そういえば、長男から「免許を取ったよ、車を買おうと思う」と聞いたときは驚いた。
最近の若者は「車離れ」しているといわれているし、車を維持する費用も安くはない。稼ぎもそれなりにないと大変だろう。都内に住んでいるとなおさらだ。
私は車の運転にあまり興味を持つことはなかったので、息子もそこまで車に興味を持たないのではないかと勝手に思っていた。
私「なんで車の免許を取ろうと思ったの?」
長男「前に家族で車旅したときに、やっぱり車ってあると便利だし免許は持っておいた方が良いかなと思って。自分に家族ができたら車あった方が良いかなと思うし。それに車を買ったら、仕事を頑張ろうと思うんじゃないかなって」
なんていうか、父親とは違う価値観を持って育ってきたのだなぁと少し感動した記憶がある。
今回の那須塩原へのドライブは、息子たちの幼い頃を思い出す瞬間がたくさんあった。そして今の姿と重ねたときに「本当に大人になったなぁ」とうれしさを感じた。ドローンで撮った家族写真と一緒に、このドライブの思い出を大事にしていきたい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
編集:はてな編集部