ヨーク・アントワープ規則A条によると、共同海損行為が成立するためには、次の4つの要件が必要とされています。

1. 共同の危険が現実に存在していること

必ずしも危険が目前に切迫していることを要しませんが、少なくとも共同の安全を脅かす程度の危険が現実になくてはなりません。例えば、船舶が座礁または衝突によって浸水が始まり、このまま放置すれば沈没の危険がある場合、これは現実に損傷が発生し、さらに広がる状態なので、現実に危険があると考えられます。また、機関故障で漂流している船舶も、危険は切迫していなくても現実に危険があると考えられます。

2. 共同の安全のためになされた行為であること

船舶・積荷・運賃のいずれか一つだけの危険ではなく、共同の危険であることが必要です。例えば、船舶が荒天に遭遇して、海水が倉内に浸入して積荷に損害を生じただけでは共同の危険とはいえず、浸水が徐々に増大してそのままでは船舶の航行に危険があるために避難港に入港したような場合に初めて、共同の安全のための行為として避難港入港費用が共同海損として認められます。

3. 故意、かつ合理的な行為であること

行為の結果として、損失や損害が生じることを予期しながらあえて行うことが必要です。例えば、次の場合がこれにあたります。

  • (a)一部の積荷火災が発生し、注水すれば他の積荷に当然損害を与えることが予想されるが、あえて注水する場合
  • (b)錨鎖の切断が予想されるにもかかわらず、衝突・座礁を避けるために通常の投錨時の速力まで減速を待たずに投錨する場合
  • (c)機関故障のため自航不能となり、曳航を依頼して最寄りの港に避難する場合

4. 犠牲および費用は異常なものであること

通常の行為で、共同海損は構成しません。例えば、船舶が台風に遭遇する恐れがあるとき、これを避けるため予定していた航路を離れ、余分の燃料を消費しても共同海損とはなりません。台風回避は、航海中、通常取られるべき処置だからです。