急成長するインバウンド市場に対応する商品や支援メニューの開発が急務

訪日ビザ発給の要件緩和や、2020年東京オリンピック開催決定に伴う日本への評価・関心の高まり等が追い風となり、訪日外国人が増加しています。2015年の訪日外国人数は1,974万人と、過去最高だった前年の訪日外国人数(1,431万人)をさらに上回りました。東京オリンピック開催を控え、この傾向はしばらく継続することでしょう。これに伴い、訪日外国人を受け入れる事業者を中心に、インバウンドビジネスへの注目度は高まっています。

一方で、インバウンドビジネスの機会が増えれば、それに関わる事業者の数も増え、想定されるリスクも増えることになります。また、観光庁によれば、訪日外国人の約3割が海外旅行保険に未加入であると言われています。旅行・宿泊・飲食・運輸業の方々や医療機関やレジャー施設の運営者等、インバウンドビジネスに携わる事業者は訪日外国人を受け入れる体制を整えると同時に、リスクに対してもしっかりと備えていかなくてはなりません。

以前から拡大するインバウンド市場に注目していた三井住友海上では、インバウンド事業者を対象とした新たな保険やコンサルティング等の支援メニューの開発に動き始めました。その取組を牽引してきたのが、商品本部 企画チームおよび営業推進部 法人開発室です。

宇野

「訪日外国人の方々には安心して旅行を楽しんでいただきたい。インバウンド事業者の方々には安心してビジネスを展開していただきたい。双方にそれぞれ安心をご提供したいという思いが、取組の契機となりました。インバウンド市場に対応する保険や支援メニューの開発は、前例のない新たな試みでした」

お客さまにヒアリングし、保険の枠組みを決定

どの保険会社も本格的に取り組んだことがない新たな保険の開発は、すべてが手探りのままスタートしました。当初は、外部セミナーに参加したり、有識者の著書を読んだりして、情報収集に注力。さらに、自治体や旅行業、通信業等のインバウンド事業者を訪問してビジネスの課題や悩みをヒアリングしました。

そして、社内関係部署と協議を重ね、インバウンド市場のどの部分に焦点を当てるべきか、そのために当社として何をすべきかを、1つずつ検討していき、保険の枠組みを決めていきました。その結果、当社が訪日外国人に直接保険を販売するのではなく、インバウンド事業者の方々に保険の意義をご理解いただき、保険にご加入いただくことで、結果的に訪日外国人の方々がケガや病気の補償を受けることができ、さらに医療機関紹介や通訳等のサービスも利用できるという仕組みにしたのです。

左:宇野 右:向井

新しい保険の枠組み決定後も、試行錯誤を繰り返しつつ、しっかり足場を固めながら開発を進めることで、着実に新しい保険を形にしていきました。

宇野

「インバウンド事業者の方々には、代理店または当社から日本語で保険の補償内容をご説明することができます。一方、保険にご加入いただいた場合、保険契約者となったインバウンド事業者の方々から日本語が通じない訪日外国人の方々に、保険の内容についてご説明いただく必要がありました。そこで、訪日外国人の方々に補償やサービスの内容を分かりやすくご案内するためのツールを3か国語で制作。本当に内容が正しく伝わるか、また分かりやすいか、実際に社内の外国人社員の協力も得ながら作成しました」

自治体におけるインバウンド事業を活用した地方創生と民間企業の事業拡大への支援活動に奔走

同様に苦労を重ねていたのが、お客さまにより近い現場で、ビジネスを支援するために、コンサルティング等のソリューションを提供してきた営業推進部 法人開発室(経営サポートセンター)です。こちらでも、主に地方創生策として訪日外国人誘客に取り組む自治体や、インバウンド市場拡大をビジネスチャンスと捉えて事業収益拡大を図る民間企業を支援するために奔走していました。

向井

「当室は、経営革新等支援機関として、以前から自治体や中堅中小企業の経営者に対してソリューション提案を行っていました。実際に支援させていただいている自治体や経営者の中には、インバウンド市場に注目している方々も多く、言葉の問題から『来店する訪日外国人の方々と、どう接すれば良いか分からない』、『訪日外国人の方々を呼び込みたいけど、どうすれば良いか分からない』という悩みを抱えている方もいらっしゃいました。そのような新たな課題を抱えるお客さまを支援するため、多くの外部専門家に支援いただき、また当室の一人ひとりが多くの参考書籍やセミナーから知識を蓄え、ノウハウ構築することで新たな支援メニューの開発を実現してきました」

商品本部 企画チームから営業推進部 法人開発室にインバウンド事業者向けの支援メニューを用意できないかと声をかけたのは、支援メニューの概要がちょうど固まったときでした。それ以降、MS&ADグループのインターリスク総研からも支援メニューの提供があり、同じくMS&ADグループのあいおいニッセイ同和損保とも協力しながら急ピッチでリリースに向けた準備を進めました。

そして、2015年12月。ついに当社は、訪日外国人の受け入れ事業者を対象とした「インバウンド事業者向けサポートメニュー」の提供を開始。「海外旅行保険」、「レジャー・サービス施設費用保険」という2つの保険と、「インバウンドビジネスの支援」、「防災・減災コンサルティング」、「訪日外国人向けサポート会社の紹介」、「災害時の避難誘導アプリ」という4つの支援メニューで構成するこのサポートメニューは、提供開始以降、多くのお客さまからご照会いただき、好評を博しています。

施策の周知徹底が今後の課題。市場変化に応じたメニュー変更も視野に

「インバウンド事業者向けサポートメニュー」は当初の想定通り、中小企業を中心に多くの事業者さまからお問い合わせをいただいていますが、まだインバウンド需要が及んでいない地域もあります。三井住友海上がインバウンドビジネスをお手伝いできることを、より多くの事業者さまに知ってもらい、必要性を感じたときに弊社に声をかけていただけるよう、さらなる周知を図っていきます。

向井

「観光庁が推進するDMO(Destination Management/Marketing Organization、日本の観光地域づくりを推進する戦略を策定する法人)や自治体とも連携しつつ、お客さまの支援者としてより一層お役に立てるよう、接点を深めていきたいと考えています」

インバウンド事業者の方々のニーズはさまざまであり、はじめからメニューを絞ってご提案することは得策ではないことから、さまざまな支援メニューをパッケージ化してご提供していますが、現状で十分とは考えていません。

宇野

「現状は、グループ会社を含めて可能な限り多彩な支援メニューを備え、柔軟性のある形でインバウンド事業者の方々にご提供しています。今後もインバウンド市場における事業者の方々、訪日外国人の方々のニーズはどんどん変化する可能性があります。そうした変化を逃さず捉え、メニューも素早く追加・変更していきたいと考えています」

2016年3月