トライアスロンは、全競技で速く・強くなってこそ勝てる

最も短い距離で競われるショート・ディスタンス(オリンピック・ディスタンス)でさえ、スイム1.5km・バイク40km・ラン10kmの合計51.5kmという距離を1人でクリアしなければならないトライアスロン。さまざまなスポーツの中でも、特に過酷なイメージが強い競技の1つです。そんなトライアスロンの魅力について、古谷 純平選手と椿 浩平選手の2人に聞いてみました。

左:古谷選手 右:椿選手

古谷

「トライアスロンの魅力は、一筋縄ではいかないところですね。トライアスロンにはスイム・バイク・ランという3つの競技のほかに、次の競技に向けて移動し準備するトランジットがあり、どれか1つだけが速くても勝てません。4つすべてが速く・強くなって初めて勝てるのです。大変ですけど、それだけに勝ったときの達成感は大きい競技ですね」

椿

「コツコツ努力することが、そのまま成果につながるところです。トライアスロンは、たまたま運が良いだけで勝てる競技ではありません。一方で、1つの競技でトップになれなくても3競技の総合力でトップを取ることができます。不得手なところを強化しつつ、得意種目をさらに向上させるよう努力を重ねる。それが結果につながるのがトライアスロンの醍醐味です」

努力を続けていれば、恐らくつらい時も多々あるでしょう。競技中だけではなく普段の練習中でさえ、つらいと感じる瞬間はあるはずです。そんな時の乗り越え方について、2人は「夢と目標を、芯をぶれさせずに持ち続けること」だと話してくれました。この気持ちの強さが、2人を「トライアスロン界の若手最有望株」へと押し上げた原動力なのでしょう。

ライバルと身近に競い合えるからこそ、自分の限界を突破できる

2人は基本的にそれぞれ別々の練習メニューをこなしていますが、一緒に練習することも頻繁にあるといいます。学生時代はライバルと認め合っていた2人が、現在は同じ場所でお互いに切磋琢磨することで、得られることも大きいようです。

古谷

「自分1人だけで練習していると、どうしても追い込み切れるレベルに限界があります。しかし、椿選手と一緒に練習したり競い合ったりすることで、それまで自分が限界だと思っていた上限を超えることができるのです。限界を突破することで、またさらに上のレベルへと、どんどん自分の限界を上げていくことができます」

椿

「つらいときに1人でいると、ガクッと落ち込んでしまうことがあります。しかし、古谷選手がいれば踏ん張れる。逆に、自分が絶好調のときは、一緒にレベルの高い練習ができます。上り調子のとき・下り調子のときの両方で、ライバルの存在はありがたいですね」

こうした切磋琢磨は、確実にプラスの影響を与えています。2015年の日本選手権では、長年にわたってトライアスロン界に君臨し続けてきたベテランの選手たちを破って、古谷選手が優勝、椿選手が3位という好成績を収めました。学生時代から絶対的なベテラン世代に挑戦し続けてきた歴史に、ようやく終止符を打てたのは、お互いの存在があったからにほかなりません。

ここまでがんばってきたことを肯定するため、オリンピックに出場したい

2000年のシドニーオリンピックから、正式種目となったトライアスロン。やはり選手にとってオリンピックは最高の目標であり、特別な存在のようです。

子どものころから「オリンピックの出場が夢」だったという古谷選手。オリンピックこそが自己実現を果たせる舞台であり、常に「どうやってそこへ行くか」をイメージしつつ、日々の練習を含めた「今やるべきこと」を果たしているといいます。

古谷

「2020年の東京オリンピックでメダルを獲得することが、私の最大の目標です。東京でメダルを獲得するためにも、次のリオデジャネイロへの出場権を獲得し、一度はオリンピック独特の雰囲気を経験しておきたいです」

椿選手も、オリンピック出場が夢であり、自分が選手としてさらに伸びるためにも、オリンピック出場という大きな目標が必要だと考えています。オリンピック出場にかける思いは強く、これまでがんばってきたことを肯定するためにも、ぜひ次のリオデジャネイロオリンピックに出場したいと考えています。

椿

「オリンピックに行けたら、それが精神的な強さになるはずです。よく『オリンピックには魔物がいる』といわれていますから、そうしたトラブルにも打ち勝つようなメンタルを鍛えるためにも、まずはリオデジャネイロオリンピックを経験しておきたいです。それが達成できたら、次は2020年の東京オリンピックでのメダルを狙います」

トライアスロンの国際大会には、「コンチネンタルカップ」「ワールドカップ」「世界選手権シリーズ」という3つのグレードがあり、世界選手権シリーズで好成績を重ねると、オリンピックの出場権を獲得できます。2人は着実にポイントを重ねていて、夢に手が届くところまで来ました。出場選手が決まる2016年4月のアジア選手権において、2人が最良の結果を得られるよう願うばかりです。

心から応援してもらえる選手、勇気を与えられる選手になりたい

最後に、今後の目標について聞いてみました。

古谷

「誰からも愛される選手になりたいです。強いからというより、魅力的な人間だから応援したい、と思ってもらえる選手になりたいですね。人事部での会社員経験も活かして、人間性と社会性を磨いていきたいと思います」

椿

「私は以前に取り組んでいた水泳と陸上で、全国大会に進めませんでした。しかし、トライアスロンではコツコツ努力を続けることで、周囲を驚かせるほどの結果を出すことができました。私ががんばることで、『スポーツで世界を目指したい、けれど今の成績では…』とあきらめかけている子どもたちに、勇気を与えたいです」

王者であるベテラン世代、身近にいるライバル、そして自分自身に挑み続けてきた2人。これからも互いに高め合いながら、さらに選手として成長していくことを期待しています。

  • 所属部署、役職、内容は取材時点のものです。

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