船舶が積荷などとともに共同の海上危険(例えば座礁、座州、火災、浸水、衝突、機関故障などの危険)にさらされたとき、船舶、積荷および運賃などの共同の安全を図るために船長が故意に船体や積荷に損害を与えたり、異常な費用を支出した場合に、これらの損害や費用を、仕向地に到着した船体、積荷、運賃などの価額で公平に按分しそれぞれが負担しようとするものです。この仕組みはもともと保険とは全く別個に発達してきた公平の考えと運送契約に基づくものです。
例えば、船舶が座礁して再浮揚のため、緊急やむを得ず積荷の一部を投荷した場合、この積荷は船とその他の積荷を救うための犠牲になったといえます。この積荷の損害を共同海損犠牲損害と言います。また、サルベージ会社の曳船で曳航した場合、救助業者への支払いは共同海損費用となります。
共同海損は通常、共同海損に関する国際的な統一ルールであるヨーク・アントワープ規則(Y.A.ルール)に基づいて専門の海損精算人によって精算されます。共同海損に認められる損害、費用には次のようなものがあります。

共同海損犠牲損害

船舶

  • 任意座礁(ヨーク・アントワープ規則5条)
  • 浮揚のために強行使用したため生じた主機、補機、ボイラーの損害(同7条)
  • 燃料不足(同9条)
  • 船火事の消防による水濡れ損害(同3条)
  • 錨鎖の犠牲損害(同A条)

積荷

  • 投荷(同1条、2条)
  • 船火事の消火作業による水濡れ損害(同3条)
  • 避難港における荷卸しその他に際し生じた損害(同12条)

共同海損費用

救助費、避難港費用

  • 避難港入出港のために要する水先案内料、曵船料等
  • 岸壁使用料、港税等の港費
  • 積荷、燃料、貯蔵品の荷繰、仮揚、保管、再積込料等
  • 避難港において修繕ができないため第2の港へ移動する
  • 回航費(仮修繕および曳航費を含む)代理店手数料
  • 航海延長期間中の乗組員の給食料、燃料等

代換費用

  • 代船輸送費、曳船費
  • 仮修繕費(同14条)
  • その他(節約された共同海損費用限度)