1. 応急処置

(1)排水と防水

自船の排水能力が浸水量以上であれば、沈没の危険はひとまずありませんが、浸水は船体傾斜を誘発しがちであり転覆の危険がありますので、ビルジの測深を行い吃水やトリムの変化に注意することが必要です。
また浸水箇所を早く発見して適切な防水手当を行わなければなりませんが、防水手当といっても、破口が少し大きくなると船内からの防水はほとんど不可能となるので、船外から浸水箇所に防水マットを当て海水の侵入を抑えた上で、船内から木材、鉄板、セメント、毛布その他を使って手当を行います。
防水手当の主な方法は次のとおりですが、(c)や(d)の方法は熟練した潜水作業員を必要とするので、浸水を発見次第本船より会社へ連絡し、専門の救助業者の助言、指示を受けることが有効です。

(a)吸い込み防水

破口が小さく、水圧がかかる箇所のときは船外より布、むしろなどを吸いこませて防水します。場合によっては、粘着力の強い油蝋を併用します。

(b)箱型防水

破口が広いときには、防水箱かセメントボックスを取りつけて防水します。

(c)防水板

破口に防水板を引掛けボルトで取りつけ防水します。

(d)水中溶接

鋼板を外部から水中溶接する方法で、広範囲かつ屈曲している破口の防水に効果的な方法です。

(2)水密とびらの閉鎖

必要に応じて水密とびらを閉鎖する。この場合、船内の交通をしゃ断することになるので退避できない者を1人も出さないよう注意します。

(3)任意座州

浸水によって沈没の危険が迫っているときには、近くに浅瀬があれば任意座州することにより最悪の事態を避ける努力が望まれます。
この場合、場所は人命の安全を優先した上で可能であれば次のような条件を考慮して決定します。

  • 船底を損傷しないような砂浜
  • 油が流出しているときは、汚染損害の出ないような場所
  • 風浪などの影響の少ない場所
  • 応急修理、積荷の仮揚げ、陸上との交通連絡に便利な場所
  • 救助船で容易に曳きおろせる場所

2. 本船からの連絡事項

事故発生後はできるだけ早く船長は下記事項について会社へ連絡してください。

  • 出帆地、仕向地
  • 事故発生日時・位置
  • 浸水原因および浸水箇所、程度
  • 着手中および予定している応急処置
  • 天候、風向、風力、波浪
  • 積荷の種類、数量、損害の有無
  • 救助の要否

3. その後の処置

堪航証明、共同海損鑑定(G.A.Survey)、海難報告書等を座礁の場合に準じてそれぞれ手配します。