衝突などのケースでは事件が海難審判に付されることがありますので、ここでは海難審判が実際にどのように行われるか、その手順を参考としてまとめました。

1. 事件名の呼びあげ

書記が事件名を呼びあげ、受審人等の出欠状況を告げます。

2. 開廷宣言

審判官が開廷を宣します。

3. 人定尋問

審判官が受審人に人違いがあるかどうかを確認します。内容は氏名、生年月日、住所、海技免状、事故当時の職務などです。

4. 審判の重複確認

本件で他の海難審判所から呼出しを受けていないかどうかを審判官が確認します。

5. 申立理由の陳述

理事官が事実の概要と申立理由を述べます。裁判における検察官の冒頭陳述に当ります。理事官の陳述後、受審人(および補佐人)が理事官の陳述に対する認否を行います。

6. 証拠目録の提出

理事官が証拠目録を提出し、証拠調べの請求をします。

7. 証拠調べ

審判官が提出された証拠目録に従って取調べます。通常補佐人が選任されているケースでは証拠の項目を読み上げるだけです。ここで、証拠として不適当なものがあれば異議を申立てられます。ただし、その内容に不満や不利な点があっても、ここでは異議申立はできません。

8. 証拠申請

証拠調べが終わった後、受審人、補佐人に対して証拠申請の機会が与えられます。

9. 受審人に対する尋問

審判開始の申立書に記載されている受審人の順序に従って尋問が行われるのが普通です。審判官が尋問をした後に、理事官、補佐人の順に補足尋問が行われます。回答は常に審判官の方を向いて行うようにします。
なお、受審人はメモなどを見ながら回答することは認められておりませんので、事前によく頭の中で整理しておく必要があります。

10. 証拠申請

ここで、さらに証拠申請の機会が与えられます。審判官が必要に応じ証拠を取付けたり証人喚問を行うこともあります。

11. 理事官の論告

事実関係、原因に関して述べ、受審人に対する懲戒についての意見を述べます。検察官の論告求刑にあたります。

12. 受審人の意見

論告に対しての陳述が認められます。通常は、補佐人に任せる旨答えます。

13. 補佐人の弁論

受審人のために弁論します。理事官が述べた事実関係や原因と判断が異なるときには、争点を明確にし、受審人が執るべき行為を行った上での避けられない事故である場合には、その旨を具体的に弁論します。
なお弁論は、理事官の論告で不利な立場となった側から先に行うのが普通です。

14. 受審人の最終陳述

審判官が受審人に最終の陳述の機会を与えます。事実関係、原因関係、理事官の論告、相手側補佐人の弁論など、すべてにわたって自己の意見を述べることができます。

15. 審理の終了

審判官が審理を終了する旨告げ、裁決言渡の期日を告知して閉廷します。

記のような手順で進められます。
朝9時半に始まり、複雑なケースでなければほぼ1日で終ります。途中休憩(昼休みを除き午前1回、午後1回のことが多い)が入りますので、受審人と補佐人とで若干打合せることができます。
傍聴は誰でもできますが、ごく稀に司法修習生等が見学に来るのを除けば、事件関係者(船主、パイロット、保険関係者)で占められます。